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2020/07/13
コラム

高齢期の暮らし方「日本版CCRC」の行方

医療の発達した日本では、愛知県名古屋市も含めて平均寿命が延びており、定年後の期間が長くなったことで、その過ごし方も多様化しています。

その中で注目されているのが、『CCRC』というコミュニティです。

「健康なうちに入居できて最期まで過ごせる」という点がCCRCの大きな魅力で、高齢者にとっては、老人ホーム以外の新しい選択肢となるかもしれません。

海外発のCCRCを基に、日本の高齢者のライフスタイルに合わせた「日本版CCRC」の特徴や課題についてご紹介します。

 目次 
①「元祖CCRC」と「日本版CCRC」違い
②  CCRC実現に意欲を示す自治体も
③ 実は、日本版CCRCは前途多難?

 

1. 「元祖CCRC」と「日本版CCRC」違い

「元祖CCRC」と「日本版CCRC」違い

 CCRCとは 
Continuing Care Retirement Communityの略で、もともとアメリカで始まった高齢者向けの施設を指す

【CCRCの特徴】
・一定の年齢以上の高齢者のみが入居できる
・医療や介護の面で手厚いサポートがある
・そして介護が必要無い健康なうちに入居することができる
・介護が必要になっても退居せずに最期まで生活できる

元祖CCRCを、日本で暮らす高齢者向けにアレンジしたものが、『日本版CCRC』です。

「日本版CCRC」では、「地方移住」を前提として、東京などの都市部で生活する高齢者がメインターゲットであることが特徴です。

この背景には、人口が密集する都市部から、希望する高齢者を地方へ移住させることにより、都市部の過密状態を緩和する目的があるのです。

地方移住を希望する高齢者にとっては、高齢者が多いコミュニティに元気なうちに入居でき、将来的に介護が必要になっても退居不要という安心感があります。

これは大きな魅力ではないでしょうか。

 

一般的な老人ホームの場合、「自立向けの施設」と「介護が常時必要な方向けの施設」が別々であることが一般的ですので、介護が必要になった場合には、転居が必要な場合が多いものです。

これは、高齢者にとっては住み慣れた快適な住まいや親しい友人から離れなければならないという点で、体力面はもちろん、精神的な負担が大きいものです。

しかしCCRCなら、入居すれば最期まで過ごせるため、介護が必要になったからと言って退居する必要はありません。

 

また、CCRCは、健康な高齢者が入居して、将来的に介護が必要になった時にも利用しやすいコミュニティが形成されています。

居住空間としては、「一戸建て」や「マンション」、「団地」など、さまざまなタイプがあります。

コミュニティ内には、ジムやテニスコートなどの運動施設が完備されている他、カラオケルームやビリヤードなどの娯楽設備もあります。

また、サークル活動に参加できたり、現役時代の趣味や職業、特技を生かして、自らサークルを運営することもできます。

 

【費用の違い】

元祖CCRCと日本版CCRCとで大きく異なる点として、費用の違いがあります。

アメリカにおけるCCRCは、もともと富裕層が対象ですので、居住するには、高齢でも毎月の利用料を支払うためのまとまった収入があることが前提です。

しかし、「日本版CCRC」では厚生年金の平均受給額(毎月20万円程)の方であれば、比較的入居しやすい価格帯となっているのが特徴です。

「分譲タイプ」と「賃貸タイプ」があり、健康な高齢者が入居できる有料老人ホームと比較しても、現実的に検討が可能な料金設定となっています。

 

【居住条件の違い】

元祖CCRCと日本版CCRCとは、居住できる年齢層が異なります。

元祖CCRCは高齢者向けのコミュニティなので、コミュニティが設定している年齢に達していない人は、残念ながら入居することはできません。

しかし日本版CCRCの場合には、幅広い世代が共生できるコミュニティづくりを目指しているため、元祖CCRCほど、年齢的な制限は厳しく設定されていない所が多いです。

 

2. CCRC実現に意欲を示す自治体も

都市部の人口密集を緩和し、地方の過疎化に歯止めをかける

「日本版CCRC」の実現に向けて積極的に取り組む自治体や、意欲を示す自治体はたくさんあります。

政府が行った「東京で暮らす50代や60代の統計」によると、CCRCを活用して地方への移住を希望する人は、50代以上の男性では半数以上、女性の場合でも30%程度が移住を希望しています。

これは毎年増加傾向にあるため、都市部の自治体にとっては、人口密集を緩和できますし、地方の農村漁村の自治体なら、過疎化に歯止めをかけられる効果が期待できます。

 

では、CCRC実現に向けて「自治体ができること」には、どんなことがあるでしょうか。

【移住希望者のニーズを把握する】

農村や漁村への移住を希望する人が、普段の生活に何を希望しているのかという点を把握し、コミュニティの形成に生かすという点があります。

よく希望として挙がる例をご紹介しましょう。

・地域の人達との交流
・自然との触れ合い
・趣味として農林業を楽しむ
・観光地を巡る
・地方の工芸品づくりに挑戦する
・スキーや登山など趣味を満喫する など

移住希望者にとって、移住してみたくなるコミュニティづくりができれば、CCRCもどんどん推進されていくでしょう。

 

【情報を多くの人に公開する】

現在、CCRCの構想に対して意欲を示す自治体は多いのですが、実際に移住をする高齢者たちに対しては、十分な情報を得られていないのがじ実情です。

つまり、移住したいなと考えていても、情報がないためにどこにどんな風に移住できるのか、より具体的なプランニングができない状況にあります。

自治体が率先して広く情報提供を行うことで、CCRCの実現に向けて、さらなる前進ができます。

 

【支援体制の強化】

試験的な移住体験ができる、移住に向けての引越し費用の支援など、サポート体制があれば移住したいけれど迷っているという人にとっては、大きな安心感とサポートとなります。

 

3.実は、日本版CCRCは前途多難?

日本版CCRCの課題

愛知県名古屋市も含めて、たくさんの自治体が意欲を見せている日本版CCRCですが、受け入れる側の自治体が、受け入れ体勢が整っていないケースは少なくありません。

要介護となった高齢者を受け入れられる「医療や介護のサービスの充実」が、受け入れる側の自治体に求められる必要不可欠な条件となります。

しかしながら、医療・介護提供の仕組み人材の確保、必要な設備を整えるための予算など、自治体が抱える課題はまだまだ多くあります。

都市部で暮らす高齢者が、地方に移住したくなるような魅力的なコミュニティづくりもまた、整備が急がれる課題の一つです。

私達の多くは、できれば住み慣れた場所で最期を迎えたいと考えるものです。

高齢者自身が、そうした気持ちよりも強く「ぜひ移住したい」と思うためには、移住先のコミュニティが魅力的であることは、大前提となります。

 

おわりに…

多くの自治体が意欲を見せる日本版CCRCは、高齢者が自主的に地方へ移住することによる、「QOLの向上」や「都市部の人口密集の緩和」、「地方の人口流出への対策」など、たくさんのメリットがあります。

この政策は、ただ都市部から高齢者を追い出すための方法であってはいけないのです。

高齢者が自分の意志で地方への移住を積極的に決めるためには、それを支援する対策も必要です。

まだまだ社会全体で実現するまでには時間がかかりそうな日本版CCRCですが、まずは介護要員の確保や介護サービスの充実など、できる部分から対応していくことが求められています。