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2020/07/20
コラム

精神疾患のある方の老人ホーム探し

近年では、愛知県名古屋市も含め、全国的に精神疾患の診断を受ける人の数が増えており、患者さんのなかには、「外来治療」を受けている人もいれば、「入院している人」もいます。

精神科で「長らく入院していた人」の場合、高齢になると病院を退院して老人ホームへの入居をすすめられることがあります。

「入所できる介護施設」についてや、「問題点」やその背景についてご紹介します。

 目次
①精神疾患を治療している人の推移
②長期入院患者を減らしたい日本政府
③突然の退院宣告。入所できる介護施設はある?

1. 精神疾患を治療している人の推移

精神疾患を抱えている人

精神疾患を抱えている人の数は、2017年時点で入院・外来含めて420万人いると言われています。

過去15年間で入院患者数は少しずつ減少しているものの、外来患者数は増加しいます。

約27万人といわれる入院患者数を入院期間ごとにみてみると、

・1年未満:約10万人
・1年以上~5年未満:約8万人
・5年以上:約9万人

精神科での入院は、比較的入院期間が長くなる向にあるのが分かります。

 

それでは、精神疾患で入院している人は、どんな疾患を患っていることが多いのでしょうか。

最も多いのは、「総合失調症」で、約15万人程度が入院しています。

その他は、「アルツハイマー型認知症」による入院で、入院患者数は約5万人程度、「躁うつ病」は約3万人程となっています。

 

2. 長期入院患者を減らしたい日本政府

入院患者の短期退院を目指す

入院生活が長くなりやすい精神疾患による入院ですが、「厚生労働省」では、この長期入院の軽減に向けた対策を講じています。

その対策の1つが、少人数で生活できるグループホームへの入居や、高齢の患者の介護施設への入居です。

 

厚生労働省の目標としては、入院期間が5年以上の「長期入院患者の数」を、3万人~4万人程度減らすこと目指しているようです。

そのために各自治体では、制度や環境、支援の整備を目指した対策が求められています。

入院患者の短期退院を目指すことも、大きな目標です。

 

新規の入院患者」に対しての目標は以下の通りです。

・3か月後の退院者数を69%以上
・6か月後は84%
・1年後は90%以上

つまり、1年以内に退院することを目標としているというわけです。

 

長期入院を解消するためには、様々な方向からのアプローチが必要不可欠です。

・退院後の生活場所の確保
・退院後の財源の確保

さらに、医療や介護が必要な人なら、

・医療関係者や介護従事者の協力

これも必要不可欠です。

そして、地域住民からの支援やサポートも必要で、偏見を解消することも、大きな課題となっています。

また、生活の拠点がガラリと変わることに対して精神的な不安が大きくならないように、本人に対する心のケアも必要です。

 

現在、厚生労働省では、高齢者の介護分野において導入されている「地域包括ケアシステム」の仕組みを、精神疾患を患う人の退院先の生活支援に活用すべく構築を目指しています。

精神疾患を患う人が地域の中で生活しながら、必要な医療サービスや福祉サービスを受けられるようにするための制度や支援の整備、また人員確保が急がれています。

 

3. 突然の退院宣告。入所できる介護施設はある?

精神疾患を持っている人の入居

厚生労働省がすすめる長期退院の軽減により、精神科病棟の長期間入院患者が、突然退院をすすめられるというケースが増えると考えられます。

高齢者の場合には、介護認定を受けて「老人ホーム」や「介護施設」へ入居するようすすめられることもあります。

しかし、年齢的には老人ホームや介護施設への入居が妥当と判断された人でも、精神疾患を理由に施設への入居が難航することもあります。

 

精神疾患を持っている人の入居を認めるかどうかは、老人ホームや介護施設の施設が判断します。

こうした施設は「集団生活」を送っているので、入居条件が設定されています。

入居条件は施設によって異なりますが、簡単にいうと、

他の入居者とのトラブルの可能性の有無

が焦点となります。

 

認知症の場合には、「認知症のケアに特化した施設」などもありますので、施設が見つかる可能性は十分にあります。

しかし、精神疾患の中でも、幻覚や幻聴などの症状が起因して、

・大声が出る
・ものを投げたり壊したりする
・暴力的な発言や行動がある
・自傷、他傷のリスクがある

という人は、本人や他の入居者、職員の安全確保生活面への配慮の観点から入居を断られるリスクが高くなる傾向があります。

 

病状が安定しているかどうか

これもまた、精神疾患を持っている人の施設入居で重要となります。

対応する職員の「人員配置的な問題」や、症状にあわせた「内服薬の調整」など、医療機関でしか対応が難しい状態の場合には、入居を断られる可能性が高くなります。

「老人ホーム」や「介護施設」は、あくまで高齢者が生活するための場なので、医療機関でしか対応できない人の受け入れは難しいでしょう。

 

多くの老人ホームや介護施設では、入居前の本人面談を行います。

「面談」というのは、入居する人の状態や行動を観察するためのものですが、入居者にとっては緊張することが多いものです。

精神状態が安定していた人でも、いつもと違う環境や人の目に晒されることで不安定になってしまう可能性も十分にあります。

本人がリラックスして面談にのぞめるような配慮をすることも、施設入所にむけて重要なポイントです。

 

精神疾患を持っている高齢者の住まいを見つけることは、時に難しい場合もあります。

しかし、入院先の医師や看護師、相談員等としっかり連携をして、

・本人がどんな対応をしたら安心できるか
・どんな環境だとリラックスできるのか
・不安定になった時の対応方法

など、準備をしっかりしておくことで、施設探しの幅や可能性が広がるでしょう。

 

これまで障害福祉を利用してきた人が65歳を超えて、介護保険サービスへと移行することで起こる別の問題もあります。

65歳になると、原則「障害者福祉のプロ」が支援する障害者福祉サービスから、「介護分野のプロ」が支援する介護保険サービスへと転換されることになります。

つまり、場合によっては精神疾患の知識がない職員が対応にあたることも出てくるでしょう。

 

身体的もしくは精神的に疾患を持っている人を対象とした「障害福祉サービス」と、高齢者を対象とした「介護保険サービス」とでは、サービスの内容やルールが異なります

 

結果として、ヘルパーの利用可能回数が減る無料だったサービスが有料になるなど、利用者にとって不利益に働いてしまうケースがあるのです。

今後、65歳以上の精神疾患を患う人がスムーズに介護施設へ移行できるための制度整備という点では、そうしたサービス間の違いによって発生する負担の溝を埋める必要があるでしょう。

 

おわりに

65歳以上で精神疾患を持っている人の介護施設探しは、状況によって困難なケースもあります。

入居条件を満たさないという理由で断られてしまう場合や、精神疾患の症状によってはその対応が難しいと判断されることも珍しくありません。

また、65歳以上になると、これまで利用していた障害福祉サービスによる支援から、介護保険サービスの支援と自動的に変わります。

そのため、家族にかかる負担も大きくなってしまう可能性があります。

この点は、今後の法整備による改善が望まれる課題となっています。