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2018/12/17
コラム

「混合介護」でできること・できないこと~訪問介護編~

介護保険が適用されるサービスと、適用されない保険外のサービスを組み合わせて行う混合介護が注目されています。

混合介護によって、これまで利用者本人に行う直接的な介護支援として認められていなかったサービスも、介護保険外のサービスとして利用できるようになりました。

 

そこで今回は、混合介護が注目されている理由、そして訪問介護サービスの混合介護では何ができるのか、何ができないのかをお伝えします。

 

混合介護がなぜ注目されているのか

訪問介護と保険外サービスを組み合わせた「混合介護」

これまで介護が必要になった高齢者は、要介護認定を受けると要介護度に応じて介護サービス費のうち1~3割を負担することで利用できる介護保険適用内サービスを主に利用してきました。

しかし利用者やその家族のニーズの高まりを受けて、利用者が全額負担を行う介護保険の適用外サービスも提供する混合介護についての規制緩和が進められています。

 

そして厚生労働省が2018年4月に混合介護のルールを整理し、都道府県などに通知を行いました。

厚生労働省が介護サービス提供事業所に通知を行った混合介護のルールとは、主に次のようなものです。

 

まず、介護保険内と保険外サービスをはっきりと区分して、利用者にわかりやすく提示すること。

保険外サービスの内容は、文書にして記録すること。

そして保険外サービスについて事前に文書で説明して、利用者の同意を得てから行うこと。

 

また、認知症などによって個人で判断できないケースも考えられるため、保険適用サービスと、保険適用外サービスの違いが誰にでもわかるよう、工夫すること。

利用者からの苦情や相談を受け付ける窓口を設置することなどです。

ケアマネジャーに対しても、保険適用外サービスの情報を、ケアプランなどに記載することを要請しています。

 

これらのルールをまとめると、全額負担となる保険適用外サービスであることを、利用者が理解・納得した上で混合介護を行うということになります。

このように政府もルール化を進めるなど混合介護が注目されているのは、なぜなのでしょうか。

 

それは、混合介護はサービスを提供する事業者と、介護サービスを利用するお年寄りやその家族などの介護サービスを受ける側の双方に、メリットがあるからです。

 

まず、サービス提供事業者側のメリットとしては、これまで認められていなかった保険内、保険外の2つのサービスを続けて提供できるようになることで、サービス提供の効率が上がります。

これはサービスを受ける人にとっても家で待機していなければいけない時間が短縮されるので助かりますよね。

 

また、介護保険適用外のサービスを行うことで、介護報酬以外の収入が得られるようになりますから、収益のアップも考えられる大きなメリットです。

介護事業所の収入が増えると、介護スタッフの給与を上げるなど待遇の改善も期待できます。

 

介護業界は深刻な人手不足であるにもかかわらず、給与水準が他の職業に比べて低いという課題を抱えていますから、介護保険適用外サービスによって収入を増やし、待遇を改善すれば、人材を確保しやすくなるかもしれません。

 

一方、介護サービスを受けるお年寄りやその家族にとっても、利用できるサービスの種類が増え、使い方の幅も広がりますから、これまで以上に手厚いサービスが期待できるメリットがあります。

また、介護保険適用外サービスの導入によって介護事業者間での競争が進み、サービスの質が向上することも期待できます。

 

通常の介護保険適用サービスでは、サービスを提供できる対象が高齢者本人の生活の営みに直接的に関わる部分のみに限定されています。

しかし、保険適用外サービスなら、利用者の家族に関わる家事や、趣味・娯楽などの保険対象外の範囲まで広げられますから、家族の負担軽減や、本人にとってより生きがいある生活を促すことも可能です。

介護を理由に退職する介護離職者の増加が問題になっていますが、介護保険適用外サービスを利用することで、介護と仕事が両立しやすくなるのではないかとも期待されています。

 

混合介護でできること・できないこと「訪問介護編」

混合介護でできること・できないこと

介護サービスの提供者・利用者共にメリットのある混合介護ですが、制度上できる事とできない事があります。

介護保険が適用される訪問介護と、保険適用外サービスを組み合わせた混合介護では、次のようなサービスの提供が認められています。

 

まず利用者本人に提供できるサービスとしては庭の草むしり、ペットの世話。

訪問介護として外出に付き添った後に、趣味や楽しみのための場所への同行すること。

通院などの際に乗り物の乗降介助を保険内サービスとして行った後に、保険外サービスとして院内の付き添いを行うことなどです。

 

利用者と同居する家族に関わるサービスでは、同居家族の部屋の掃除や日常生活支援に当てはまらない大掃除、家族のための買い物などが認められています。

 

では、こうした混合介護の提供上の具体的なルールはどうなっているでしょうか。

 

保険適用外サービスは、保険適用サービスである訪問介護の前または後に連続して行うか、訪問介護サービスを行っているときにいったん中断して保険適用外サービスを提供しなければいけません。

訪問介護サービスと、介護保険適用外サービスを同時かつ一体的に提供することはできないのです。

たとえば要介護者本人の食事と、同居家族への食事を一緒に調理することは、2つのサービスの線引きをつけることができないため認められていません。

 

訪問介護では、介護スタッフが自宅に来てくれますから、お手伝いさんのように錯覚して、あれもこれもお願いしたいと考える方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、訪問介護自体はあくまでも、介護保険を利用して、本人が生きていくために必要な支援を受けるためのサービスですので、介護保険サービスの適切な運用のためにも、これら2種類のサービスはしっかりすみ分けを行わなければならないのです。

 

これは、介護サービスを受ける側が金銭的な被害を受けないよう、守られる必要があるための措置でもあります。

 

介護事業者は利用料金についても、訪問介護サービスと、保険適用外のサービスを分けて請求しなければいけません。

利用者とその家族が、請求内容をみて、訪問介護サービスとして何が行われたのか、保険適用外サービスとして何が行われたのかが、きちんとわかる内容であることが重要なのです。

 

混合介護はまだスタートしたばかりで、ルールも完全に決められているわけではありません。

愛知県や名古屋市でも混合介護を提供している事業者が増えつつありますが、まだまだ事業者は少ないのが現状です。

しかし、介護を受けるお年寄りとその家族が安心して暮らすためにも、混合介護のニーズは今後ますます高まると予想されます。

そこで重要になるのが、通常の訪問介護と介護保険適用外サービスをいかにうまく組み合わせて利用するかということではないでしょうか。