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2021/01/11
コラム

無資格介護職員の「認知症研修」

2019年度の介護労働安定センターの調査によると、老人ホームなどの介護施設で介護の仕事に携わっているスタッフのうち、ホームヘルパーや介護福祉士、ケアマネジャー、また、社会福祉士や看護師等関連資格も含めて、資格を持たずに働いている人が約6%を占めました。

介護の仕事は資格がないとできないイメージがありますが、実は、できる仕事に制限はあるものの 無資格でも介護の現場で働けるのです。

 

しかしながら、状況は変わりつつあります。

厚生労働省は、今後、無資格で働く介護職員に対し、 認知症介護基礎研修の受講義務化を発表しました。

確かに認知症の高齢者の介護では、施設での仕事ではなくても認知症に対する正しい理解が不可欠ですので、その知識を身につけることが必須になるのも時代の流れと言えるでしょう。

 

無資格でも働くことは可能

無資格者で働くことが可能

無資格でも介護の現場で働くことは可能なのですが、そもそもどうしてそれが可能なのでしょうか。

これには、進む超高齢化社会に加えて、 深刻な介護の担い手不足 が理由として挙げられます。

 

2025年には、団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者になります。

今でも介護の人材不足は叫ばれていますが、その時には状況はさらに深刻になっており、全国でおよそ 38万人もの人材不足が見込まれている 状況です。

この深刻な状況は、ここ愛知県名古屋市おいても例外ではないでしょう。

 

このような状況ですので、介護の仕事ができる人を資格取得者に限ってしまうと、ますます介護を担う人の数が足りなくなってしまいます。

そこで、介護に関する仕事のうち、無資格者でもできる仕事をいくつか認めて、各施設が 人材不足を補えるようにサポートしているのです。

 

では、介護関連の資格を持たない人は、現在、各施設でどのような仕事に携われるのでしょうか。

 

まず、主に社会福祉法人や自治体が運営する特別養護老人ホームの場合です。

基本的に要介護度3以上の人が対象で、寝たきりの人も多く入居する施設ですから、介護職員の仕事は食事や入浴、排泄の介助など身体介助が多くなります。

ほかにも、清拭、移乗、更衣、口腔ケアなど利用者さんの体に直接触れる仕事が多いです。

 

これらの身体介助は基本的に介護資格保持者でないとできないのですが、施設の場合、介護福祉士が必ず在籍しているため、 その指示のもとでなら携わることが可能 です。

 

また、身体介助以外の仕事も多くあります。

 清掃  レクリエーションの運営 などの業務であれば、無資格者でも可能です。

施設によっては、資格を持たない人を対象に「介護助手」や「介護補助」という職種で募集しているところもあります。

 

民間企業が運営する有料老人ホーム等でも、無資格者は多く活躍しています。

特養のように入居に要介護度の条件がないため、 身体介助を必要としない人も多く入居 しているからです。

ですので、外出、レクリエーション、サークル活動やその他の生活援助など、無資格でもできる仕事はたくさんあります。

 

また、デイサービスのような通所型の介護施設でも、介護関連の資格がなくても働くことは可能です。

特に 送迎業務 では、介護資格不問で応募している施設は多々あります。

もちろんドライバーとして働くためには運転免許が必須ですが、運転免許はあるけれど介護資格はまだ取得していないという人のなかには、デイサービスの送迎から介護の経験を積んでいくというパターンもあります。

 

さらに、認知症の高齢者が生活するグループホームにも、介護関連の資格を持たずに働いている人はいます。

グループホームとは、利用者9人をユニットという一つの単位として、家庭的な雰囲気の中で生活してもらうための場所です。

身体介助は多いですが、 認知症の進行を遅らせるため 家事レクリエーション外出などが他の施設より多いのが特徴と言えるでしょう。

 

このように、施設の種類によらず、さまざまな場所で無資格の人も介護スタッフとして活躍しています。

グループホームの場合、ケアの対象が認知症を患っている人たちですので、認知症の知識はやはりあった方がよいですが、無資格でも働ける枠を設けている施設もあります。

 

直接身体に触れる仕事には資格が必要

資格が必要

上で見てきたように、無資格でも介護の仕事は可能ですが、そうはいってもやはり 資格がある方ができることが広がる のは確かなことです。

特に利用者さんの身体に直接触れる身体介助の仕事には、介護福祉士などの有資格者が監督していない場合、かつてのホームヘルパー2級に当たる 介護職員初任者研修 の資格が求められます。

 

施設では有資格者が常に現場にいますから、無資格者でも介護に携わることはできます。

しかし、そうとは限らない 問介護 の場合、資格がないと難しいことがわかるでしょう。

料理や掃除、買物などの家事手伝いのみに限れば可能ではありますが、そもそも無資格だと訪問介護事業所での採用は難しいという問題があります。

 

ただ、昨今のコロナ禍において、現状のスタッフが発熱するなど人員を確保できないなどいくつかの条件を満たしている場合無資格者を派遣することが認められる場合もあります。

 

研修の受講はいずれ「義務化」

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厚生労働省によると、2021年4月に行われる介護報酬改定で、無資格で働く介護職員に対し 認知症介護基礎研修を受講を義務化する方針を固めたとのことです。

2019年には認知症施策推進大綱が閣議決定されましたが、そのなかに、介護に関係するあらゆる人の受講を目標として盛り込まれていました。

いよいよその実現に向けて、実際に動き始めたということでしょう。

 

経過措置が設けられるため、もしそれまでに受講していないとしてもただちに働けなくなるというわけではなさそうです。

ただ、この研修の義務化には、介護を担うすべての人が 認知症を患う方のケアの基本を身につけてもらいたい という狙いがあります。

それが 介護サービスの質を上げる ことにつながると同時に、介護サービスの利用者の尊厳を保障 することにもつながるからです。

 

認知症介護基礎研修は、認知症を患う方との関わり方の基本を学ぶ 内容で、認知症の理解やケアの際の留意点などを6時間のカリキュラムで身につけます。

また、この研修はeラーニングでも受講できるようになるとのことで、現在は環境整備中です。

環境が整備されれば多くの人が受講しやすくなるため、介護の仕事をする人だけでなく、認知症の人の家族などさまざまな人が受講するのではないでしょうか。

 

人材不足やコロナ禍などさまざまな問題はありますが、認知症の人の介護に携わる以上、研修の受講が義務となるのは当然の流れでしょう。

 

【おわりに】

ただでさえ人材不足が叫ばれている介護業界なのに、昨今のコロナ禍において、状況はさらに厳しくなっています。

そのため、無資格でも介護の仕事で活躍できるのは、介護事業所、介護職に携わる人、介護サービスを利用する人たちすべてにとって歓迎すべきことです。

しかし、資格がなくても携わることが可能とはいえ、やはり資格がある方が有利なことは確かでしょう。

利用者さんの身体介助ができないなど業務に制限があるうえに、やはり介護に関する一定の知識や技術を身につけていないと、現場で即戦力として活躍するのは難しいと思われます。

特に、認知症の人の介護においては、正しい知識やケアの方法は知っておくべきことです。

それを考えると、認知症介護基礎研修の受講が義務化されることも理解できます。