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ケアまどニュース
「認知症」の人が避難所で生活するうえで必要なこと
災害が起こった時、無事に避難できた人でも、その後の避難所での生活の中でさまざまな心身の変化が起こるケースは珍しくありません。
「避難する」ということだけでも心理的なストレスがかかります。
その上、快適とは言えない環境や設備の中、常に人目がある生活するなど、避難所生活はかなり大変です。
なかでも、環境の変化に影響を受けやすい「認知症状のある高齢者」には、一層の配慮が必要となります。
避難生活によって、認知症が悪化してしまうこともありますし、そもそもその生活に耐えられなくなってしまうことも珍しくありません。
そのため、認知症の家族を持つ人は、いざという時にどのような対応を取ったらいいのかを事前に把握しておくようにしましょう。
1.認知症の人は環境の変化に敏感
健康な人でも、急に住み慣れた家や老人ホームから、たくさんの人が一緒に寝起きし、しかも満足な施設設備がない避難所で過ごすのは大変です。
認知症の人であれば、その大変さはなおさらです。
というのも、認知症を患っている人は記憶障害だけでなく、不安な気持ちを抱きやすい状態になっているからです。
認知症の人にとって、「いつもと違う場所」、「いつもと違う人」の中で過ごすことは、精神的負担が大きいのです。
不安要因① : 人が大勢いる環境
避難所では、体育館のように広いスペースの中にたくさんの人が一緒に生活することになります。
愛知県名古屋市でも、こうしたタイプの避難所が多い傾向にあります。
周りの人の動く音や話し声が常に聞こえる状態で、これは認知症を持つ人にとってはかなり不安感を与えるものとなります。
そのため、こうした避難所で生活する場合には、スペースの中央部分ではなく、以下のような場所を選ぶのがおすすめです。
・壁に近い方
・出入り口から遠い場所
少しでも周囲の音や人の動きを感じない場所で過ごせるようにします。
不安要因② : 使い勝手の違う生活環境
また、普段とは違う寝具・洗面・トイレなどを使用して生活を送る必要が出てきます。
慣れない状況の中、使い勝手の違う設備や備品を使用することは不安や混乱が生じやすいのです。
自宅で使っていたものが身近にあると安心しやすくなるので、避難に無理の無い範囲で持ち出せるものがあると良いでしょう。
・身体を包めるような毛布やタオル
・日常的に使っていたクシなどの日常品
もちろん、災害の際にはこうした身の回りの品の持参というのは難しいこともあります。
可能な限りで「認知症の人が安心できるもの」を、持ち出すためには、下記の点を日ごろから気にしておくと良いでしょう。
・どんなアイテムを日常的に使っているか
・使っているものが同じものでないと駄目かどうか
・避難所に持って行くものの優先順位を付けておく
不安要因③: 行動の制約
避難所ではいろいろなことが制限されることになります。
・動けるスペース
・生活のペースやタイミング
・会話
認知症を患う人に、「これはダメ」や「我慢して」というような、できないことを伝える機会が増加することが多く、それだけ本人にとって精神的な負担が増えてしまいがちです。
そのため、下記の言葉は意識的に避けるように話しかけることで、避難生活の不安を和らげることが重要です。
・否定的な言葉
・ネガティブな言葉
2.周囲の理解や協力が必要
このように、災害によって避難生活を強いられる場合、認知症患者は健康な人よりも厳しい状況に置かれることになります。
そのため、周囲の人からの理解や協力は必要不可欠となります。
家族はもちろんのこと、避難所に一緒にいる住民としても、認知症の人がいると気付いたなら深い配慮を払うようにしたいものです。
安心感を与える認知症の人への接し方
■ 認知症の人への触れ方
「手をかけて触れる時」などは、上から手を振り下ろすようにするのではなく、下からゆっくりと手を挙げて触れるようにします。
目線の上から手を下ろされると潜在的に恐怖を覚えてしまうことが多いからです。
■ 認知症の人への話しかけ方
また、話す時にも目線を合わせるようにして、ゆっくりと穏やかな口調で話すようにします。
不安や焦りを大きくしてしまいますので、相手を急かすような言動は避けた方が良いでしょう。
また、認知症の人は、私たちが思っている以上に、相手の感情を敏感に察知します。
思うように会話が進まなくても、イライラせずに、気持ちを穏やかにすることが大切です。
認知症の人は、言葉や感情をスムーズに表現できないことも多いので、じっくりと待ち、耳を傾けましょう。
家族や介護者への声掛け
認知症の方の「家族」や「介護スタッフ」の方などを見かけたら、前向きになれるような言葉かけをするようにしましょう。
普段でさえ。認知症の方へのケアというのは難しいものです
災害による避難というのは、誰にとっても大変ですが、要介護者を心配し実際のケアをする人にとっては、精神的にも肉体的にも負担の大きなものです。
ちょっとした言葉であっても、「頑張りを見守ってくれている人が居る」と感じるだけで、心理的な効果は非常に大きなものがあります。
特に認知症の方の「家族」は、周囲に迷惑をかけているのではと不安を感じてるケースが多いです。
同じ場所にいる人が、こうした言葉をかけることで、大きな安心感を持てることになります。
3.その後の生活のための準備も必要
実際の災害による避難所で行われた認知症の人に関するこんな調査があります。
認知症を持つ人が避難所で生活できる(耐えられる)平均日数は3.1日程度
つまり、それだけ身体的にも精神的にも難しい状況に置かれているのです。
そのため、緊急に避難してきた場所から、より環境の整った二次避難所への移動も早い段階で考える必要があります。
人や物資、設備の不足から、「食事」や「排せつ」などが困難になるという状況が見られることが多くなります。
そうなると、医療や介護の面からも問題が出てきてしまいます。
そのため、福祉避難所への移動ができるように、行政側への連絡と依頼ができるようにしておくことが大事です。
・認知症の人の情報をまとめる
・情報は避難所の管理者や福祉関係者、避難対応を行っている人などに伝える
特に福祉関係の職員であれば、認知症の人は福祉施設への移動を早めにした方が良いということを知っていますので、迅速に対応してくれる可能性が高くなります。
そして、福祉避難所へは本人だけでなく、家族も一緒に避難できるケースもあります。
その場合には、身の回りの品の移動も含めて準備を進めて、移動のタイミングが来たらすぐに実行に移せるように準備をすることで、素早い行動に移せるのです。
おわりに
災害によって避難所へ避難するのは、誰にとっても大変なことですが、認知症を持つ人やその家族にとってはさらに厳しい状況となります。
そのため、「家族」としては、避難所で気を付けることを事前に知ること、迷惑になるからと遠慮せずに、避難する際には認知症の人がいることを伝えて、関係職員や周囲の協力や理解を得るようにしましょう。
そして、「周囲の人」も、避難所に認知症の方がいることに気付いたら、ご本人への理解や配慮を、ねぎらいの言葉を介護スタッフや家族にかけてあげられると良いですね。
確かに、避難所生活というのは大変ですが、行政やボランティアからの支援や協力を得られることも多いです。
家族だけで抱え込まず、助けをかりながら認知症の人も安心できる行動を心掛けたいものです。
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