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2022/02/14
コラム

2020年度「介護施設の経営状況」倒産件数は過去最多

高齢化が進むと同時に、介護事業所の増加による利用者の獲得競争や、人材不足が深刻化するなかでの新型コロナウイルスの感染拡大が起きた2020年。

介護関連施設の経営状況はどう影響を受けたのか、全国の介護施設が大きな打撃を受けるなか、愛知県名古屋市内の介護施設も例外ではありません。

老人ホームなどの介護施設が万が一倒産したら、どうなるのでしょうか。

新型コロナウイルス以外にも倒産の原因があるのでしょうか。

1.介護施設2020年度の経営状況、コロナの影響は?

経営が悪化する訪問介護事業や通所介護(デイサービス)

皆さんは、介護施設がどのくらい倒産しているか、ご存知ですか?

新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年度の老人福祉・介護事業倒産は118件で、過去最多を記録しました。

 新型コロナウィルスの影響 

国や自治体による介護事業へのコロナ支援などで2020年秋頃まではコロナによる倒産はそれほど多くありませんでしたが、秋以降、支援の効果が薄れ始めてきました

特に影響を大きく受けたのは、訪問介護事業通所介護(デイサービス)です。

 

前年度と比べた通所サービス活動増減差額比率は、以下の通り減少しています。

【地域密着型】0.3ポイント減

【通常規模型:750人以下】2.1ポイント減

【大規模型Ⅰ:750~900人】2.9ポイント減

【大規模型Ⅱ:901人以上】4.2ポイント減

すべての規模の通所介護施設で、経営が悪化していることが分かります。

そして、事業所の規模が大きいほどダメージが大きいという結果が見えてきます。

 

緊急事態宣言も、通所介護事業所の経営に影響を及ぼしました。

それが分かるのが、緊急事態宣言が発令されたエリアとそれ以外のエリアでの通所介護事業所のサービス活動増減差額比率です。

【発令エリア】前年比2.8ポイント減

【対象外エリア】前年比1.0ポイント減

このように、新型コロナウイルスが介護施設の運営に大きな影響を与えました。

 

さて、高齢化社会で利用者が増えているはずの介護施設が、なぜ倒産するのか。

もちろん新型コロナウイルス原因の一因ではありますが、それが全てではありません。

 離職率の高さ 

他にも、職員の離職率が高いという理由が挙げられます。

人手不足により、サービスの質の低下更なる退職者を出すなど悪循環に陥ってしまい、利益を生み出せず、倒産に至るケースが非常に増えています。

しかも、介護職の給与は全国平均を大きく下回っているのが現状です。

体力・精神の両面で負荷の少なくない重要な仕事の内容の割には給与が多くないと感じる人が多いという面でも、慢性的な人材不足に陥っています。

 求人倍率が高い 

採用が難しいというのも、経営を難しくしている要因です。

厚生労働省の調査によれば、2019年の介護職の求人倍率は3.4倍、つまり1人の求職者に対して3~4件の事業所が奪い合っている状況ですから、新たな人材を確保しようとしても難しいのです。

職員を増やせなければ利用者を増やせないわけですから、経営は悪化する一方です。

なかには、施設から新型コロナウイルス感染者が出たため、施設そのものが閉鎖に追い込まれてしまうケースもありました。

短期間の閉鎖で資金の豊富な施設なら問題ないでしょうが、資金が少ない施設が封鎖に追い込まれれば、倒産につながります。

2.深刻な「訪問介護」の人材不足

深刻な訪問介護職員の不足

介護職全体で人手が不足していますが、なかでも訪問介護職員の不足は非常に深刻です。

2020年9月時点での訪問介護職員の有効求人倍率は15倍を超えています。

全職種の有効求人倍率は1.33倍ですから、訪問介護職がいかに人手不足なのかが分かります。

介護職全体と比較しても、4倍以上不足しています。

 

