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ケアまどニュース
入浴介助加算の2021年度改定ポイント
2021年介護報酬の改定では、さまざまなポイントで変更がなされましたが、その1つに「入浴介助」に関する加算の見直しがあります。
この改定では、従来の施設での入浴介助に対する加算が減額となるため、注意が必要です。
今後の通所介護の運営にとって非常に重要なことなので、しっかり把握しておきましょう。
1.「入浴介助加算」と「算定要件」
入浴介助加算とは
入浴の介助業務に関して算定する加算のことです。
2000年に介護保険が始まってから2020年までの20年間、入浴介助加算に変化はありませんでした。
2021年度に行われた法改正で、下記の事業所における入浴介助加算が「入浴介助加算Ⅰ」と「入浴介助加算Ⅱ」の2つに分けられることになりました。
● 通所介護
● 地域密着型通所介護
● 認知症対応型通所介護
● 通所リハビリテーション
介護保険が開始されて以来、初めての変化なので、通所介護事業者はしっかりと新しい算定方式に慣れる必要があります。
通所介護における入浴介助加算は算定率が高い加算だと言われていますから、入浴設備を有している通所事業者にとって加算方式の変更は大きな影響を及ぼします。
入浴介助加算の「改正ポイント」
先述の通り法改定によって、入浴介助加算は下記の2つに分かれることになりました。
【改定前の加算】
■入浴介助加算は50単位/日
【改定後の加算】
■通所介護等、入浴介助加算Ⅰ:40単位/日
■通所介護等、入浴介助加算Ⅱ:55単位/日
■通所リハビリテーション:60単位/日
※ⅠとⅡの同時算定はできません。
入浴介助加算 Ⅰ の算定要件
入浴介助加算Ⅰの算定要件は従来と同じで、入浴介助業務を適切に行える人員と設備を有していれば、算定できます。
入浴介助には利用者の観察を含みます。
入浴介助加算 Ⅱ の算定要件
新設された入浴介助加算Ⅱの算定要件では、下記の3つを満たす必要があります。
①医師や介護福祉士、介護支援専門員などが居宅を訪問し、利用者の入浴環境(浴室の環境や動作)評価および助言を行う
②個別の入浴計画書を立案すること(居宅を訪問した医師などの専門職が連携して作成)
③自宅の入浴状況に近い環境で入浴介助を行うこと
2.2021年度改定の「ポイント」と「目的」
この改定の目的は、「高齢者自身あるいは家族の介助によって、できる限り自宅で入浴をできるようになる」こととされています。
つまり、デイサービスなどの通所介護施設は、入浴することが目的の施設ではない、ということを暗に示唆しています。
これにより、デイサービスでは自宅でお風呂に入るためのトレーニング的な役割を担うことが明確になりました。
従来は1日あたり50単位で設定されていた加算が、以前と同じ対応を行うと、入浴介助加算Ⅰということで単位数が40単位になり、10単位のマイナスになります。
2021年度の改定で、通所介護は他のサービスと比べて基本報酬が上がる結果となりましたが、その上がった単位数以上に10単位マイナスになるので、トータルの保険収入が減少する可能性もあります。
一方で、法改定により入浴介助加算Ⅱができたので、こちらで算定できれば、従来よりも5単位プラスになります。
入浴介助加算において、従来通りの対応をするのか、それとも入浴介助加算Ⅱを算定するのかによって、通所介護事業所の収入がプラスになるかマイナスになるかが決まり、事業所経営の命運を分けることになるかもしれず、重要なターニングポイントとなりそうです。
3.賛成の声もある一方、課題は「要件」
サービスを利用する側の思い
住み慣れた自宅で入浴したいと望む利用者が多いのは事実です。
安全な環境を整えた結果、半身麻痺の方が自力で入浴できるようになったというケースも報告されています。
その一方で、「自宅での入浴は家族の負担が大きい」「自宅の浴室は段差があり、狭いので安全に入浴はできない」「一人暮らしの高齢者が自宅で入浴するのは困難」といった、自宅での入浴に不安を感じる声があるのも事実です。
サービス提供事業者の実情
また、現場からは「入浴介助の基本報酬が低いのに、加算まで減ったら経営を続けるのが難しくなる」という声も聞こえます。
とはいえ、入浴介助加算Ⅱの算定において課題となるのは3つの算定要件です。
算定に必要な手順は、下記の通りです。
手順①:評価をする
医師や介護福祉士、介護支援専門員などが居宅を訪問し、利用者の入浴環境(浴室の環境や動作)評価および助言を行う。
【訪問を行う専門職】
医師/理学療法士/作業療法士/介護福祉士(通所リハビリテーションは除く)/介護支援専門員(ケアマネージャー)/福祉用具相談員/機能訓練指導員/地域包括支援センターの担当職員 など
浴室環境を見て、利用者が自力で、または家族やヘルパーさんの介助により、安全に入浴することができるかを評価。
利用者の身体状況が変化した場合や、自宅の浴室をリフォームするなど環境が変化した場合には、その都度訪問し再評価をする。
手順②:計画を立てる
個別の入浴計画書を立案する。※居宅を訪問した医師などの専門職が連携して作成
通所介護事業所などの機能訓練指導員等が共同し、利用者の自宅を訪問し、評価した人と連携して、自宅の浴室環境や利用者の身体状況を踏まえた上で、個別の入浴介助計画を作成し、その計画書をもとに事業所での入浴介助を行う。
そのため、従来のように入浴介助を行うだけではなく、自力で入浴する環境を整えていくための計画書を作成する。
手順③:自宅の入浴状況に近い環境で入浴介助を行う
作成された個別の入浴計画書をもとに、自宅の浴室環境と近い環境で、デイサービス等通所介護施設で入浴します。
【事業所の入浴設備が大浴場の場合】
通所介護事業所の利用者の自宅の浴室の浴槽の深さや高さに合わせて、すのこや浴槽内台を設置する、可動式手すりを設置するなど、福祉用具を利用して自宅の状況と近い環境を作る必要がある。
※個別に浴槽を用意する必要はない
※利用者の居宅には、老人ホームなど高齢者住宅(共同の浴室も含む)、親族の家なども含む
入浴介助加算の算定状況
2021年7月のデータによれば、通所介護施設において、入浴介助加算を算定している事業所は98.3%で、ほとんどの施設があてはまります。
一方、2つの加算の算定率は以下の通りでした。
【入浴介助加算 Ⅰを算定】88.2%
【入浴介助加算Ⅱを算定】10.1%
入浴介助加算Ⅱは、全体のわずか10%と非常に低いことが分かりました。
入浴介助加算Ⅱの算定事業所はわずか1割
理由はやはり、要件要件を満たす難しさです。
利用者全部のお宅を訪問し、評価し、それをもとに計画書を作成、さらに利用者それぞれの自宅に合わせて、施設の入浴設備に手すりや台などの福祉用具を設置するなど、時間も専門職もコストもかかるわけです。
そもそも、利用者や家族が自宅での入浴を希望していないケースもあり、加えて、家族やケアマネージャーへの説明や理解を得ることが難しいという理由もあります。
【おわりに…】
愛知県名古屋市の通所介護施設や通所リハビリテーションでも、入浴介助加算Ⅱを算定していない介護施設が多いかと思われます。算定するよりも、他の稼働率を上げ、人員削減するなどの対策をしている介護施設は少なくありません。今後、要件が軽くなる可能性もありますし、入浴介助加算Ⅱの単位数が上がる可能性もあります。次回の改定は令和6年なので、それまでは様子を見るという事業所が多いかもしれません。
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