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ケアまどニュース
老健の「在宅復帰」強化進む
介護老人保健施設(以下、老健)は全国各地にあり、愛知県名古屋市にも多くあります。
本来の老健の役割は、その人に必要なリハビリを受けながら機能回復を目指すと同時に、帰宅して自宅で生活することを目標としています。
しかし近年では、老人の独居世帯が増えるなど、自宅へ帰宅しても在宅介護をする人がいない、もしくは少ない状態が多く見られます。
また、特別養護老人ホーム(以下、特養)への入所を希望してもすぐに入所ができない状況であり、待機期間の受け皿として老健が利用されることも少なくありません。
1.介護老人保健施設は「5種類」
老健には、施設の種類や提供するサービス、どのような介護を提供できるのかによって、いろいろな分類方法があります。
その中でも厚生労働省が定める介護報酬によって分類すると、5種類に分けることができます。
施設がどの種類に分類されるかにおいては、「在宅復帰・在宅療養支援指標値※1」によって分類できるだけでなく、その施設の「設備・サービス内容」によっても異なります。
分類に当たって評価基準となる要件は、複数が制定されており、その施設が該当するかどうかによって、「要件アリ」か「要件ナシ」かが判断されます。
※1【在宅復帰・在宅療養支援指標値】
下記、①~⑩の項目を数値化し計算します。
①在宅復帰率
②ベッドの回転率
③入所前後の訪問指導の割合
④退所前後の訪問指導の割合
⑤在宅サービスの実施割合
⑥リハビリ専門職の配置割合
⑦支援相談員の配置割合
⑧要介護4・要介護5の利用者の割合
⑨たん吸引の実施割合
⑩警官栄養の実施割合
例えば、【退所時指導等の要件】の場合…
・入所していた人が退所する際、本人や家族に対して退所後の療養について指導を行っているか
・また退所後1カ月目に自宅を訪問したり、指定する居宅介護支援業者からの情報提供を受けたりして、在宅での療養生活の状態を記録しているか
① 超強化型老健
・リハビリや退所時の指導、地域貢献活動などにおける要件があり、在宅復帰や在宅療養支援指標値が70以上
② 在宅強化型老健
・要件は超強化型老健と同じで、在宅復帰や在宅療法支援指標値が60以上
③ 加算型老健
・在宅復帰や在宅療養支援指標値が40以上
・リハビリマネージメントや地域貢献活動、退所時の指導等における要件があるものの、充実したリハ設備においては要件なし。
④ 基本型老健
・在宅復帰や在宅療養支援指標値が20以上
・退所時の指導とリハビリテーションマネージメントにおいては要件があるが、地域貢献活動や充実したリハ設備に関しては、要件なし。
⑤ その他の老健
・上記に該当しない施設すべてが分類され、介護報酬における分類方法では「その他」に分類
2.国は「強化型」を推進
老健では、先述した分類に応じて介護報酬が異なります。
その中でも、介護報酬が高めに設定されている「強化型老健」は、国が今後推進していきたいと考えているタイプの施設です。
強化型老健を国が推進したい理由
現在は、特養などへ入所するまでの待機施設、または長期入所を前提に利用者を受け入れていることも多い老健ですが、本来は自宅へ帰宅し、自宅で生活することを前提とした在宅復帰のための施設でなければいけません。
そのため国では、老健の中でも「強化型」を推進することによって、老健に入所している人が少しでも多く、自宅へ復帰できるような後押しを進めています。
介護報酬については、定期的に見直しが行われていて、現状やニーズに合わせて細かく調整作業が行われています。
老健におけるサービスにおいても、今後は在宅復帰や在宅での療養を支援するための対策として、居宅サービスや訪問リハビリテーションにおける介護報酬を高めにするなどの案が出されています。
また、老健へ入所している入所者に対しては、少しでも効率的かつ効果的なリハビリテーションを提供して、少しでも早く自宅復帰できるような案もあります。
例えば、理学療法士や言語聴覚士、また作業療法士などの資格を持つスタッフの配置に関して評価するなど、評価体制や基準の見直しが行われています。
老健が提供できるサービス
老健が提供するサービスには、入所サービス以外にもあります。
・訪問リハビリテーション
・通所リハビリテーション
・短期入所サービス など
しかし、実際に全てのサービスを提供している施設はそれほど多くはありません。
通所リハビリテーションに関しては、約90%の老健が提供していますし、短期入所療法介護でも、約92%の施設は既に導入しています。
しかし、訪問リハビリテーションに関しては、約31%程度しか提供していないという現状があります。
今後は、この訪問リハビリテーションの分野をより推進することによって、老健を退所した後でも自宅でリハビリテーションを受けられる環境整備をする事が課題となるでしょう。
リハビリテーションについては、基本的には理学療法士や作業療法士、そして言語聴覚士などのリハビリの資格を持つスタッフが内容を決定するのが一般的です。
時には医師が関与する事はあるものの、多くの場合には、リハビリ訓練中における留意事項を指示するのみにとどまっています。
しかし実際には、医師がリハビリの必要性や訓練内容を指示した場合、利用者のADLがより向上することが、厚生労働省の調べによって既に分かっています。
そのため、今後はリハビリテーションの内容や詳細に関して、医師がより深く関与することが推奨されるのではないかと予想されています。
3.「本来の役割」を再び
タイプによって収益に差
老人ホームや介護施設は、民間企業が運営する施設のため、施設運営において利益を出さなければいけません。
こうした施設の収益は、国からの介護報酬と入所者からのサービス利用料金によって成り立っているわけですが、老健の種類によって事業収益率には大きな差があります。
事業収益率という点で老健を見ると、「超強化型」が他のタイプよりも収益率が高く、約6%程度となっています。
また、施設運営によって赤字が発生する割合も低い傾向にあり、赤字率は全体の16%程度となっています。
介護福祉施設の赤字経営率は平均21%程度なので、比較すると超強化型は赤字になりにくい施設だと言えます。
強化型はなぜ増えない?
入居者はADLの向上が見込め、赤字率も低い「強化系老健」老健を国は推進しています。
しかし、実際に老健の数を見ると、基本型が全体の35%程度と最も多いのが現状です。
一方で、超強化型は全体の18%程度にとどまります。
その背景には、超強化型や強化型に変えるために必要な、施設全体のサービスの提供の仕方や業務の見直し、人員の確保など、加算を取得するための体制整備が決して簡単ではないからでしょう。
あわせて、地域ごとのサービス格差や家族を取り巻く環境など、在宅復帰後に利用者が安心して生活できる環境を整えることも容易ではないケースも少なくありません。
また、積極的に「在宅復帰=退所」を推進するということは、その分入所する人を確保しなければ「空きベッド」が増える原因となります。
老健によっては、こうした「空床リスク」も強化型に移行しにくいと感じる原因になっていると言えます。
【おわりに…】
愛知県名古屋市にも複数ある老健には、介護報酬の評価によって5種類に分類できます。
その中でも国が推進している強化型は、入所中にプロから効果的かつ効率的なリハビリテーションを受けてADLをできるだけ向上させ、退所して自宅療養する際には、訪問リハビリテーションを受けることによって長引くリハビリに対応することを目標としています。
今後、このタイプの老健が増えることが予想されていますが、一方で強化型へ移行を前向きに検討している施設ばかりではないのも事実です。
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