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ケアまどニュース
「喀痰吸引等制度」医療職以外でもたん吸引・経管栄養等の処置が可能
かつては、医療行為である喀痰吸引等の処置は介護職員などが実施することは認められていませんでした。
ところが、実際には現場スタッフは生命維持のために実施せざるを得ない状況に多々直面しており、こうした状況を打開するために生まれたのが、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度です。
これを「喀痰吸引等制度」と言い、研修を受けた介護職員が決められた条件にもとづいて、喀痰吸引や経管栄養等の特定行為が実施できるようになりました。
研修を受けて特定行為を実施できる従事者がいる施設は、「登録特定行為事業者」として登録を受けます。
愛知県名古屋市内で介護施設や老人ホームをお探しの場合、「登録特定行為事業者」であることも、選定基準の一つになるのではないでしょうか。
1.2012年にスタートした「喀痰吸引等制度」
「喀痰吸引等制度」は、2012年(平成24年)に「社会福祉士および介護福祉士法」の改正により新たに始まった制度です。
それまで医療行為であった「喀痰吸引」や「経管栄養」を「喀痰吸引等研修」を受けた介護職員が行うための制度です。
この制度が成立した背景には、高齢化社会の進行が挙げられます。
介護施設や老人ホームに入居する高齢者が増加することに合わせ、自力では痰を排出できなかったり、食事ができなかったりする入居者も増加する傾向にあります。
従来、「喀痰吸引」や「経管栄養」といった特定行為は医療行為とされており、医師や看護師以外でこれを行うことはできませんでした。
しかし、施設入居者の増加に伴い、それぞれの施設で喀痰吸引や経管栄養を行う必要性が高まっている現状を受け、法律の改正と新たな制度の整備が必要とされました。
こうした事情を受けて成立したのが「喀痰吸引等制度」となります。
2.実施可能な「特定行為」
介護施設等に所属する介護福祉士、もしくは介護福祉士以外でも一定の研修を終了して都道府県知事から認定されている介護職員等が、「喀痰吸引等制度」にもとづいて実施される「喀痰吸引等研修」を修了し、それが認定されることによって、その施設は「登録特定行為事業者」としての登録を受けることになります。
「登録特定行為事業者」の登録を受けている施設等では、医師・看護師との連携を条件として、喀痰吸引や経管栄養等の医療行為を行えるようになります。
「喀痰吸引」とは、口(口腔)や鼻(鼻腔)の中などに溜まっている痰・唾液を自力では排出することができない場合、吸引器等の道具を利用して体外に排出させる(口腔内・鼻腔内および気管カニューレ内部)処置のことです。
「経管栄養」とは、口から栄養を摂取できない、あるいは十分に摂取できない場合、消化管に通したチューブを用いて、流動食を投与する処置(胃ろう・腸ろう・経鼻)のことです。
喀痰吸引等研修には、第1号研修・第2号研修・第3号研修と3つの種類があります。
修了した研修の種類に応じて、実施可能となる特定行為と対象者が違ってきますので、注意が必要です。
第1号研修および第2号研修では介護施設などの利用者に対する処置を前提とする研修内容、第3号研修では在宅介護サービスで、重度障害を持っている利用者への対応を想定した研修内容になっています。
第1号研修を修了している場合、実施可能な特定行為は喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)となります。
第2号研修を修了している場合は、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内)と経管栄養(胃ろう・腸ろう)となります。
第3号研修を修了している場合、筋委縮側索硬化症(ALS)およびこれに類似している神経疾患・筋疾患の他、筋ジストロフィーや行為頚髄損傷、遷延性意識障害、あるいは重症心身障害を患っている患者・障害者を対象とします。
実施可能な特定行為は、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)となります。
3.喀痰吸引等研修の受講
前述の通り、喀痰吸引等研修の資格を取得するためには、都道府県知事が指定する研修機関もしくは事業所等において、研修を受講する必要があります。
研修には基礎研修と実地研修があり、そのすべてを修了しなければいけません。
喀痰吸引研修の研修日程は、自治体ごとにその実施時期や実施回数が異なっています。
研修に要する期間の目安としては、基本研究が第1号・第2号では合計で15日程度、第3号研修は2日程度となります。
実地研修はそれぞれ約10日程度が目安となっています。
喀痰吸引等研修の受講料は、第1号研修が100,000円~230,000円程度、第2号研修は100,000円~180,000円程度、第3号研修は50,000円程度となっています。
自治体が研修を主催する場合は費用補助がある場合もあり、一部負担での受講が可能となる場合もあります。
喀痰吸引等研修を受講するには、都道府県のサイトもしくは研修を実施する研修機関に申し込みをする必要があります。
3種類すべての研修において、その研修内容は、講義と演習からなる基本研修と実地研修で構成されています。
第1号研修と第2号研究は、共に同じ内容の基本研修を受けます。
基本研修の内容は、「人間と社会」「保険料制度とチーム医療」「安全な療養生活」「清潔保持と感染予防」および「健康状態の把握」といった基本講義に加え、喀痰吸引の概論および実践手順解説、経管栄養の概論および実施手順解説となっています。
実地研修は、第1号研修では「口腔内喀痰吸引」や「鼻腔内喀痰吸引」、そして「気管カニューレ内部喀痰吸引」や「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」、「経鼻経管栄養」の講義を受けますが、第2号研修では「気管カニューレ内部喀痰吸引」と「経鼻経管栄養」の研修はありません。
第3号研修のカリキュラムと内容は、第1号・第2号とは大きく違っています。
第3号研修の基本研修は、重度障害者等、特定の利用者に関するカリキュラムが中心となり、8時間の講義と1時間の演習を受けることになります。
実地研修は回数制限がなく、医師などの評価で知識と技能が習得できたと判断されるまで、実施されることになります。
喀痰吸引等研修の全工程を修了した後に、試験を受けることになります。
30分程度の筆記試験で、全50問です。合格ラインは9割以上の正答となります。
出題は講義内容から出されますので、それほど難易度の高い試験ではありません。
不合格になった場合でも、再試験によるリカバリーが可能です。
基本研修・実地研修を共に修了し、筆記試験に合格することで、資格を取得することになります。
修了者には修了証明書が発行されます。
住民票を置いている地域の公益財団法人等で「認定特定行為業務従事者」の申請を行わなければいけません。
おわりに
喀痰吸引や経管栄養という行為は、相応の危険性を伴っており、基礎からしっかりとした訓練を受けている者が実施しないと、利用者に危険がおよぶ場合もあります。
責任を持って利用者と接するためにも、介護士は喀痰吸引や経管栄養に関する確かな技術と知識を身につけることが求められます。
また、施設利用者の立場からすれば、利用する施設が「登録特定行為事業者」の登録を受けているかどうかを確認することは、施設を利用する本人の安全にとって、とても重要なポイントであることは間違いありません。
利用者側であるからこそ、この「喀痰吸引等制度」の概要に関して、きちんと把握しておくことが非常に大切なことと言えるでしょう。
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