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特養が定員割れ「公共型施設」在り方に変化
介護業界の状況は、時の流れによって変化が大きく見られます。
たとえば、介護施設の中でも一定の割合を占める特養、つまり特別養護老人ホームは、状況の変化が大きい施設です。
かつて「待機者数百人」とまで言われていましたが、人口減少や民間企業の老人ホーム事業参入によって変化を余儀なくされています。
施設の在り方の転換が全国各地で進んでいるのです。こうした状況を理解するためには、介護施設の区分について知ることが重要です。
公共型の介護施設とは
一般に老人ホームや介護施設と呼ばれる施設には、いろいろな種類があります。
一つの区分の仕方として、運営主体による分け方があります。
公共型と民間施設
民間企業もしくは民間団体による運営がなされている介護施設は、民間施設と大別されることが多いです。
一方で、地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営している施設の多くは、公共型施設とか公的施設と呼ばれています。
民間か公共型施設かによって、施設のタイプも変わってきますので、この区別の仕方を覚えておくと便利です。
判別には、施設種別を見れば民間施設なのか公的施設なのか判別できます。
【民間施設の例】
●介護付き有料老人ホーム
●住宅型有料老人ホーム
●サービス付き高齢者住宅
【公的施設の例】
●特別養護老人ホーム
●介護老人保健施設
●軽費老人ホーム、ケアハウス
受け入れの条件
全体的に見ると、公共型施設は要介護度などの条件が明確で、条件をクリアしないと使えないことがほとんどです。
一方で民間施設の場合、自立している高齢者の方や、要支援の方など、介護度が低い段階から入れる施設も存在します。
また、介護度の高い方向け、自立の方向けといった特定の条件の人を対象とした施設だけでなく、自立から要介護5まで対応可能という施設もあります。
施設の費用の違い
費用についても違いが見られます。
【民間型の相場は高め】
民間施設は多くの場合、公的施設に比べて料金が高めに設定されています。
その理由は、施設設備が充実していたり、より細かなサービスや、各利用者にあわせた柔軟な対応が可能であることが多いためです。
【公共型施設は費用補助あり】
一方で、公共型施設については低めの料金設定です。
もちろん、設備や人員体制には法的規則があるので、必要なケアは確実になされますし、公的施設だから介護の質に不安が生じるということではありません。
安さの理由は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設を利用する場合、所得に応じた食費や居住費の減額制度が受けられる分、費用負担が少なく済むのです。
入居待ち状況の違い
先述した費用の差は、入居待ち状況にも影響します。
【公的施設の待機状況】
公的施設の場合、入居の順番は単純な申し込み順ではなく、本人の状態や生活環境など施設への入居の必要度が影響します。
そのため、そうした条件次第では年単位の待機期間が発生するケースもあります。
タイミングよく申し込みをしないと利用できない施設も珍しくなく、希望しても必要な時に利用できない事例も生じています。
【民間施設の待機状況】
民間施設については、施設の人気に左右されるので、施設ごとに入居待ち期間は大きく異なります。
ただし、公的施設に比べると全体的には待機期間は短めとなります。
【グループホームは少し特殊】
民間企業等でも参入可能なグループホームですが、入居は認知症の診断のある方に限った小規模ケアのため、元々の入居定員が少なく設定されています。
また、家事などできることは自分で行うことが基本方針のため、認知症はあるものの、比較的身体機能が維持された方が多いです。
この2つの理由から、空床が出にくい傾向があり他の民間型施設に比べると、地域や施設によっては待機期間は長くなる可能性があります。
人口減少による定員割れ「施設のあり方」変化
公共型施設の転換期
ここまで見てきたように、人員や設備の明確な法的基準があり、費用負担も低いため、公的施設は入居希望者が多い傾向です。
その代表例とも言える特別養護老人ホームは、これまで入居待機者が100名を超えるような状況が全国各地で見られていました。
しかし、人口減少や、民間型の介護施設が急増し、費用を抑えたタイプの民間施設も増えてきていることから、地域によっては定員割れが生じている特養も見られるようになっています。
そのため、自治体や施設運営者が様々な工夫を迫られています。
【特養の一部をサ高住に】
例えば、特養の居室の一部をサービス付き高齢者向け住宅に転換するといった動きです。
こうすることで、受け入れる層が広くなると同時に、比較的健康状態の安定した方を受け入れるため、入院などによる収入の変動リスクを抑えられるというわけです。
特養ホームをなくすことはできませんが、必要な分をしっかりと確保しつつも、安定した経営のために効率の良い施設に転換していくという取り組みは、功を奏していると言えます。
高齢者の数は2045年にピークを迎え、その後人口減少とあわせて減っていくとみられるため、愛知県名古屋市でも今後、何らかの変化を取っていくものとみられます。
在宅に戻れるように
地域特有の事情を合わせて介護施設を活用する取り組みもあります。
たとえば、冬の寒さが厳しい地域において、雪が多くなる季節は危険性が高くなることや、買い物などの生活上必要な行動が難しくなるという事情をふまえ、高齢者が安心して冬を過ごせるように高齢者施設を利用できるようにしています。
老健は「在宅復帰」推進へ
介護老人保健施設(老健)も介護施設の中ではポピュラーなタイプで、愛知県名古屋市を含めて全国にたくさん存在します。
しかし、介護士の他に、看護師やリハビリ専門の職員の配置が必要な老健では、人材不足によりスタッフの確保が厳しい状態であることや、新型コロナウイルス感染症の影響で経営が悪化している運営者が増えているといった問題もあります。
そこで、施設への入所に重点を置くのではなく、在宅復帰を推進する動きが強くなっています。
元々、介護保険の方針は、できるだけ自分の力で自分らしく生活するための「自立支援」を目的としています。
【老健は本来の役割へ】
老健の本来の機能は、退院直後や、一時的に身体機能が衰えた方が、在宅に戻るための看護ケアや個別リハビリを提供することです。
ただ、実際には特養に入れない人の待機施設としての役割を担わざる得ない状況があり、長期利用や終の棲家として利用されてきた側面があります。
しかし、民間施設の参入、介護給付による財政圧迫など、さまざまな要因を背景として、国は本来の在宅復帰施設としての機能強化を推進する方針です。
そのため、在宅復帰を強化した施設はより高い介護報酬が受けられるような仕組みへ、改定を進めています。
また、それと同時に、在宅ケアを活発にするための補助金や、事業者を増やすための推進活動、自宅で高齢者が生活しやすくするための自宅改修制度を整備しています。
【在宅介護推進には課題も】
こうした在宅復帰への取り組みは、施設入居の費用負担を減らし、高齢者の残存機能の維持に役立つと同時に、できるだけ長く住み慣れた我が家で過ごすことができる喜びに繋がります。
ただしその一方で、フルタイムの共働き世帯や、頼れる人のいない未婚や単身の高齢者が増え、身近に在宅生活をサポートする人が居ない状況で、施設入居を選択せざるを得ない人も数多く存在し、国民のニーズと国の方針にズレが生じていることも事実です。
【おわりに…】
介護施設はたくさんの種類があり、運営主体や受け入れの条件によって明確に区別されています。
中でも公共型施設や公的施設と呼ばれる施設は、地域の介護事情を支えるために欠かせない存在です。
時代の流れによって定員割れが生じるなどの変化が見られていますが、一部スペースの区分変更をしたり、在宅ケアを推進したりするなどの取り組みをして対応できるように努めています。
こうした状況の変化や施設についての知識も得て、安心して介護サービスを選択できるようにしましょう。
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