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2018/11/26
コラム

名古屋市有料老人ホーム設置運営指導指針の改正

2017年4月に改正老人福祉法が施行されました。

高齢者の健康と福祉を目的とする老人福祉法で、これまでにも何度か改正されています。

時代の状況に合わせながら、老人福祉を目的に改正が行われるわけですが、このたびの改正では、有料老人ホームの運営情報を地方公共団体に報告することの義務化が大きなポイントです。

それについて国は、「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」を改正して具体的に明文化したわけですが、名古屋市もそれに伴い、「名古屋市有料老人ホーム設置運営指導指針」を改正し、2018年7月1日より施行されています。

 

名古屋市有料老人ホーム設置運営指導指針の目的と内容

有料老人ホーム設置運営標準指導指針を改正し、届け出の徹底を図る

前回のブログでもご紹介していますが、有料老人ホームの定義は老人福祉法の第29条に規定されています。

それによると、高齢者が入居し、入浴や排泄の介護、もしくは食事の提供や介護、掃除や洗濯などの家事または健康管理のどれか一つでも提供する施設が有料老人ホームに当てはまります。

 

委託によりサービスを提供する施設も含まれます。

運営する施設が有料老人ホームに該当する場合、運営者は都道府県の知事及び、政令指定都市長または中核市市長に届出なければなりません。

 

しかし、実際には届け出をせずに運営している有料老人ホームが全国に多数あります。

前回のブログで紹介した、いわゆる“無届ホーム”です。

届出がない施設に関しては行政としても実態を把握することが難しく、入居者が不利益を被っていたとしても見過ごすことになってしまいます。

 

そこで、有料老人ホーム設置運営標準指導指針を改正して、届け出の徹底を図るわけです。

各都道府県や市町村でもそれに倣って、各地で有料老人ホームの運営に関する指導指針を改正して届け出を徹底させることにしました。

 

名古屋市も増加する無届ホームの対策強化に乗り出しています。

有料老人ホーム運営者は、事業運営に関する情報を報告する義務を負うことになったわけですが、具体的には以下のような内容について報告しなければなりません。

施設の名称と所在地、連絡先、施設の類型を始め、サービスの内容や居室の状況、入居対象の高齢者や利用料、さらに前払い金の保全措置についてもそうです。

 

これらの内容は常に最新の情報を報告することが求められ、変更があった時には速やかに届け出なければなりません。

実は、以前もこうした指導はされていたのですが、明確な義務として規定されていなかったために、その穴を突いて無届けの有料老人ホームが多く存在していたのです。

 

今回の改正によって、届け出を出さずに有料老人ホームを運営したり、運営実態を明らかにしないまま、および、高齢者に間違った認識を持たせたまま入居させたりといった問題を防ぐことを目指しています。

 

改正で何が変わったのか

人員配置を明確化

改正内容をさらに具体的に見ていきましょう。

まず1つ目は、人員配置についてこれまで24時間365日切れ目のない職員配置について明確にされていませんでしたが、このたびの改正でその点が明確化されました。

 

2つ目に個人情報の取り扱いについての変更です。

厚生労働省の「医療・介護関係従業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(2004年12月24日)」が廃止され、2017年4月14日に新たなガイドラインになったため、合わせて変更が行われました。

 

次に、身体拘束の適正化です。2018年度の介護報酬改定で身体拘束などの適正化を図るために、指針の整備、対策のための委員会の開催、職員研修の実施などが義務となったため、名古屋市の有料老人ホームについても同様の措置が求められることになりました。

 

4つ目は、前払い金の保全措置の義務化です。

義務の対象が拡大され、2006年3月31日までに届け出のあった有料老人ホームの取り扱いについて変更されました。

 

そして、有料老人ホーム情報を報告する義務ですが、老人福祉法の改正によって義務化されるとともに、その報告事項についても新たに定められました。

さらに、重要事項説明書の様式や立入検査資料の様式が変更されたことも付け加えられています。

 

指針で問題視されている無届ホーム等の施設の統計や推移

すべての有料老人ホームに事業運営に関する情報の報告義務

老人福祉法の改正や、それに伴う有料老人ホーム設置運営標準指導指針の改正は、未だ無くならない無届老人ホームに対する規制を強化することが大きな目的の1つです。

 

届出のない施設は2009年の段階で全国に389施設でしたが、2016年には1207施設となっています。

わずか7年ほどの間に3倍以上の増加を見せたわけです。

 

2016年6月末時点で厚生労働省による都道府県ごとの調査では、無届ホームが最も多いのが北海道がダントツで409箇所、103箇所の大阪府に次いで愛知県が神奈川県とともに69箇所と同率3位となっていました。

 

行政の指導の成果か、2017年は前年よりやや減少しましたが、それでも全国に1000箇所以上の無届ホームがあり、愛知県内でもすべての施設が届け出をするまでには至っていません。

無届ホームに該当するか判断が付かない施設や調査が終わっていない施設もあるので、実際の数字はもっと多いかもしれません。

 

2018年初頭に札幌市の無届ホームで起きた火災事故により11人が死亡する事態が起きました。

このように、行政の指導が及ばなかったことで不十分な防災対策がないがしろにされ、施設に入居する高齢者が著しい不利益を被る例もあります。

そうならないために、各施設が法令を遵守し、利用者の尊厳と安全を第一にするのがこのたびの改正の大きな目的です。

 

前回もご紹介したとおり、無届ホームがこれほどまでに増加した背景には、届け出のある有料老人ホームに入居したくても入居できない高齢者が増加していることが挙げられます。

身寄りがなく経済的に困窮している高齢者や、入居待ちが長く続く高齢者など、入居希望者のニーズに応える形で入居しやすい無届ホームが増えていったわけです。

 

実際、行政がこうしたニーズに早急に応えられなければ、どこにも行き場のない高齢者があふれかえるわけですから、無届ホームでも入居せざるを得ない事情も考えなければならないでしょう。

現状では、退院後にケアしたり金銭的支援をする家族が居ない、行き場のない単身高齢者の“最期の砦”無届ホームとなってしまっているのです。

 

このたびの改正で無届ホームの規制が進むことは予想されますが、介護施設の不足や高齢者の貧困といった根本的な問題に取り組まないことには根本的な解決になりません。

今後の動向に注目していきましょう。