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尊厳と安全を両立するために—高齢者ケアと三つのロック
高齢者ケアでは、転倒防止や安全確保のつもりが、知らず知らずのうちに「行動の制限」につながることがあります。とくに注意したいのが「三つのロック(スピーチロック、フィジカルロック、ドラッグロック)」。尊厳と安全を両立する視点で整理します。
高齢者ケアで押さえたい「三つのロック」とは
介護現場でいう「三つのロック(スリーロック)」は、利用者の行動を制限してしまう3類型――フィジカルロック(身体拘束)、ドラッグロック(薬物拘束)、スピーチロック(言葉の拘束)の総称です。
- フィジカルロック:紐や柵、抑制具などで身体を物理的に拘束すること。
- ドラッグロック:薬物の過剰投与・不適切投与で行動を抑えること。
- スピーチロック:言葉で身体的・精神的な行動を抑制すること(「言葉の拘束」)。
この中でも特に厄介なのがスピーチロックです。拘束具や薬のように“目に見える形”がないため、本人も周囲も気づきにくく、忙しさや咄嗟の場面で起きやすいと指摘されています。
スピーチロックが起きやすい場面と、高齢者への影響
スピーチロックは、例えば「ちょっと待って」「座ってて」「ダメ」「〇〇しないで」など、行動を止めたり急かしたりする声かけが典型例として挙げられます。
現場では安全確保の意図でも、言い方によっては“命令・叱責・否定”になり、利用者の尊厳や自己決定を傷つけてしまうリスクがあります。
影響としては、以下が重要ポイントです。
- 行動意欲やADLの低下:強い口調や長く待たされる体験が続くと、意思表示や行動の機会が減り、ADL低下につながり得るとされています。
- 認知症症状の悪化リスク:認知症のある高齢者は出来事は忘れても感情が残りやすく、「無視された」「怒られた」などの感情が被害妄想やせん妄につながる可能性が示されています。
- 信頼関係・コミュニケーションの悪化:スピーチロックが続けば信頼を損ない、安心して生活することが難しくなる、といった現場上の問題も挙げられています。
つまりスピーチロックは、単なる“言葉遣いの問題”ではなく、生活の質やケアの成果(自立支援、関係性、BPSDの悪化回避)に直結しうる課題です。
防止のポイント「言い換え」「具体化」「現場での仕組み」
スピーチロック対策は、個人の心がけだけでなく、現場の仕組み化がカギになります。各参考記事では、次の方向性が繰り返し示されています。
1) 否定形・命令形を避け、依頼形・共感に置き換える
「ダメ」「やめて」ではなく、まず理由をたずねる、落ち着ける表現に切り替えることが推奨されています。例として、
- 「ちょっと待ってて!」→「いま〇〇しているので、あと〇分待ってもらえますか?」
- 「座ってて!」→「〇〇すると危ないので、座っていただけますか?」
- 「ダメ!やめて!」→「どうされましたか?」
のような言い換えの言葉を使用するようにしてみましょう。
2) 曖昧な表現を減らし、「見通し」を伝える
「ちょっと」「少し」などの曖昧語は不安を高めやすいので、「あと〇分」など具体化するのがよいとされています。待機が必要な場面ほど、見通し提示は効果的です。
3) “忙しいから仕方ない”を減らすチーム運用
スピーチロックは人手不足や余裕のなさと関連しやすい、という指摘もあります。個人が耐えるのではなく、申し送りで「言い換えフレーズ集」を共有する、ロールプレイ研修や会議で振り返るなど、組織として学習できる場を作ることが推奨されています。
加えて重要なのが、「利用者が何かをしようとする背景には目的がある」という視点です。危険行動に見えても、頭ごなしに止める前に意図を確認すると、言葉の拘束を避けつつ安全確保の選択肢も広がります。
まとめ
「三つのロック」は高齢者の行動を制限しうる枠組みで、特にスピーチロックは無意識に起きやすいのが特徴です。否定・命令を減らし、見通しの提示や言い換え、研修・共有で仕組み化すると、尊厳と安全の両立に近づきます。
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