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ケアまどニュース
2024年「BCP策定義務化」へ。感染症や災害への備え
厚生労働省は2021年4月に行われた介護報酬改定の解釈通知の案を公式サイトに掲載し、そこでは全てのサービスに新たに義務付ける業務継続計画(BCP)の策定についても言及しています。
▼Youtubeでも動画で解説しています
1.2024年「BCP策定」全サービスで義務化
昨今の社会情勢を背景に策定されたBCPですが、運用までにはそれなりの準備が必要であることを踏まえ、3年を猶予として、2024年に義務化されます。
BCP策定の目的としては、
「生命を守る」
「継続したサービスを提供する」
「意思決定と周囲との連携」
の3つの要点が挙げられます。
コロナのような感染症が蔓延、あるいは地震や台風などに遭遇した場合には、まず何よりも生命の保護が優先されます。
それは利用者である高齢者の方はもとより、従業員にも必要となってきます。
何故なら、サービスを提供する側である従業員がリスクにさらされてしまうことは、結果的に継続したサービスの提供が困難になることを意味するからです。
介護サービスでは、
「ケアが途絶えること」=「高齢者の生活や命が脅かされる」
と考え、サービスの継続に何が必要かを考えなければいけません。
感染や災害によって一時的にサービス提供が困難となっても、すぐに復旧して継続したサービスが提供できるような基盤造りが必要不可欠と言えます。
また、そうした緊急時の対応手順を予め定め、利用者やそのご家族との情報共有も必要となってきます。
2.「BCP」とは?
業務継続計画(Business continuity planning)
略してBCPと呼ばれる。
感染症蔓延時や災害が発生した際に事業所が被る損害を最小限に抑えて業務を継続、あるいは復旧させるための計画案。
【全サービスにBCP義務づけの背景】
新型コロナ感染問題が大きく影響していると考えられます。
高齢者の方を対象とする介護サービスは、利用している高齢者の方々にとって生活に直結しています。
例えば、在宅介護や独居の高齢者の方にとって、定期的に訪問する訪問介護や看護は命綱なぐらい重要です。
また、地震や台風といった災害に遭遇した際にも、継続してサービスを提供することが必要です。
今回の策定は、現在まだ収束の見込みがつかないコロナ禍での介護サービス維持や継続をしていくための大きな課題とも言えるでしょう。
【記載項目の具体例】
【感染症対策におけるBCP】
●平常時における備え・対策(備蓄品の確認や確保、感染症蔓延時の体制整備や構築、感染症対策における取り組みの実施)
●感染症蔓延が想定された時の初期対応
●感染防止対策(保健所との連携、濃厚接触者への対応、情報共有)
【災害時におけるBCP】
●平常時における備え・対策(建物や設備に対する安全対策、ライフライン停止時の対策、必要品備蓄)
●緊急時の対応
●関連施設や周囲との連携
3.「BCP」が重要視される背景
BCPが重要視される背景は、事業所サービスを継続させる目的だけではありません。
【感染症】
現在のコロナ禍において、高齢者向けのサービスを提供するデイサービスや介護施設など、介護事業所がクラスター化しました。
コロナは高齢者であればある程重症化し、亡くなる方も少なくありません。
コロナに感染した死亡者の比率では、70代以上の高齢者が8割以上を占めています。
そのため、サービスを利用されている高齢の方々を感染症から守るためにも、「感染対策」を事業所が準備しておくことは必要不可欠と言えます。
【自然災害】
自然災害によって「停電」が起こることも、高齢者の方々にとってリスクが大きい事態と言えます。
東日本大震災時、計画停電が行われた中で、人工呼吸器を使用している高齢者が亡くなるという報道がありました。
それだけでなく、停電が暑い季節に起きた場合には、エアコンが止まることで熱中症を起こすリスクもあります。
また、施設で停電が起こることでエレベーターやセンサーが作動しない、冷蔵庫が使えない等、起こる被害は甚大です。
こうしたことを念頭に措き、BCPとして、コロナ禍におけるコロナ、またはそれ以外の感染症が発生した場合の共通マニュアルを作成、あるいは自然災害に対する対策を講じるかが、事業所運営における要となってくるのはいうまでもありません。
それでは、それぞれの問題に応じた対策について考えてみましょう。
感染症対策におけるBCP
(1)備蓄が必要な物品と必要な数を把握する
2020年のコロナ緊急事態宣言後には、マスクや消毒用エタノールが品切れになってしまうなどの問題が発生しました。
そのような事態を見越し、日頃から備蓄をしておくことが大切です。
マスク、消毒用エタノール、ガーゼ、ペーパータオルなど、感染対策を講じるにあたって必要な物品を確保するようにしましょう。
(2)三密を避ける対策
入所型の介護施設では、食堂で入居者が一堂に会して食事するスタイルをとっているところがほとんどです。
しかし、今回のコロナにおいて、密集した空間は感染のリスクが高いことが判明しました。
そのため、コロナ以降、食堂内の人数を制限、あるいは部屋に食事を運ぶなど、対策を講じる必要が生じました。
また、三密の回避と、外部から感染症が持ち込まれるリスクを減らすために、面会を禁止する措置も必要です。
しかし、長期間の面会禁止は、入居者にも、またご家族にとっても精神的負担が大きいため、「窓越し面会」や「ZOOM」など、直接対面しない面会に切り替えるといった対策をとっている施設もあります。
災害時におけるBCP
非常用電力の確保
入所型施設の場合、電気を使用している場面は多数あります。
人工呼吸器はもとより、吸引機や離床センサーなど、挙げればキリがない程です。
呼吸機能が低下しており、自力喀痰ができない入居者の場合には、吸引ができないことが命の危険に繋がりますし、認知症の方の場合、離床センサーが作動しないことで転倒のリスクが高まることも考えられます。
対策としては非常用電力の確保が挙げられますが、民間の施設の場合、非常用電力の確保が事前に立てられていない場合もあります。
まずは、施設において非常用電力として何が使用できるかを確認しておくことをおすすめします。
非常用電力として使用できるものの例
●ディーゼル発電機
消防専用のみの使用に限定されているものもありますので、ご確認ください。
●産業用蓄電池
昨今、病院などでも非常用電源として使用されるケースが増えています。
施設全体を維持する電力となるとかなり大きなものが必要となりますが、最低限、非常用に使える電力は準備しておくことが大切と言えます。
【おわりに…】
今回の新型コロナ問題を受け、介護サービス提供側は大きな転換期を迎えることになりました。
こうした長期間における感染症問題は、近代史でも例を見ない事態であり、かつITによりグローバル化が進んだ現代において、試練ともいうべき状況と言えるでしょう。
また、災害への対策に関しても、東日本大震災から10年を経た現在でさえ、あまり進んでいない現状を見るに、今回厚労省がBCP対策の義務化に踏み切ったことで、大きな局面を迎えることとなりそうです。
しかし、実際には介護サービス提供側の常時人材不足やオーバーワーク等、BCPを策定する以前の課題を抱えている事業所が多数あるのも事実です。
愛知県名古屋市では『新型コロナウイルス感染症対策 あいちBCPモデル』を参考に、BCPの策定を促しています。
こうしたモデルを参考にしてみることをおすすめします。
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