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ケアまどニュース
「サ高住」退去に関する情報開示を強化。
サービス付き高齢者向け住宅、通称「サ高住」は、ここ近年で増加した民間型の施設で、愛知県名古屋市にも多数存在します。
このほど国土交通省は、サ高住の普及を目的とした「スマートウェルネス住宅等推進事業」の給付金を受けるための補助要網に対して、提出期限を2025年度末まで延長しました。
その一方で、情報不足による入居後のトラブルを回避することを目的に、登録事業所に対して「入退所者数」や「退去理由」などの情報開示を強化する方針を打ち出しています。
1.サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅という名前は呼びにくいため、「サ高住」や「サ付き」という略称で呼ばれることもあります。
高齢者が安心して暮らせる、賃貸住宅です。
バリアフリー設計であることが定められており、安否確認や生活相談など、生活を支援するためのさまざまなサービスが提供されるのも特徴です。
介護付き有料老人ホームとの違い
高齢者の住居としては、介護付有料老人ホームもよく知られていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
【介護付き有料老人ホーム】
介護付有料老人ホームでは認知症や寝たきりなど、要介護度が高いお年寄りも受け入れています。
このため、施設自身が介護保険サービスを提供しているのが特徴です。
【サービス付き高齢者向け住宅】
一方、サービス付き高齢者向け住宅は、原則として自立した生活ができるお年寄りが対象の賃貸住宅です。
・「60歳以上」であること
・「60歳未満の場合は、要介護認定または要支援認定を受けている」こと
が入居条件となっており、施設自体が介護保険に該当する介護サービスを提供することはありません。
最低限の必須サービスとして、安否確認と生活相談が義務づけられているだけです。
しかし多くの施設が、これら必須サービスに加えて、
・食事の提供
・掃除、洗濯などの家事の援助サービス
・健康相談、健康増進サービスなどの生活支援サービス
をオプションとして提供したり、介護保険でカバーできないケアを施設独自の実費サービスとして提供しています。
介護や医療サービスは、提携している訪問介護事業所や往診医といった外部機関が行うことになるため、24時間にわたって介護や医療的対応が必要となる重度の高齢者の入居は難しいことが多いのです。
また、キッチンなど自立向けの設備が、寝たきりの人にとっては必要のない設備であることも多く、無駄を省く意味で転居する人もいます。
現在は元気でも、要介護度が上がる、病気が悪化する、などの理由から、施設側から他の施設への転居が求められるケースもあります。
サ高住ならではのメリット
元気な高齢者向け賃貸住宅であるため自由度が高いことです。
一般的な住居で暮らすのと同様に、外出や外泊も届け出の必要がない施設が多く、自分のペースで生活することができるのです。
サ高住の契約方式
老人ホームの場合は、その施設を利用し、そこに住み、サービスを受ける権利を保障する「利用契約方式」にて入居契約が交わされます。
これに対し、サ高住は、運営者との賃貸契約を結ぶことになります。
2.サービス付き高齢者向け住宅の登録制度
サービス付き高齢者向け住宅は「高齢者住まい法」という法律に基づいて作られており、事業者は、都道府県など施設を運営する地域で事業者登録を行う必要があります。
これによって家賃や提供するサービス内容など、施設に関する情報が公開され利用者に広く知ってもらうことが可能です。
また、補助金の給付や税制の優遇措置、融資制度の活用などのサービスも受けられるようになります。
事業者登録の基準
基準①:ハード面
居室の床面積が原則として25平米以上であること、廊下の幅の確保、段差解消、手すりの設置などバリアフリー構造であること、施設の構造や設備が一定の基準を満たしていることが登録条件となります。
基準②:サービス面
見守りなどの状況把握サービスと、生活相談サービスの2つを提供することが義務づけられています。
介護の専門家が日中施設に常駐し、入居者の状況把握及び生活相談に関するサービスを提供しなければいけません。
基準③:契約内容
長期入院を理由に事業者が一方的に解約できないなど、安定して住み続けることができる契約内容とする必要があります。
また、契約内容で決められた敷金、家賃、サービス費用以外の費用の請求も禁止されています。
3.スマートウェルネス住宅等推進事業
サ高住に対する補助金制度
サービス付き高齢者向け住宅の運営事業者が活用できる優遇制度の一つに、「スマートウェルネス住宅等推進事業」があります。
この事業は条件を満たしたサ高住に対し、建設費および改修費用の一部を国が補助する制度です。
・新築する際の費用の10分の1補助
・改修する際の費用の3分の1の補助
→ 1戸あたり90万~180万円の補助金が確保できる
登録件数は増加傾向
サ高住の利用者は、基本的には自立した生活が可能なお年寄りに限られていました。
しかし、高齢化が進んだ現在、介護が必要にもかかわらず満床などの理由で特別養護老人ホームなどに入居できない人も増えています。
このようなお年寄りが、他の介護施設へ入居するまでのつなぎとして利用するケースも増加しているのです。
【登録数の変化】
・サ高住の登録制度が始まった2011年:3448戸
・2020年:26万2021戸
施設の「在り方」はさまざま
高齢者が安心して暮らせるための住居を支える制度ですが、施設によって住居の設備やサービスの内容はさまざまです。
サービス付き高齢者向け住宅の利用を検討するお年寄りにとっては、数ある施設の中から自分に最適なサービスを提供する施設を選ぶことが何よりも重要です。
また、入居後も事業者から突然の退居要請や、サービス料の急激な値上げなどが行われず、安心して暮らせる安定した経営状況が求められます。
このため、登録した施設は情報が公開されているのですが、政府は2021年度から、登録情報の内容の見直しなど、サ高住への監視を強めていく方向を打ち出しました。
サ高住への「監視強化」の背景
監視が強まった背景として、入居者が確保できず経営難に陥っている施設が年々増えているからです。
・突然の廃業でお年寄りが住まいを失う
・経営者が変わり住居費が高騰する
政府はこうしたことが起こらないよう、入居者数及び退去者数や退去理由などの情報を公開することを義務づける方針です。
「囲い込み」へのテコ入れ
さらには、利用者に自社が提供する介護サービスを強要する、いわゆる「囲い込み」を行っている施設を補助金の対象から外すことも検討中です。
サ高住に求められる安否確認と生活相談サービスに加えて、オプションとして様々なサービスを提供しているところが多く、それらは自費負担です。
こうしたサービスについて、囲い込みを悪用し、本来なら必要のないサービスを提供して、不当に利益を得る事業者が問題視されているのです。
【おわりに】
お年寄りの住まいを支える「サービス付き高齢者向け住宅」。政府は事業者が経営難に陥らないようにさまざまな優遇制度を設けていますが、その一方で囲い込みなどの不当な経営を行っている事業主に対して監視を強めていく方針です。今回検討が進められている監視強化を含め、お年寄りが安心して利用できる施設の運営を実現させるための施策が求められています。
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