訪問介護職員は、在宅で生活する要介護者やそのご家族にとって決して欠かせない存在です。

介護が必要な高齢者の自宅を訪問し、食事移動入浴排せつなど、生活に必須となる部分を助けるのが主な仕事です。

おむつ交換や入浴介助、体位変換介助など、身体機能が低下した高齢者の日常生活をサポートする存在ですから、訪問介護の人材が不足すれば、高齢者は日常生活を送ることが困難になり、家族の負担も大きくなります。

 

更に、新型コロナウィルスの蔓延下においては、訪問介護では利用者のご家庭を訪問するため、利用者からウイルス感染したり、利用者に感染させたりするリスクが伴います。

元々、訪問介護の職員は高齢化がすすんでおり、職員自身が持病を持っていたり、高齢の家族と同居しているケースも少なくないため、感染拡大が離職の一因となってしまいました。

こうした感染への懸念に加えて、給与の低さも要因となり、訪問介護職員の増員が難しく、給与引き上げの必要性が高まっています。

3.「老人福祉・介護事業」の倒産件数は過去最多に

倒産件数は過去最多

前述しましたが、東京商工リサーチが発表しているデータを見ると、2010年以降介護施設の倒産件数は増加しています。

2010年:27件
2018年:106件
2017年~2019年:111件

そして、今回2020年の調査では118件の介護施設が倒産しています。

 厳しい介護業界 

コロナ禍による利用控えや感染を恐れる介護職員の離職が進んだこともあり、新型コロナの影響で倒産した介護施設7件が含まれます。

さらに、2020年1月~10月の老人福祉・介護者の休業・廃業・解散は、こちらも過去最多の406件ありました。

施設の倒産が増えただけでなく、介護事業から撤退する企業も増えているのです。

 

実際のところ、老人福祉・介護事業者の倒産は2016年以来、5年続けて100件を上回りました。

これまでは、介護事業のノウハウの無い企業が安易に参入したことに加え、給与が上がらないために介護職員の離職率が高いこと、採用が難しいことなどが倒産の理由でしたが、2020年以降は新型コロナウイルスの影響という新たな理由が加わりました。

 もし自分の老人ホームが倒産してしまったら? 

では、介護施設が倒産するとどうなるのでしょうか。

施設の倒産は、利用している高齢者やその家族にとっても、施設で働いている介護職員にとっても、死活問題です。

介護施設が倒産すると、施設自体が完全に閉鎖するか、他の事業者に経営が引き継がれるか、2つのパターンのどちらかになります。

 

【事業が引き継がれる場合】

他の事業者が引き継いでくれれば、施設・事業所自体は存続しますので、環境やサービスが変わる可能性がありますが、希望すれば多くの利用者はそのまま残ることができるでしょう。

スタッフの入れ替えは多少あるでしょうが、職員の多くは残れるかもしれません。

ただし、入居者を受け入れる基準が変わったり料金が大きく上がる場合などもあるため、必ずしも残れるとは限らず、注意が必要です。

 

【完全閉鎖してしまう場合】

事業継承されない場合には、利用している人や介護職員は、他の事業所や施設に移ることになります。

在宅介護に切り替えざるを得ない利用者も出てくるかもしれません。

希望する施設を利用できればいいですが、資金に余裕がない場合や施設利用者がすでに定員に達している場合は、遠方の施設を利用することになったり、あるいは介護体制を変更せざるを得ないかもしれません。

利用者にとっては、経済的にも精神的にも大きな負担です。

今後は、こような事態を防ぐために、介護職員に対して、仕事に見合った基本報酬を見直すことが必要な段階にきています。

【おわりに…】

経営を安定させるには、利用者を増やすことが必須ですが、そのためには、介護職員を増やす必要があります。高齢化社会がますます進むにつれ、介護施設や介護職は、これまで以上に必要とされます。愛知県名古屋市でも例外ではありません。その一方で慢性的なヘルパーさんや、介護職員が不足しています。先の見えないコロナ禍を受けて、事業者の倒産を防ぐために細かい対策や支援が、これからますます必要とされるでしょう。高齢者やご家族が安心してサービスを受けられるような体制づくりが急務となっています。