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ケアまどニュース
介護福祉士「国試義務化」は5年先送り
介護業務に携わるための専門資格である「介護福祉士」。
その質の確保や、資格としての評価を高めるために、介護福祉士の資格を国家試験として義務づけることが法律で決定しました。
しかしながら、施行時期に関して合意が得られず、延長が繰り返されてきました。
そしてこのほど、国家資格の義務化の施工時期が、またもや5年間先送りされることが決定したのです。
そこで今回は介護福祉士とはどのような資格なのか、また延長が決まった背景にはどのような問題があるのかについてまとめました。
1.介護福祉士とは
「介護福祉士」とは
一口に言うと、介護を行うプロであることを認める国家資格です。
介護に関する専門的な知識と技術を有し、体や精神の障害などによって、日常生活がうまく行えない人に対して、その人の状況に応じた介護を行うと同時に、自立支援や重症度の進行を防ぐための指導を行う人材です。
介護福祉士の「業務内容」
具体的な仕事としては、主に次の5つの分野に分けることができます。
①「身体介助」
食事やトイレ、お風呂、移動などを手助けする
②「生活援助」
食事の準備や買い物、掃除や洗濯など家事や身の回りの援助
③「レクリエーション」
工作や体操などの楽しみながら行える活動を通じて、体の機能の維持や回復を図ったり精神的なケアを行う
④「相談・助言」
家族など介護を行う人の不安や悩みに応えたり、介護の方法や福祉用具などについてアドバイスをする
⑤「マネジメント」
介護現場のリーダーとして、他のスタッフの指導や管理などを行う
介護福祉士の「活躍の場」
主な就職先としては、下記があげられます。
・訪問介護ステーション
・デイサービスセンター
・ショートステイ
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・病院の病棟介護士
・障害福祉施設 など
2.受験資格と試験内容
介護福祉士の「取得方法」
介護福祉士の国家資格は、次の3つの方法のうちいずれかを選んで取得するのが一般的です。
①「養成施設ルート」
大学や専門学校などの介護福祉士を養成する学校にて必要科目や実習を履修・卒業し、国家試験に合格する。
②「実務経験ルート」
介護の仕事を3年以上経験した上で、実務者研修を受け、介護福祉士の国家試験に合格する。
③「福祉系高校ルート」
福祉系の高等学校で学び、規定の教科を受講して必要な単位を修めて卒業し、介護福祉士の国家試験に合格する。
④経済連携協定(EPA)ルート
少し特殊なルートとして、日本政府と協定を結んでいるインドネシア・フィリピン・ベトナムから来日した人のみを対象とするルートもあります。
介護福祉士の「試験内容」
介護福祉士の国家試験は、筆記試験と実技試験に分れています。
1月末頃:筆記試験
3月頃:筆記試験の合格者を対象とした実技試験
【筆記試験】
介護に関する専門的知識を身に付けているかを知るために11の科目について行われ、合格基準は「総得点の約60%」と決められています。
筆記試験の総得点は125点ですから、その60%となる75点が合格・不合格の目安となるラインです。
しかし合格ラインは毎年、出題の難易度によって変動します。
2020年度の合格基準は、125点満点の内77点でした。
【実技試験】
実技試験の合格基準も、総得点の約60%です。
2020年度の合格基準は100点満点に換算して46.67点でした。
介護福祉士の「合格率」
2020年度の受験者数は8万4032人。
このうち5万8745人が合格し、合格率は69.9%でした。
2017年度合格率:72.1%
2018年度合格率:70.8%
2019年度合格率:73.%
2020年度合格率:69.9%
ここ3年間は70%台をキープしていましたが、2020年度は69.9%と、4年ぶりに70%を割りました。
3.「国試義務化」見送りの背景
介護福祉士として仕事をするためには、介護福祉士国家試験に合格して国家資格を取得する必要があります。
これを「国家試験義務化」といいます。
しかし、国家資格の取得を義務化することは決まったものの、法改正によって現場が混乱する懸念があったため、実際の施行までの猶予期間が設けられることになりました。
国家試験義務化「延期の経緯」
【2011年】
「義務化の実施は2012年度から」と決められましたが、これが延期されて「2015年度から」となりました。
【2014年】
さらに1年間の延長が認められ「2016年度から」となった後、またもや延期が決まり、延期時期については明らかにされませんでした。
【2017年度~2021年度】
養成施設を卒業した人に対し、卒業後5年間の限定措置として、国家試験を受けなくても介護福祉士の資格を与えることが決まりました。
そしてこの5年間のうちに国家試験を受けて合格するか、国家試験受けない場合は登録後の4月1日から5年間にわたって介護の仕事を行うことで、それ以降も国家資格が得られると決定したのです。
そして今回、2021年度の卒業生までと決められていた経過措置がさらに5年間延長することが決められ、国会に法案が提出されることになりました。
かつては大学や専門学校などの養成学校で学んだ卒業生に対しては、国家試験を受けなくても介護福祉士の資格が授与されていました。
しかし、介護福祉士の質を高めることを目的に2017年度から養成学校で学んだ卒業生にも、国家試験の受験を義務化することが決まり、その後経過措置として、義務化の実施が延長され続けています。
そして、今回もさらなる延長が決まりました。
国家試験義務化「延期の理由」
最も大きな要因として、国家試験の存在が人材の確保を阻んでいることが挙げられます。
特に指摘されているのが、外国人人材の登用に対して、国家試験が障壁になっていることです。
養成学校で学ぶ外国人留学生の割合が増加しています。
2015年度の外国人留学者は94人でしたが、年々留学生が増えており、2019年度では2037人と、養成学校の入学者の約3割を占めています。
そしてこの割合は、今後も増えると予想されるのです。
言語の壁がある留学生にとって、国家試験は狭き門となります。
即戦力となるべく養成された留学生が国家試験に受からずに、日本国内で就職できないケースが増えると、せっかくの人材をみすみす逃してしまいます。
また現在は増加傾向にある留学生の割合も、国家試験に受からないことを理由に希望者が減少する懸念もあります。
そうなると、養成学校は生徒数が獲得できず経営難に陥ることも考えられます。
このような状況も見据えて、今回の5年の経過措置が決まったのです。
【おわりに】
労働環境や人員不足が深刻な介護業界では、介護の質の維持が課題の一つです。
介護の質を高めるための介護福祉士資格の義務化ですが、逆に足かせになって海外人材の確保を阻む要素にもなっています。
しかしながら、国家試験を受けなくても介護福祉士資格が得られるのであれば、狙い通りの質の向上が得られないだけでなく、介護福祉士という資格の価値も定まらないでしょう。
これによって、優秀な人材の確保が図れないというジレンマが生じています。
人材確保に苦しむ介護施設は多く、名古屋市愛知県の介護施設や老人ホームも例外ではありません。
貴重な海外人材の確保を安定的なものにするための、具体的な方策が求められるのではないでしょうか。
同時に、介護福祉士という仕事が介護分野においてどのような役割を担うのかを明らかにし、社会的に価値の高い資格と認識される制度が作られることも期待されます。
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