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2020/09/07
コラム

高額介護サービス費の経過措置「廃止」

「介護保険サービスの利用料」は、世帯所得に応じて全体の1割~3割を利用者が負担し、介護事業所や老人ホームに支払います。

この料金は当然、介護度が高く介護サービスがたくさん必要な人や、負担割合が2割~3割の人の方が高額になります。

こうした方が、必要な分の介護サービスを無理なく受け続けるための、費用面の負担を軽減する「高額介護サービス費制度」という仕組みがあります。

しかし、高齢化による介護費の国家負担の増加を受けて、その軽減制度の基準が見直されることになりました。

急激な負担増に考慮し、この基準見直しには「経過措置期間」が設けられていましたが、今年7月に終了となりました。

この一連の流れや内容について詳しくみていきましょう

 

1.「高額介護サービス費」とは

 

高額介護サービス費

 

 介護保険負担額の仕組み 

① 【内容と回数】
内容ごとに異なるサービス単価と、サービスを受ける回数によって、1ヶ月の利用料金の負担額が変わります。

②【利用者の世帯所得】
サービス利用者の世帯所得によって、利用料の自己負担額が1割~3割のいずれかになるかが決まります。

通常は1割負担ですが、「現役並みの所得がある人」や、「住民税課税世帯の人」は、2割~3割の介護保険利用料を負担することになります。

 

自分の負担割合を知りたい場合には、「負担割合証」をチェックするのが一番です。

介護度が記載された介護保険証とは別の証書になりますので、ご注意ください。

もし、「負担割合が分からない」、「負担割合証が見当たらない」という場合には、担当ケアマネージャーや自治体に相談しましょう。

 

こうした条件により、介護保険料の自己負担額が決定されます。

この自己負担額が、一定の金額を超えた場合に適用されるのが、

高額介護サービス費」という制度です。

 

 高額介護サービス費制度 

介護保険制度上の利用者の負担を軽減するための仕組みで、 介護保険サービスを利用する際に、自己負担が高額になった場合に適用される。

 

「介護費用の支払い」は、経済的に大きな負担となっているケースが多いため、金銭的理由から継続的なサービス利用が難しくなるリスクもあります。

そのため、一定金額を超えた分の自己負担金は、手続きをすることで払い戻してもらえるです。

 

似たような制度では、医療費に関する「高額療養費制度」があります。

年間の医療費が一定の基準に達した場合に、支払いの免除(または、払い戻し)が受けられるという制度です。

これが、介護費についても同じように実施されているのです。

 

2.2017年に行われた制度の「見直し」

 

2017年制度見直し負担割合

 

この高額介護サービス費の制度では、上限額を超えた分は払い戻しがなされることになっています。

そして、この上限額は世帯の所得額によって異なっています。

2017年の基準見直しにより、現役並みの所得には至らないものの、【世帯のだれかが市民税を課税されている方】の上限額が月間37,200円から44,000円に引き上げられました。

所得別の上限額は以下の通りです。

生活保護受給中の方
・個人:15,000円/月

前年の合計所得金額+公的年金の収入額の合計が80万円以下の方
・個人:15,000円/月
・世帯:24,600円/月

世帯全員が市民税非課税の方
・世帯:24,600円/月

世帯のだれかが市民税を課税されている方
・世帯:37,200円/月 → 2017年8月~ 44,000円/月

現役並みの所得者に相当する方がいる世帯
・世帯:44,000円/月

2017年の改定により、【世帯のだれかが市民税を課税されている方】については本人の所得に関わらず現役並みの所得世帯と同じだけ負担することになりました。

 

しかしながら、対象者の経済的負担を考慮し、上限額の引き上げを一時的に保留する「経過措置」が行われました。

世帯のだれかが市民税を課税されている方】のうち、その世帯の65歳以上の方全てが負担割合1割であれば年間上限額が446,400円でとなりました。

 

年間上限額である44,640円を1ヶ月に換算すると、1ヶ月37,200円が上限となりますので、実質的には負担額は据え置きとなります。

ただし、この条件が当てはまる世帯でも、【世帯の中に現役並みの所得の人がいる】場合は、通常通り上限額は月間44,400円となります。

 

こうして、制度上は高額介護サービス費の上限額の引き上げがなされましたが、世帯によっては引き上げを一時的に免除されたかたちになりました。

しかし、この2017年になされた措置はあくまでも「経過措置」であり、3年間のみの期間限定でした。

その期間の終了とともに、すべての【世帯のだれかが市民税を課税されている方】において、上限額が44,400円になるというわけです。

 

 3.経過措置は2020年7月で廃止

経過措置廃止

制度の見直しと同時に始まった、上限額据え置きの「経過措置」は、2017年にスタートし、3年間続けられるという形になりました。

そして、ついに2017年7月にこの経過措置が終了しました。

そのため、【世帯のだれかが市民税を課税されている方】については、その方の所得額の高さに関わらず月の上限44,400円まで、介護サービス費用を支払うこととなりました。

 

経過措置中の年間上限446,400円から、最大で年間532,800円まで引き上げられましたことになります。

つまり、1年間で最大86,400円の負担増ですから、決して少ない額ではありませんよね。

 

これは全国一律の措置であり、愛知県名古屋市においても同様の報酬制度が実施されています。

自治体によっては、国が定めた介護費用制度にプラスする形で補助を行ったり、地域ごとの介護保険料の支払額についての調整もあるようですが、全体として介護サービス費用の実質的な引き上げがなされていることには変わりはないでしょう。

国の財政に限りがあることはもちろんですが、高齢者の負担が大きくなることで十分なサービスが使えなくなってしまうことが懸念される状況です。

 

おわりに…

介護サービスの費用は、要介護者とその家族の所得状況によって変わってきます。

基本的な報酬としては、サービスの内容と利用回数によって決まってきますが、所得区分ごとに負担割合が異なり、月間のサービス費の上限額も所得区分によって変化が付けられています。

一定額以上を支払ったら、その額以上は払い戻しされるという「高額介護サービス費制度」は、世帯の誰かが住民税を支払っている家庭の上限額が引き上げられ、実質的にサービス費用の負担増がなされることになりました。

この負担増は2017年に制度化され、経過措置によっていったん保留状態となっていましたが、2020年7月に経過措置も終わり、本格的に多くの世帯で負担がアップすることになりました。

利用者においては、同じサービスを受けているのに負担が大きくなったのを感じることになります。

高齢化による介護費用の国負担が大きくなっているための制度変更ということになります。