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ケアまどニュース
介護報酬改定のポイント
介護保険制度では、国民の必要や現実に即したシステムを維持するため、一定期間ごとに法制度の見直しおよび改定が行われています。
中でも、3年ごとに実施される介護報酬の改定は、各地域で老人ホームや介護施設を管理する事業所や、実際に介護の現場で働くスタッフの収入やモチベーションへ直接影響を及ぼすことから毎回高い注目を浴びています。
2021年4月の介護報酬改定へ向けては、2020年末までに様々な分科会で議論が行われました。
その結果、直接的な介護報酬だけでなく、人員配置に関しても部分的な変更や緩和措置が取られることになりました。
ただし、改定する項目の大枠は決定されたものの、細かな文言や新たなサービス導入に向けた準備期間の設定などに関しては、4月に公表されるタイミングまで調整が続けられていくと予想されています。
1.2021年介護報酬は0.7%のプラス改定
介護報酬の見直しは、【社会保障審議会介護給付費分科会】による提言を受けて、厚生労働省と財務省が合意した時点で成立となります。
2021年の介護報酬は、「0.7%プラスの改定」として決定されました。
その背景には、新型コロナウイルスの影響によって、老人介護施設の運営自体が難しい状況である点が挙げられます。
介護報酬は、2015年に「2.27%マイナス」と大きく切り下げられた後、2018年に「0.54%プラス」となっており、今回も介護に携わる現場の声に後押しされる形でプラス継続となりました。
そもそも「介護報酬」とは
要介護の認定を受けた人が、「介護保険サービス」を利用した場合に、そのサービスを提供した事業者に対して支払われるのが介護報酬です。
ですから、介護報酬の割合がプラスになるということは、介護サービスを提供する事業者が受け取る報酬が増えることを意味します。
プラス改定のメリット:設備投資
そうなると、施設のインフラを充実させたり、老朽化した設備を新調することが可能となるでしょう。
そうした「設備投資」は、入居者の安全性やリスクマネジメントの向上による、サービスの質にも影響があります。
プラス改定のメリット:職員の賃上げ
事業者の資金が増えることは、雇用しているスタッフの待遇改善にも寄与します。
介護職は体力だけでなく精神力も求められる仕事です。
一方で、給与が働きに見合っていないという思いから、短期間で離職してしまうケースは少なくありません。
介護報酬のプラス改定が反映されて給与が増えると、スタッフの仕事に対する意欲が高まることでしょう。
結果として、介護サービスの質の向上にも影響するはずです。
また、待遇改善によって介護の仕事をしたいという人が増加すれば、国全体で運用する介護制度そのものに大きなプラスとなることでしょう。
ですから、2021年のプラス改定は総じてポジティブに捉えられています。
2.グループホームの夜間の職員配置を一部緩和
2021年4月に施行される介護報酬改定に向けて、介護施設で「夜間にどれほどの職員を配置すべきか」に関する原則も見直しが行われました。
見直し作業を担当したのは【介護給付費分科会】です。
現行のルール
【介護者施設】
2ユニットに対して1人の職員を常駐させること
【グループホーム】
1ユニットに対して1人の職員を常駐させること
介護保険制度がスタートした当初は、「施設の規模に関わりなく2ユニットに対して1人の職員」というルールで運用されていました。
しかし、グループホームにおける災害発生時に入居者へのスピーディーなサポートができなかったという事案が取り上げられて、2012年以来現行のルールへと切り替えが行われています。
見直し後のルール
今回の見直しでは、グループホームの夜勤体制に関して下記のような内容に変更される予定です。
「1ユニットに対して1人の職員」というルールを大原則としつつも、
「3ユニットに対して2人の職員も可能」
となる方針です。
ただし、この新しいルールを適用させるには、下記の点を満たしていることが条件となります。
・各ユニットが同一階に隣接
・職員が円滑な利用者の状況把握と速やかな対応が可能な構造である
・必要な安全対策がとられている
・職員の負担に留意する
多数のユニットを抱える【規模の大きなグループホーム】では、新しいルールの適用によって介護スタッフの勤務をよりフレキシブルに調整することができるため、人材不足の問題緩和や、現場で働く人たちの負担軽減につながるのではと期待されています。
その一方、【大半のグループホーム】は、3ユニット未満で運用されていることから、「どれほどの効果が上がるか」に関しては疑問視する見方も少なくありません。
3.見守りセンサーやインカム活用によるインセンティブ
介護の現場において大きな課題となっているのが「夜勤スタッフの確保」です。
労働力の不足が叫ばれている現状において、24時間体制でサービスを提供している「高齢者向け施設」では、夜勤の人員を確保することが難しくなっています。
これは人口が多く労働力が比較的確保しやすいとされる大都市圏、東京都23区や愛知県名古屋市などでも同様です。
最低限のスタッフ数でローテーションをしている場合、必然的に夜勤の回数が多い、夜勤中の休憩が十分にとれないというケースは少なくありません。
その結果、施設全体としてのサービス低下につながっているという懸念があります。
そうした実情をふまえ、2021年の介護報酬改定では、ICT(Information and Communication Technology)の導入を推進するという点が討議されました。
見守りセンサーの設置や、インカムを導入することで、「夜勤職員配置加算」において優遇措置を受けることが可能となります。
こうしたICTを活用することで、夜勤中の休憩時間を確保しやすくなるなど、スタッフの負担を減らせる効果が期待されています。
【おわりに】
介護保険制度は、現役世代が支払う介護保険料と、国や県・市などの地方自治体による拠出金で賄われています。
とはいえ、それらの資金がすべて老人介護施設などの介護サービス事業者へ自動的に「介護報酬」として分配されるというわけではなく、定期的に見直しが行われる介護報酬の割合によって変動するのです。
いっそうの高齢化が見込まれる日本において、介護サービスを提供する事業者への適切なサポートを行うことと、現場で働くスタッフの負担を軽減して継続的に働ける環境を作り上げていくことは急務となっています。
そうした視点から考えると、2021年の改定において介護報酬がプラスになること、および夜間の職員配置基準に関して一定の緩和が見られることで、今後の介護の働き方や人材確保にどのような影響が表れるかは、注目すべきポイントです。
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