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2021/01/24
コラム

「介護職員の賃上げ」財源確保で負担は増加?

衆議院選挙を経て絶対安定多数を獲得した自民党の公約の1つに、「看護師・保育士・介護士の賃金アップ」があります。
愛知県名古屋市内で介護施設や老人ホームを探している人にとっては、介護士の賃金アップのための財源確保のため、負担が増えることになるのかどうかが気になるところでしょう。
実際に現在の介護職員の収入や介護職員の賃上げがどのように閣議決定されたか、その経緯と最大の課題となる「財源確保」の問題について確認しておきましょう。

1.介護職員の平均賃金と生涯年収
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介護職員(介護士)の年収および給料は、その雇用形態の違いによって大きく異なってきます。

令和2年度の「介護従事者処遇等調査結果」によると、雇用形態が常勤(=正社員)の場合、平均月収は21.78万円、ボーナスが70万円~100万円程度で、平均年収は約350万円程度になります。
日本国内における平均年収は2019年には436万円となっており、介護職員の年収が平均を下回っていることがわかります。
ただし、この数値はあくまで平均値であることから、介護職を職業としながら年収が1000万円を超えるという事例も、数は少ないですが、存在しています。

非常勤(=パート・アルバイト・派遣社員)の時給は950円~1,500円前後が平均で、特にアルバイトは最低賃金に近い時給設定になっている場合も少なくありません。
求人ボックスのデータによれば、介護職のアルバイトやパートの平均時給は975円、派遣社員でも1,321円となっています。
非常勤の場合、派遣社員の方がパート・アルバイトよりは時給が高くなっています。

介護職員の生涯年収を2015年(平成27年)の「賃金構造基本統計調査」で見てみると、約378万円とされています。
介護士として40年間勤続したと仮定した場合、その生涯年収は約1億5000万円程度となる計算です。
日本国内の平均年収で計算すれば、生涯年収は1億7000万円程度となりますので、2000万円程度の差が出ていることになります。

ただし、介護職員(介護士)の収入については、「介護福祉士」「ケアマネージャー」といった資格を取得すれば給与額がアップするので、平均年収の差を埋めることはできます。

2.介護・障害福祉職員を対象とした賃上げが閣議決定
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第49回衆議院選挙で、自由民主党は絶対安定多数の議席を獲得し、2021年(令和3年)11月10日に、第2次岸田内閣が成立しました。
岸田首相が就任当初より掲げてきた政策目標である「新しい資本主義の実現」の方策として、「成長と分配」を強調し、4つの分配戦略の柱の1つ、「公的価格のあり方の抜本的な見直し」の最優先課題として、介護職員や看護婦、保育士といった職に就いている人たちの所得向上を公約としていました。
それを受けて2021年11月18日、後藤厚生労働大臣が2022年2月より介護職等の給与を月額3%程度(約9,000円)の引き上げを表明しました。

政府はこの他にも、「介護・看護・保育等のすべての職員を対象として、抜本的に公的価格のあり方を見直す」とも表明しており、経済対策の裏付けとしての今年度補正予算案を11月26日の臨時閣議で決定、12月6日に召集された臨時国会において速やかに成立させたい考えです。

3.最大の課題「財源の確保」国民負担増も
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今回の岸田内閣による公的価格の見直し(介護職の給与引き上げ)に関し、最大の課題として指摘されているのは「財源の確保」の問題です。
介護分野の賃上げについて、全国の介護職員、約138万人の給与を月額3%引き上げるための原資として、約1000億円が計上されています。

介護報酬はそのサービスごとに細かい設定がなされていて、通常3年に1度、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聞いて、改定されます。
基本的に、介護報酬はそれぞれのサービス提供にかかる費用にプラスして、各事業所におけるサービスの提供体制や利用状況などに応じて加算減算される仕組みです。
事業者への報酬は原則出来高払いで、その中から介護職員やスタッフの人件費が支払われています。

介護報酬の財源は、原則としてその10%をサービス利用者が負担しており、残りの90%の半分を介護保険料、後の半分を国と都道府県、さらに市町村の公費で負担する形となっています。
ここに、今回のような形で加算して介護報酬の増額を行おうとする場合、現状決められている財源以外に、新たな財源の確保が必要となります。
現段階ではその財源として「介護保険料」のアップ、もしくは保険者の年齢引き下げが検討されています。

・保険料アップ

介護報酬増加の財源としてまず検討されているのは、介護保険料のアップに加えて、国と自治体の公費のアップ、そして現在は原則10%とされている、サービス利用負担の増加です。

しかし、介護保険料はこれまでにも高齢化の進行による介護の需要の高まりを受けて大きく増額されている経緯があり、年金生活者にとって少なくない負担となっている現状もあります。
財務省は2021年、介護保険料の改定にあたって、介護報酬のプラス改定は、更に保険料負担と利用者の負担の増加につながるため、慎重を期すべきであると訴えて、介護報酬の引き上げに否定的な姿勢を取っています。

・保険者の年齢引き下げ

もう1つの財源案として、介護保険の保険者年齢引き下げ案が浮上しています。
全国介護事業者連盟は11月12日に、継続的で十分な介護職の賃上げに欠かすことのできない財源を確保する策として、介護保険被保険者の年齢を、現行の40歳以上から新たに30歳以上へと引き下げることを提言しています。
保険料徴収の範囲を拡大することで得た増収分を、介護報酬の引き上げのための原資とするという考え方です。

介護保険の被保険者の年齢引き下げについてはこれまでにも検討されたことがありましたが、若い世代や子育て世代の負担を更に重くしてしまうことに関して慎重論が根強いのが現実で、これまで政府は採用を見送り続けているという経緯があります。

全国介護事業者連盟は他にも賃上げに関する具体策に触れており、現状の「処遇改善加算」とは別個の仕組みの検討が必要である、と呼びかけを行っています。
また、個々の事業所の実情に合わせて柔軟な分配を行うことや、現時点では賃上げ対象とされていないケアマネージャーらも賃上げ対象に含めることを、併せて提案しています。

おわりに

既存の介護職の賃金改定の仕組みでは、介護職にあたる当事者にとって賃上げの実感が十分ではなく、それは介護現場での深刻な人手不足を招いているとされています。
たとえ月額9,000円の賃上げを行ってもなお、国内の平均収入には及ばない給与水準であるという現実があることは否めません。

一方で、賃上げの財源を保険料アップに求めるにせよ、あるいは介護保険の被保険者の年齢を引き下げるにせよ、国民の負担が増加することになるのは避けられない情勢であることも事実です。
「2025年問題」と言われる超高齢化社会が現実化しようとしている昨今、介護のニーズがますます増えており、今後いかに介護職員の人材を確保し、その収入を保障していくか、社会全体で対応を迫られる重大な問題となっていることは間違いありません。
制度の抜本的な見直しを含めた改善案をいかに検討していくことができるか、そのことが政府に問われていると言えるかもしれません。