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2026/08/19
コラム

認知症の「物盗られ妄想」とは?原因と家族の接し方をわかりやすく解説

認知症の「物盗られ妄想」とは?原因と家族の接し方をわかりやすく解説

認知症の方から突然「財布を盗んだでしょう」「通帳がなくなった」と言われ、戸惑った経験はありませんか。このような「物盗られ妄想」認知症でみられる行動・心理症状(BPSD)の一つです。今回は、物盗られ妄想が起こる原因と、本人も家族も安心できる接し方について解説します。

物盗られ妄想とは?認知症で起こる理由

物盗られ妄想とは、大切な財布や現金、通帳、印鑑、宝石などが「誰かに盗まれた」と強く思い込んでしまう症状です。実際には自分で別の場所へしまったり、置き忘れたりしていることがほとんどですが、本人にとっては「盗まれた」という認識が現実そのものになっています。
これは認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つで、特にアルツハイマー型認知症で比較的よくみられます。また、認知機能がある程度保たれている初期の段階にも現れやすいことが知られています。

記憶障害が背景にある
認知症では、新しい出来事を記憶する力や、物をしまった場所を思い出す力が低下します。
例えば、「財布をしまった」という行動そのものを忘れてしまうため、財布が見当たらないと「誰かが持っていった」と考えてしまいます。本人には置き忘れた自覚がないため、「盗まれた」と確信してしまうのです。

不安や喪失感も影響する
認知症になると、「物忘れが増えた」「思うようにできない」といった不安や焦りを抱えやすくなります。
さらに、高齢になると配偶者や兄弟姉妹、友人との別れ、身体機能の低下、社会とのつながりの減少など、多くの喪失体験が積み重なります。その積み重なった不安や悲しみの中、大切なものが紛失したとなると、怒りや不安から誰かのせいにしてしまうという状況は、十分に理解できるのではないでしょうか

身近な人ほど疑われやすい理由
物盗られ妄想では、犯人として疑われる相手は家族や介護者、ヘルパーなど、日頃から本人の近くにいる人が多いとされています。
これは、その人を嫌っているからではありません。本人にとって「家に出入りしている人」「一番身近な人」が思い浮かびやすいためです。特に介護を担う配偶者や娘、嫁などが疑われるケースも少なくありません。

「盗んだでしょう」と言われたときの接し方

家族にとって、自分が犯人扱いされることは非常につらい出来事です。しかし、感情的に否定すると、本人の不安や怒りが強まり、症状が悪化してしまうことがあります。対応のポイントを知っておくことが大切です。

まずは気持ちを受け止める
「そんなことはない」「盗んでいない」とすぐに否定したくなる気持ちは自然です。
しかし本人は、本当に盗まれたと信じています。そのため、まずは肯定も否定もせず「それは心配ですね」「大切な物がなくなると不安ですよね」と、大切な物を失った不安の気持ちに寄り添うことが大切です。こちら側の潔白を証明するより、まずは安心を与えてあげましょう。感情を受け止めてもらえるだけで、不安が和らぐことがあります。

一緒に探す姿勢を見せる
「一緒に探してみましょう」と声をかけ、本人と一緒に探すことも効果的です。
家族が協力者であることが伝わると安心感につながり、興奮がおさまることがあります。また、見つかった際には「見つかってよかったですね」と安心できる言葉をかけましょう。責めたり、「ほら、自分でしまったでしょう」と指摘したりすることは、やめましょう。

気持ちが落ち着いたら話題を変える
探しても見つからない場合や興奮が続く場合は、無理に説得しようとせず、好きなテレビ番組や食事、趣味など別の話題へ自然に注意を向ける方法も有効です。
気持ちが切り替わることで、不安や怒りが和らぐことがあります。

家族だけで抱え込まないためにできること

物盗られ妄想は、介護する家族の精神的な負担が大きい症状の一つです。疑われ続けることで疲弊し、介護を続ける自信を失ってしまう方も少なくありません。

環境を整えて予防する
よく使う財布や通帳などは置き場所を決め、できるだけ変更しないようにしましょう。
また、「大切だからしまっておこう」と本人が何度も場所を変えてしまうこともあるため、一緒に保管場所を確認する習慣を作ることも役立ちます。

介護サービスを活用する
介護者が疲れ切ってしまうと、穏やかな対応を続けることは難しくなります。
デイサービスや訪問介護などを利用して介護負担を軽減し、家族自身が休息を取ることも大切です。第三者が関わることで、本人の気持ちが落ち着く場合もあります。

医療機関へ相談する
物盗られ妄想が頻繁に起こる、興奮が強い、介護が困難になってきた場合は、かかりつけ医や認知症専門医、地域包括支援センターへ相談しましょう。
環境調整や介護方法の見直しだけでなく、症状に応じて治療や薬物療法が検討されることもあります。家族だけで抱え込まず、専門職の支援を受けることが大切です。

まとめ

認知症の物盗られ妄想は、記憶障害や不安が背景にある症状であり、本人の意思や性格だけが原因ではありません。否定や説得ではなく、気持ちに寄り添い、一緒に探す姿勢を示すことが安心感につながります。家族だけで抱え込まず、介護サービスや医療機関も活用しながら、無理のない介護を続けていきましょう。