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ケア技法「ユマニチュード」
フランスの二人の体育学の専門家「イヴ・ジネスト」と「ロゼット・マレスコッティ」が開発したケアの技法を「ユマニチュード」といい、介護の現場において有用な技法とされています。
日本でも様々な介護に関する技術や考え方が開発、採用されていますが、その中でも注目され続けている技法です。
どのような目的や考えによって生み出されたものなのか、具体的にどんな形で実践されるのかを知ることで、介護の仕事をしている人、家族の介護をしている人、もちろんそれ以外の人も、「ケア」というものをより理解することができるでしょう。
▼Youtubeでも紹介しています
1.なぜ「ユマニチュード」が必要なのか
ユマニチュードが生まれた背景
そもそもユマニチュードというのは、フランスで提唱されたケアの方法で、体育学のプロによってまとめられたものです。
元々は介護職員の職業病とも言える腰痛予防のために、介護施設に派遣されました。
そこで、介護の現場について目にして、どのようにスタッフが要介護者のケアをしていたのかを知ることになります。
派遣当初は現場のスタッフにならってケアを行っていたものの、ケアを拒否する患者や、認知症で暴れる高齢者などと接するなかで、現行の患者との向き合い方に疑問を抱きました。
そして、経験を積んでいくなかで、もっと効果的な患者との接し方があるのではないか、と考えはじめたのです。
ポイントは「人間とは何か」
ユマニチュードが大切にしているのは、『人間とは何か』という哲学です。
人として生まれ、2本の足で立つことや、人から見つめられたり、触れられたり、話しかけられたりといった、生きるうえでついてまわる日常が、ケアを必要とする高齢者には欠けているのでは、と感じたイヴ・ジネスト。
ケアによってこれらを取り戻すことで「人間らしい」と感じられる自分を取り戻してもらおうと考えたのです。
そこで、ユマニチュードでは、ケアをする人が行うべきことやその手順を「4つの柱」と「5つのステップ」で示しています。
2.ユマニチュードの「4つの柱」
ユマニチュードではコミュニケーションを重要視します。
それが、ユマニチュードにおける「4つの柱」となっています。
その①「見る」
相手を目を「見る」という介護の現場ではとても大切な行動を、相手へのメッセージとして用いるという技術です。
たとえば、人を上から見下ろすという見る姿勢は、相手にとっては不快感であったり萎縮するような圧迫感を覚えたりすることがあります。
また、全く目を合わさないのは無視されていると感じたり、自分の存在を軽んじられているように感じてしまいます。
そのため、同じ高さの目線で目を合わせるなど、その見る時の姿勢に気を配ることを意識します。
そうすることで、対等な存在であるというメッセージを伝えているのです。
その②「話す」
2つ目の柱は、相手に優しさを伝えるための「話す」技術です。
「話す」においては、今行っているケアや、今から行うケアの内容を、前向きな言葉を選んで実況していくオートフィードバックという方法を用います。
これにより、要介護者は安心感を覚えることができますし、自分が取らなければならない姿勢などについても理解しやすくなるのです。
「汚れているからきれいにしなければならない」という事実を伝えるよりも、「さっぱりしましょう」、「きれいになって気持ちがいいですね」というようなポジティブな言葉選びを意識しましょう。
温かさが伝わるようなコミュニケーションの方法を採るのがポイントです。
その③「触れる」
3つ目は、「触れる」という技術です。
ケアの際に、「安全を確保するため」という理由で、認知症の方や介護拒否のある方の手などをぐっと掴んでしまうことがあるかもしれません。
しかし中には、掴まれるという行為によってパニックを覚えるという人もいますので、触り方にも優しさが伝わるようにするのはとても大事なことです。
そして、触れる時には感覚の鈍い部位から順に触れることも大切です。
口腔ケアやおむつ交換など、触れられることに抵抗感の強い場所というのは当然あります。
いきなりケアの対象部位を触れるのではなく、まずは「話す」を実践しながら、背中や肩から触れるとよいでしょう。
広い面積が接するように優しく触れる、基本的にはゆっくりとした動作を意識するといったやり方にしていくことによって、要介護者はストレスを感じにくくなります。
ケアを受ける人が大切にされているという感覚を持つことができますし、目や耳が衰えている方でも触るという行為によって安心感を覚えられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
その④「立つ」
4つ目は、「立つ」時間を作るということです。
人間の体は立つことを前提として、様々な機能が動いています。
そのため、1日20分程度、支えながらでも良いので、トイレに行く時や、ご飯を食べに行く時などでも、立つ時間を持つようにします。
そうすることで、視界を立体的に捉えらるので、脳にも良い刺激がありますし、身体や内臓機能にも良い影響があります。
日常の動きの中で歩いたり、立ちあがったりという動作を積極的に行うことは、機能維持のための生活リハビリにもなるのです。
3.ユマニチュードの「5つのステップ」
ユマニチュードでは「5つのステップ」を踏むことで、ケアを受けるうえでの快適な環境が作られるという考えを持っています。
ステップ1:出会うための準備
スタッフが部屋やベッドの近くに来ていることを知らせて、ケアをする相手の領域に入っても良いか許可を得る段階です。
ステップ2:ケアの準備
ケアを安心して受けて貰うためのコミュニケーションを行い、ケアを始めることを伝えて、ケアをスタートしても良いかの確認をとります。
ステップ3:知覚の連結
これがケアの実践段階で、ケアを受ける人が安心できるような「穏やかさ」や「優しさ」を、「話す」や「触れる」というった動作と言葉の両方に、一貫して持たせることが大切です。
ステップ4:感情の固定
ケアのことを振り返り、お互いにとって心地よい時間だったということを共有する場にします。
「体を拭いてきれいにして、気持ちよくなりましたね。」といった感じで、ケアによる快適さを二人の間で話します。
こうすることで、ケアについての積極的な気持ちを持てるように促すのです。
ステップ5:再会の約束
最後となる5番目のステップでは「再会の約束」をします。
こうすることで、「あの優しい人がまた会いにきてくれる」というような、次回ケアに対するポジティブな感情記憶が残り、心の準備ができるというわけです。
【おわりに…】
ユマニチュードは、単に介護のケアの効果を上げるというだけでなく、円滑なコミュニケーションを取り相手に安心感を与えるような仕方でケアをしていくことを大事にしています。
だからこそ、心の通う介護を行うことができるのです。
ユマニチュードは、「介護のプロ」であっても、家族を介護する「一般の方」にとっても有効な技法であると同時に、「ケアを受ける人」、「ケアを行う人」両者にとって大きなメリットがあります。
ユマニチュードを学ぶ講習会や書籍もありますので、ぜひ取り入れてみましょう。
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