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ケアまどニュース
介護保険データベースが「LIFE」へ名称変更
近年、マイナンバー制度の開始やデジタル庁の創設など、国を挙げての「デジタル化」の推進が加速しています。
介護業界においてもデジタル化は積極的に進められており、「科学と介護」を結びつける動きが活発化しています。
今回は、2021年4月から名称が変更される、
介護保険の新たなデータベース LIFE とは何なのか。
また、LIFEが目指す 科学的介護 とはどのようなサービスなのかについてまとめました。
1.CHASEからLIFEへ
厚生労働省に設置されている「社会保障審議会(介護給付費分科会)」は2021年1月18日、介護サービスのデータベース「CHASE(チェイス)」を、4月から「LIFE」に名称変更すると発表しました。
介護業界におけるデジタル化の要として、政府が推進しているデータベース事業「CHASE」ですが、政府がデータベース化を進める理由とはなんなのでしょうか。
また、なぜ名称を「CHASE」から「LIFE」へと変更する必要性とは、なんだったのでしょうか。
2.CHASE(チェイス)とは
CHACEとは
介護において構築が進められているデータベースです。
効果について根拠のある裏付けが得られているケアを提供する「科学的介護」の普及を目指して導入されました。
「Care(介護)」
「Health(健康)」
「Status(介護を受ける人の状況)」
「Events(情報)」
それぞれの頭文字をつなげ、「CHASE」と名付けられました。
CHACEの役割
「CHACE」は、たくさんの情報を集めて、医療・介護情報データのプラットフォームとするためのシステムです。
集められる情報は、下記の通りさまざまです。
・診療や介護の記録
・リハビリデータ
・要介護認定支援情報などの介護サービスの内容
・サービスを利用する利用者の状態 など
このプラットフォームに集められたデータを科学的に分析します。
そして、各々の「自立した生活の維持」や「要介護の重度化防止」のために、どんな支援が必要かを明らかにするための制度です。
名称変更の背景
これまで、介護業界においては下記2つのデータベースが活用されてきました。
①:介護保険総合データベース
→ 保険給付に関する情報
②:VISIT
→リハビリテーションに関する情報
これらのデータベースには要介護認定情報や介護保険のレセプト、利用者の日常生活の動作、認知機能といった情報が集められています。
しかし、それだけでのデータでは効果が得られる介護を提供するには不十分であるとの考えから、新たなデータベースとしてCHASEの運用を開始することが2018年に決定しました。
科学的介護に不可欠な「エビデンス」
医療分野では、エビデンスという言葉がよく使われます。
エビデンスとは、これまで実際に患者さんに行ってきた医療に関する情報を分析し、そこから得られる「この治療法がよいと決断するための証拠」です。
医療提供者の主観ではなく、客観的事実に基づいて医療を提供することで、より適切な効果を得ることを目的としています。
このエビデンスを介護分野でも活用し、介護サービスを利用する人の自立支援や重度化を防止することを目指して創設されたのが「CHASE」なのです。
このためCHASEでは幅広い情報の収集が求められます。
「CHACE」の構築過程
ADL(日常生活動作)、認知症、口腔、栄養についての具体的な情報を、全国の介護施設から収集します。
これによって介護サービス利用者の現在の状況、リハビリテーションやサービス内容などの介入状況、その結果得られた変化といった情報のデータベースが構築されるのです。
例えば、脳卒中で体の左側が麻痺し、3メートルしか歩けないお年寄りに対して歩行訓練を行った結果、杖を使って20メートルまで歩けるようになったなどの情報が収集されます。
「CHACE」の情報開示
集められた情報は、厚生労働省のWebサイトなどで公開され、介護サービスに関する具体的なデータに、誰もがアクセス可能になります。
そしてCHASEから得た情報を参考に、利用者が自分に適したケアを選択できるようになり、一人ひとりのニーズに合わせた介護の提供が可能になるのです。
自分に適した介護を選べるようになれば、今まで以上に自分らしく暮らせる環境が実現すると期待されているのです。
「LIFE」とは
CHASEから名称が変更され、「LIFE」に変わることになりました。
「LIFE」は、「Long-term care Information system For Evidence」(エビデンスのための介護情報システム)」の、単語の頭文字をつなげて名付けられました。
LIFEの位置づけとしては、リハビリテーションのデータベースと、科学的介護を実現するためのデータベースの掛け合わせ。
つまり、「VISIT」と「CHASE」を融合させたものと考えればよいようです。
2021年4月に実施される介護報酬の改定において、「LIFE」への情報提供やフィードバックの活用に対する加算が実施される予定です。
これによって今後は、介護保険についての情報を集めた「介護保険総合データベース(介護DB)」と、「LIFE」の2つのデータを基幹とする科学的介護が進められていくことになります。
3.「LIFE」とリハビリデータ「VISIT」の活用で目指す科学的介護
データベースの活用によって得られる「科学的介護」によって、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。
現在、介護保険サービスについては基本的な枠組みは決められているものの、それぞれの事業所で提供される具体的なサービス内容に関しては、現場に一任されています。
このため各事業者が行っている介護サービスについて「どのような効果が得られると期待して実施されたのか」、その結果「期待した効果は得られたのか」、また「どのようなリスクが生じたのか」といった効果やリスクに対する科学的な検証がなされていないのが現状です。
LIFEの運用が進み、介護現場からの情報が集まってビッグデータとして管理・運用されるようになると、集めたデータに基づいてフィードバックが可能になります。
Aという内容のレクリエーションを行った結果、Bという効果が得られた。
あるいはCというリスクが発生したといった具体的な情報が集まれば集まるほど、どのケアが効果的なのかを証拠づけるための分析に役立つからです。
客観的な情報を分析して得られたリハビリテーションや介護などを提供することで、サービスの質が向上し、利用者の自立支援や重度化防止に役立つことが期待されています。
【おわりに】
これまでの介護サービスでは、「なぜ、この方法が必要なのか」「そのケアによってどのような効果が得られるのか」といった科学的な根拠にフォーカスがあたっていませんでした。
しかし近年は、利用者の自立を支援したり、重症化したりするのを防ぐために、国をあげて推進されようとしています。
時代にあわせた「介護の在り方」を変化させていくために、エビデンスが得られるデータベースの構築によって、より質の高い介護サービスの実現が期待されています。
名古屋市愛知県の介護施設や老人ホームでも、LIFEへの情報提供やフィードバックを活用することでエビデンスに基づくケアの提供が可能になり、利用者の満足度の向上につなげられるのではないでしょうか。
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