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ケアまどニュース
75歳以上の高齢者。医療費2割負担導入
2021年2月5日、政府は75歳以上の後期高齢者が窓口で支払う医療費負担の割合について、2割負担を導入する法律案を閣議決定し、衆院に提出しました。
そのため、人によっては今までよりも医療サービス利用のためのコストが上がる可能性があります。
多くの人が医療を必要とする「高齢者」にとって、金銭的な負担増加への不安は少なくないでしょう。
具体的に負担割合の制度がどうなっているかを知り、医療費についての変化を知ることは重要です。
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▼後期高齢者の医療費「2割負担」導入
1.現在は「1割」と「3割」
後期高齢者の負担割合は2種類
「後期高齢者」と呼ばれる75歳以上の方の医療費については、独自の制度が設けられています。
組合の保険に加入していたり国民健康保険を利用していたりする人は、75歳になると一度脱退して、後期高齢者医療制度という特別な枠組みに入ることになります。
その制度における「負担割合」は、1割か3割となっています。
この違いは所得状況によって生じます。
「3割負担」の対象者
同一世帯の後期高齢者の被保険者の中に、市町村民税課税所得額が145万円以上の方がいる場合
3割負担となるのはこうした、「現役並み所得者」と呼ばれる層です。
ただし、以下の場合は「1割負担」となります。
①同一世帯に後期高齢者が1人の場合
・後期高齢者の前年収入が383万円未満
・後期高齢者の前年収入が383万円以上の方で、70歳~74歳の方が同一世帯に住んでいる場合、その人の収入を加えた合計収入が520万円未満
②同一世帯に後期高齢者が2人以上居る場合
・後期高齢者の前年収入の合計が520万円未満
「医療費負担」年齢による変化
70歳となる誕生月まで:3割負担
70歳となる誕生月の翌月~:2割負担
※現役並み所得のある方は3割のまま
75歳の誕生日当日~:1割負担
※現役並み所得のある方は3割のまま
「保険料」の優遇措置
利用者が納める保険料についても優遇措置が設けられています。
他の世代よりも軽減される率が高いため、支払いが少なくて済むというわけです。
特に所得が低い世帯に関しては、「均等割」と呼ばれる保険料の軽減率が高く設定されています。
そのため、安心して医療サービスを受けられるということになります。
2.「2割負担」の対象となる人
年間所得額によって医療費の負担割合は変化し、特に年収の低い人たちは1割で済んでいたという制度が「後期高齢者医療制度」の特徴でした。
しかし、冒頭でも述べたように、1割負担となる層について基準を厳しくすると共に、2割負担の枠が増えることが閣議決定されています。
新たに「2割負担」となる人
この閣議決定では、3割負担と1割負担の他に、2割負担という層を作ることが軸となっています。
新制度
【単身世帯】
・年間所得200万円未満→「1割負担」
・年間所得200万円以上383万円未満→「2割負担」
・年間所得383万円以上→「3割負担」
【夫婦世帯】
・年間所得320万円未満→一律「1割負担」
・年間所得320万円以上520万円未満→一律「2割負担」
・年間所得520万円以上→「3割負担」
この決定によって影響を受ける人、つまり1割から2割負担となる人は、全体の20%程度に上るとされており、人数にして、約370万人が当てはまると言われています。
3年間の「移行期間」
この新しい制度については、2020年度の後半を目途に運用が開始されると考えられています。
とは言え、いきなり費用負担割合が倍になってしまうというのは、多くの人にとって厳しい状況を生み出すこととなります。
そこで、3年間程度の移行期間を設けることも検討されています。
負担割合自体は2割というのは一緒ですが、通院回数の多い外来患者に対しては、下記のような措置がとられることになりました。
■導入から3年間は「1カ月分の負担増を3千円以内に抑えられるようにする
しかし、この補填はあくまでも一部の対象者に限られたものになると思われます。
引き上げ背景には「医療費の増大」
こうした制度の変更については、日本全体に見られる医療費増大という問題が背景となっています。
日本は世界でも類を見ないほどの超高齢化が、かなり速い勢いで進んでいます。
高齢者が増えれば、それだけ医療を必要とする人の割合が高くなるのです。
このままでは国の財政を大きく圧迫してしまうことから、ある程度収入がある人については医療費の負担を上げるという選択肢を取ったのです。
同時に、子育て世代への支援充実を図ることも、この閣議決定の軸となっています。
後期高齢者医療制度にかかる負担を軽減して、その分を少子化問題に対応するために拡充するという考えが見えます。
3.「高額療養費制度」を活用
高齢者医療制度の変更は、多くの人に経済的な不安感を与えるものとなり得ます。
実に20%もの後期高齢者が、倍の医療費を支払うことになるわけです。
そのため、医療費に関する他の制度についても覚えておくことが重要です。
それが「高額療養費制度」と呼ばれるものです。
「高額療養費制度」とは
病院などで支払う医療費が一定額を超えた場合、その超過分が返ってくるというものです。
この上限額については、年間所得額や年齢によって異なる基準が設けられています。
【現役並み所得の人】
①課税所得145万円以上
外来における負担限度額:57,600円
入院における負担限度額:80,100円+(実際の医療費-267,000円)×1%
②課税所得380万円以上
外来における負担限度額:57,600円
入院における負担限度額:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
③課税所得690万円以上
外来における負担限度額:57,600円
入院における負担限度額:252,600円+(医療費-842,000円)×1%
【住民税非課税の世帯】
外来における負担限度額:8,000円
入院における負担限度額:15,000~24,600円
【上記以外の人】
外来における負担限度額:14,000円
入院における負担限度額:57,600円
これらの自己負担額は月ごとのものです。
そして、頻繁に通院をしている人については、さらに安い自己負担額となります。
「高額療養費制度」の注意点
①超えた分の払い戻しは「後から」
一旦は窓口で全て支払い、超過分については後から還付されるという形になります。
一時的ではあるとは言え、自分で支払う必要がありますので、その分を準備しておかないといけません。
②支給申請が必要
高額療養費制度を利用する場合には、支給申請が必要となります。
基準額を超えたから自動的に返還されるということではなく、自分で手続きをしないといけないのです。
③領収書は保管しておく
実際に病院などでそれだけの支払いをしたのかを知るために、領収書の提出を求められることがあります。
そのため、病院で支払いをする度に、必ず領収書を保管しておくべきです。
【おわりに…】
医療費や介護費が増える後期高齢者は、現在のところ収入に応じて3割もしくは1割の負担となっています。
しかし、2022年度には1割負担の人の一部が2割負担に引き上げられることとなります。
それだけ家計に与える影響もありますので、しっかりと制度について理解して備えておくことが大事です。
また、高額療養費制度などの仕組みと手続きの仕方についても覚え、できるだけ負担を減らせるように努めたいものです。
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