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ケアまどニュース
今年10月から。ベテラン介護職員の賃上げ実施(予定)
介護のニーズはどんどん高まるのに、介護職に就こうとする人は少ないという現実に対処するために、国を挙げて様々な策を講じています。
その一つとして、政府の審議会が介護報酬改定を行うという結論を出しました。
ベテラン介護福祉士などが、より良い条件で働けるように賃上げを行うというものです。
今回はその内容について、どんな条件で、どんな課題があるのかについて詳しくみていきましょう
介護士の賃金が見直された背景
日本は超高齢化社会に突入することが確実となっていて、すでに介護のニーズは非常に高い状況です。
高齢者が安心して過ごせるような社会にするためには、介護に携わるプロフェッショナルの存在は欠かせません。
しかし、実際問題として介護業界は、人手不足が深刻な業界の一つです。
その理由は様々ありますが、そもそも介護という仕事自体が、身体的・精神的に負担がかかりやすいという事情があります。
介護現場は暑い浴室での入浴介助や、入所型施設での夜勤など、体力が必要とされる仕事です。
また、人の死が身近であったり、対応に知識や経験が必要とされる認知症の高齢者を相手にするなど、精神的なストレスを感じる場面も少なからずあります。
こうした難しい職種であるにも関わらず、介護現場で働く従業員の賃金は低い水準となっているのです。
常に人手不足が見られ求人も多いので、気軽に介護の職を始める人も多くいますが、その仕事内容と給料の安さからすぐに辞めてしまうというケースもよくあります。
現場の仕事の大変さと果たしている社会的意義に比べ、賃金が安いというのが大きな理由なのです。
介護というものは、人の暮らしに寄り添うとても素晴らしい仕事です。
しかし、仕事として高いモチベーションを保ちながら続けるには、動機だけでなく賃金という現実的なメリットを持つことも欠かせません。
そのメリットが今の日本の多くの介護現場では十分ではないため、ベテラン介護職員数がなかなか増えていかないのです。
人口が密集している愛知県名古屋市のような都市でも、地方でも、全国的に介護職、特に経験があり介護に関する技術と知識を持っている介護士はさらに必要となっています。
一方で、新たな成り手が少ない、職を離れる人が多くいるという現実を打破するために、介護の賃金を見直そうとする動きが生まれたのです。
ベテラン介護職員の給料が上がれば、仕事を探している人の目にもとまりやすいですし、現在介護をしている人も、待遇が改善されることによって、介護職を続けるモチベーション維持に繋がると期待されます。
賃金アップというアプローチの仕方で、介護業界の労働力を確保するというのが、この政府審議会の目指す内容となっています。
賃金はどのくらい変わる可能性があるのか、その対象者は?
政府審議会が決めた賃上げに関する内容は、介護職に就いている人すべての賃金を上げようというものではありません。
具体的には、一つの事業所内に、最低一人は年収440万円以上の人がいるべき、一人当たり月8万円の賃金上昇を見込むというものとなっています。
この年収440万円というのは、日本国内のすべての業種の平均的な年収となっています。
つまり、これまで介護職は他の職種に比べ平均年収が低かったため、賃金を平均レベルまでは引き上げましょうという内容です。
そこまで引き上げるためには、大体月給換算で8万円アップすれば良いという考え方になります。
ここでのポイントは、すべての介護士の年収をその水準まで引き上げることを決めているわけではないということです。
あくまで、事業所内に一人以上はこの年収水準に達するようにしましょうと言っているのです。
そのため、事業所としては、より経験があり貢献度の高いベテラン介護士を選んで給料を引き上げるという方法を採ることになるでしょう。
また、こうして引き上げられる賃金分は、従業員皆で分配するという方法ではなく、基本的にピンポイントで対象者を選んで、その人の給料のみを引き上げるという考え方を持っています。
すると、当然同じ事業所内で収入の格差が大きくなることが予想されるわけです。
一人の介護士の給料が上がれば、他のスタッフへの配慮も必要となりますので、全体的に多少なりとも給料水準が上がるということが期待されています。
しかし、介護に関する報酬は、国が定める介護報酬によって決まっており、入ってくるお金には限界があるため、全てのスタッフに配慮して、一律で給料を上げるというのは現実的に厳しいでしょう。
処遇改善に残る課題
こうして見ると、介護職の賃金事情を向上させるというのは、メリットが考えられる一方で、今回の方法では、いくつもの課題が残るのは明らかです。
まず、賃金アップのためには、政府が介護報酬の引き上げを行い、老人ホームなどの介護事業所への支給額を増やすことになります。
この取り組みは、支給されるお金はスタッフ全体へ公平に分配されるのではなく、事業所内の最低一人の年収を増やすという目的で使われます。
そのため、経験を積んだベテラン介護士すべてが、必ずしも同じように高い収入を得られるわけではないことになります。
事業所としても人件費を抑えるために、すべての介護士の給料を上げるわけにはいかず、特定の介護士だけを賃金アップさせるというのが現実的な変化でしょう。
そのため、対象とならなかった職員は、その待遇の差でかえってモチベーションが減退してしまうという可能性も否めません。
こうした現実は、同じ介護士同士でも、対象者と非該当者の間のトラブルを引き起こすことになりかねません。
また、評価の指標に年数が重要視されることで、経験年数は長くても、仕事が疎かな職員や、年数は短くても真摯に介護に取り組んでいる職員など、数字では測ることができない、評価されるべきポイントもあるでしょう。
評価が正しくなされなければ、摩擦を生み出すリスクを高くしてしまいます。
更に、今回の賃金アップは介護士に限定されているものです。
しかし、実際介護施設には、作業療法士などのリハビリスタッフ、介護支援専門員、相談員や事務員など他の業務で日々施設や利用者の暮らしを支えている人もいます。
こうした他の職種の人たちは賃金アップの対象とはならないため、やはり収入格差が生まれることになり、老人ホーム内でのギクシャクした雰囲気が生まれてしまう原因にもなります。
このように、一部の人だけにメリットが集中してしまい、格差というリスクがあるのは事実です。
しかし、政府審議会が定めた賃金アップという内容自体は、介護職の給料事情を改善するためには有効なものでしょう。
こうした動きがさらに加速して、介護関連のすべてのスタッフにメリットが行き届くような施策が進み、他の業界と比べても高水準の給料が支給されるようになれば、介護勤労者を確保しやすくなるでしょう。
これからのさらなる賃金面での環境改善が進むことが期待されます。
日本が向かう超高齢化社会への施策、対応が今後どんな動きをみせるのか、注目していきましょう。
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