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「混合介護」でできること・できないこと~通所介護編~
介護保険適用となる通常の介護サービスと、利用者が全額負担となる介護保険適用外サービスを組み合わせた混合介護を行うサービス事業者が徐々に増えてきています。
しかし、2つのサービスを組み合わせて利用することは、個別のニーズに応えられるメリットがある反面、その線引きが分かりにくい部分も多くあります。
実際に混合介護を利用する際には、サービス提供事業者と利用者との間でしっかりと共通認識をもっておくことが重要ではないでしょうか。
そこで今回は、混合介護でできること、できないことを通所介護に焦点をあててみてみましょう。
混合介護でできること・できないこと「通所介護編」
混合介護でできることと、できないことをみていく前に、まずはこれまでの通所介護におけるサービスについて確認しておきましょう。
デイサービスやデイケアなどの通所介護を利用する人は、自宅からサービスが提供される事業所へ足を運んでサービスを受けます。
そこで提供されるサービスは、食事、入浴介助、機能訓練、生活相談など様々で、そこで過ごす時間や提供されるサービスを介護保険内と保険外で明確に区分することは、難しいとされていました。
唯一、区分が明確に行えるサービスとして認められていたのは、理美容サービスと、緊急を要する場合に限った、通所介護サービス事業所に併設した医療機関への受診対応です。
この2つに関しては、介護保険サービスとは明確に目的や提供時間などを区別することが可能なため、これまでも利用者の全額自己負担によって利用されてきました。
もちろん、これらの保険外サービスの提供時間は介護保険サービスの利用時間には換算されず、分けて考えられます。
では、厚生労働省が2018年4月に混合介護について行った通知では、どのようなルールのもとどんな介護保険外サービスが可能になったのでしょうか。
次のようなサービスに関しては、介護保険適用外サービスとして区分しやすいので、混合介護のルールを守っている範囲であれば、通所介護サービスを一旦中断してサービスを提供し、その後に引き続き保険適用内の通所介護サービスを提供してもよいとされています。
そのサービスとは、通所事業所内での、健康診断、採血、予防接種。
そして、通所介護計画の機能訓練として行う外出や送迎とは別に、利用者の希望で外出する際の同行支援です。
通所介護を提供中の利用者に、送迎車を使って有償で行う外出支援は、道路運送法に基づく許可・登録を行っている事業者に限り提供してもよいとされています。
このほかにも、物販やレンタルサービス、買い物などの代行サービスも介護保険適用外サービスとして認められるようになりました。
事業所内で健康診断や採血、予防接種などの介護保険適用外サービスを提供する場合は、医療法など法律を遵守することが大前提となります。
また、鍼灸や柔道整復などの施術は認められておらず、資格のない人によるマッサージも禁止されています。
通所介護のスタッフが外出の同行支援を行う際には、保険外サービスとして提供した時間は、通所介護に含めないこと、同行中の職員は通所介護の人員基準に含めないことが条件となっていす。
また、保険適用外サービスによる外出は、利用者個人が希望し、それに応える形で個人に対して行うものであり、複数の利用者をまとめて同行支援するのは好ましくないとしています。
物の販売やレンタルサービスについても、利用者にとって不要なものを提供しないよう、食料品や日用品など普段の生活で必要なものを取り扱うことが原則です。
高額な商品を販売する場合は、事前に利用者の家族やケアマネジャーに連絡すること、利用者の認知機能が衰えている場合は、高額商品の販売を行わないこともルールとなっています。
介護保険適用外サービスでは、費用は利用者の全額負担となりますから、利用者を保護する観点からも、厳しい目でルールが適用されているのです。
「混合介護」、その課題や問題点
混合介護は、介護保険適用外サービスが増えるので選択肢が広がりますし、介護事業者サイドにとっても介護報酬以外の収入が得られるため、その分を人件費にあてたり、サービスの選択肢を増やすことで他の事業者との差別化が図れたりとさまざまなメリットがあります。
しかしその一方で、課題や懸念の声が寄せられているのも事実です。
デメリットとして最も懸念されているのは、介護保険が適用されるサービスと、適用されない全額実費のサービスが組み合わされるため、価格システムが複雑になることです。
さらに、保険適用外サービスの価格は自由に決められますから、サービス全体の価格が高騰する危険もあります。
利用した分だけ利用者の経済的な負担が大きくなるため、金銭的に余裕がある人のみが手厚い介護サービスが受けられるなど、介護サービスでの格差が広がる恐れも指摘されています。
また、手厚すぎるサービスは、介護保険制度の自立支援・重度化防止という理念に逆行するものであり、誰にでも平等に行われるべき介護保険サービス制度の崩壊を招く危険性があるとして危惧されています。
政府は混合介護におけるトラブルを避けるために、介護保険内サービスと保険外サービスをはっきりと分けて文書にして記録することや、利用者が事前にサービス内容についてきちんと理解した上で、同意を得ることをルールとして決めています。
さらに、認知症などで理解力が低下しているお年寄りも多いことから、各々のサービスの違いをわかり易く理解してもらう工夫をすることも要請しています。
たとえば介護保険サービスを行う時と、保険外のサービスを行う時とで色の違うエプロンを付けるなど、口頭での説明に加え、視覚でもわかり易く伝える方法などが奨励されています。
加えて、適正なサービス提供のために、苦情・相談窓口を設けることもルール化しています。
混合介護については、利用者側だけでなくサービスを提供する事業者にとっても留意すべき点があります。
介護サービスの種類が増えることで、書類作成が煩雑になり作業効率が低下したり、残業が増えるといったリスクが考えられるのです。
また、介護保険適用外サービスで他の事業所との差別化を図るために、新たなサービスの開発や宣伝など、介護以外の業務の負担が大きくなる可能性もあります。
さらには、介護保険適用外サービスについて、利用者とその家族に説明する場合、不要なサービスの押し売りと受け取られたり、その仕組みの複雑さからサービス開始後にトラブルになるケースもあり、その対応にあてる時間が増える可能性もあるのです。
混合介護はまだ始まったばかりで、ルールも大まかなものに留まっているのが現状です。
このため自治体によって混合介護についての解釈が異なっており、現場からもルールがわかりにくいなどの声があがっています。
まだまだ土台が固まっているとはいえない混合介護ですが、家族の介護と仕事の両立や、負担の軽減、利用者本人のQOL(生活の質)の向上など、サービスへの期待感が高まっていることも事実です。
政府も、混合介護が利用しやすいように、規制緩和への一歩をより深く踏み出していこうとしています。
混合介護制度の規制緩和、ルールの変更など、政府はもちろんのこと愛知県や名古屋市などの地方自治体、実際にサービスを提供する事業者の動きに、これからも目が離せません。
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