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2021/11/08
コラム

障害から介護への負担増「65歳の壁」軽減制度利用の課題

障害サービスを利用する人が65歳になると、原則として介護保険サービスを優先利用するよう定められています。

今回はこの移行に伴って生じる「65歳問題」と、その解決策として生み出された新高額障害者サービス等給付費」。

そしてこの制度が抱える課題についてご紹介します。

「65歳の壁」「65歳問題」とは

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「65歳の壁」や「65歳問題」  

障害者が65歳を迎えたのを機に、それまで利用していた障害者のための福祉サービスを受けられなくなってしまう問題を指しています。

 

障害者にとって、65歳という年齢はキーポイントになる年齢です。

というのも、原則として、この年齢を機に介護保険への切り替えを求められるからです。

 

障害者総合支援法という法律がありますが、その第7条によって上記のことが規定されています。

介護保険において、それまで受けていた障害者のための福祉サービスと同じようなサービスがあるのであれば、介護保険のサービスを優先して利用するよう求めるというものです。

したがって、65歳を迎える障害者が、それを機に介護保険の適用対象になると、それまで受けていた障害福祉サービスが受けられなくなることになってしまいます。

 介護保険への切り替えで費用負担が増える  

また、同じようなサービスを今後も受けようと思うと、障害福祉サービスを利用していた時よりも負担が大きくなってしまうことがよくあるのも問題です。

なぜなら、障害者総合支援法において自己負担は原則1割ですが、所得の低い方は無料でサービスが受けられる仕組みになっています。

一方、介護保険では所得にかかわらず原則1割負担となるからです。

 

 障害と介護のサービス内容は同じではない  

受けられるサービスの内容が変わってしまうのも問題です。

たとえば、訪問介護のサービスでは、介護保険の場合、障害者総合支援法の場合と違い、サービスの内容にさまざまな制限があります。

生活援助を受ける場合でいうと、同居の家族がいるのであれば、援助は厳密に時間単位で区切られている、ヘルパーによるゴミ出しは日常ゴミだけで粗大ゴミは不可だったり、障害者総合支援法にはなかった細々した制限です。

そのため、障害者の福祉サービスをこれまで受けていた方が、65歳を機に介護保険のサービスに移行した場合には、不便さを感じることが少なくありません。

 

訪問介護だけでなく、通所の介護サービスにおいても、65歳の壁は大きな問題として立ちふさがります。

障害者総合支援法による福祉施設にそれまで通っていたのに、65歳になって介護保険のサービスに移行した途端に、通い慣れた施設に行けなくなってしまうような例です。

 

このように「65歳の壁」とは、この年齢を境に、障害者総合支援法の支援対象だった障害者から、介護保険の対象である高齢者に自動的に振り分けられてしまうことから生じる問題のことを言います。

問題解決のため生まれた「新高額障害者サービス等給付費」

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上記のような問題があることは国も理解しており、それを解消するためにさまざまな対策も行っています。

その一つとして生まれたのが、「新高額障害者サービス等給付費」です。

 

 新高額障害者サービス等給付費  

65歳以上の人で、それ以前に障害福祉サービスを受けていた人のうち要件を満たす人に、介護保険サービスで利用者が負担するべき金額の一部が償還される

 

【適用の要件】

■ 65歳を迎える前日までの障害支援区分が2以上

65歳になる前日までの5年間で、介護保険サービスと同等の内容の障害福祉サービスに関する支給を受けていたこと

■ 障害福祉サービスと同等の内容の介護保険サービスを利用している(訪問介護・通所介護・短期入所など)

■ 介護保険法の保険給付を65歳まで受けてこなかった

■本人とその配偶者が、本人が65歳になる前日までの年度において、生活保護の受給者か市町村民税の非課税者である

 

これらの要件をすべて満たす人が所定の申請を行うと、2018年4月以降、障害福祉サービスと同等の介護保険サービスで利用者負担となっていた金額が償還されます。

要は、65歳になったことでの負担の急増で、生活に支障をきたすようなことがないようにという救済措置です。

「不平等感」を抱く人も少なくない

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新高額障害者サービス等給付費によってすべての問題が解決されたわけではありません

先に確認したように、この償還措置が利用できるのはいくつもの要件をすべて満たした人だけだからです。

それに該当しない人は、そもそも申請すらできないということになってしまいます。対象外の人が不平等感を抱くのも当然のことです。

 

 事例:介護保険への切り替えのタイミング  

ある一人暮らしの68歳の女性は、脳性麻痺のために家の中でも車椅子移動で、週2回、訪問ヘルパーに来てもらって掃除などを手伝ってもらっています。

さらに、デイサービスにも週2回通って、マッサージを受けるなどのサービスも継続中です。

ところが、要介護認定を65歳になる以前に受けていたために、新高額障害者サービス等給付費の対象から外れてしまいました。

 

 

厚生労働省によると、この給付費制度の設立理由は、65歳になり介護保険に移行したことが原因で、これまで無料で障害福祉サービスを利用していた人がサービスの利用料を負担しなければなないことが問題としています。

つまり、この事例の場合、それ以前から介護保険の利用料をずっと負担していたため、65歳になった途端に負担が増加したとは捉えられないという訳です。

 

そう考えると、不公平な制度だとの批判を受けるのも仕方のないことではないでしょうか。

このような問題が生じるのは、新高額障害者サービス等給付費の制度に、申請できる対象者に限定的な要件を作ってしまったことが原因です。

そのため、要件自体を撤廃して、障害福祉サービスから介護保険サービスに移行して負担が発生する人はすべて給付費の対象とすればよいのではないか、という意見もあります。

【おわりに…】

愛知県名古屋市の老人ホームなどの介護施設においても、65歳の壁新高額障害者サービス等給付費の抱える問題に直面している方はいるはずです。

法律上の問題なので当事者によって解決できることではありませんが、上記のような問題が存在することは認識しておくべきではないでしょうか。