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ケアまどニュース
盲ろう者介護サービスの外部支援員活用
盲ろう者とは目と耳の両方が不自由な方のことを指します。
日本全国に盲ろう者は2万3200人程度いるといわれています。
視覚と聴覚という2つの感覚機能に何らかの障害を持っているので、日常生活のいろいろな場面で注意やサポートが必要になります。
彼らが介護サービスを利用する際には、外部支援員を活用すべきだと厚労省も通知を出しました。
1.盲ろう者の介護サービスに求められる専門性
盲ろう者の生活支援を行っていくにあたって、特別なコミュニケーションスキルが要求されます。
そのためには高い専門性を有する人材が必要になるでしょう。
しかし、これまでの老人ホームをはじめとした介護サービスの「運営基準」を見てみると、外部の支援者に委託することについて、その可否が明示されていない状況でした。
「介護サービスの提供は介護施設や事業所の職員が基本的に担当するもの」
と書かれているためです。
そこで厚生労働省では2020年9月、盲ろう者のケアに関する通知を出しました。
外部の支援員を招くことは”可能”と明示
視覚並びに聴覚に障害を持っている盲ろう者が介護サービスを利用するにあたって、外部の支援者を招くことは可能であるという通知です。
これによって、外部支援員が関わりやすい環境になりました。
具体的には「障害者総合支援法」に基づき、通訳・介助員派遣事業を活用できることを改めて通知した形です。
外部の支援者を受け入れることで、体制強化が図れるようになったわけです。
ちなみに介護施設や事業所に対して、厚生労働省がこのような通知を出したのは初めてのことです。
現場の関係者からの要望が強く、厚労省がそれに応えた形です。
派遣事業の実態
「通訳・介助員派遣事業」は、地域生活支援事業の一環として、都道府県や指定都市、中核市などが運営しています。
触手話や指点字、指文字のスキルを持っているスタッフが事業所に派遣されるシステムです。
こうすることで、盲ろう者のコミュニケーションをサポートしようというわけです。
派遣事業の費用負担
費用の負担先については、国と自治体とで半分ずつ出し合う形をとっています。
細かなやり方は自治体によるところが大きいので、少し異なるところもあるかもしれません。
しかし原則として、介護施設や事業者に負担は求めないというところが多いです。
利用者についても同様で、利用登録者は2019年度の時点で日本全国に1161人いると言います。
2.盲ろう者の主なコミュニケーション方法
盲ろう者はどのようにしてコミュニケーションをとるのか、主に3つの方法を使い分けています。
触手話と指点字、指文字の3つです。
コミュニケーション方①: 触手話
触手話とは両手を使った手話のスタイルを指します。
盲ろう者が通訳者の両手を軽く握りって触読する、手を使ったコミュニケーションです。
盲ろう者の中には完全に失明しているわけではなく、弱視の方もいます。
この場合、極めて近い距離であれば、相手のことが見える人もいます。
この時、至近距離からの手話を行えば、理解できる場合もあります。
コミュニケーション方②: 指点字
指点字とは、両手の人差し指と中指、薬指の6本の指を使用します。
この6本の指が一種の点字タイプライターのような役割を担います。
通訳者は盲ろう者のこの6本の上に指を置きます。
そしてタイプするように指をトントン叩くことで、相手にメッセージを理解してもらいます。
コミュニケーション方②: 指文字
指文字は、相手の手のひらに指文字をつづる方法です。
シチュエーションや盲ろう者それぞれの好みに応じて、いずれかの方法でコミュニケーションをとる形です。
3.愛知県盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業事務取扱要領
盲ろう者向けの通訳・介助員派遣事業は、各都道府県や名古屋市などの指定都市、中核市が担っていますが、具体的な内容は自治体によって、若干異なるところもあります。
手順①: 申請書の提出
愛知県の場合、通訳・介助員の派遣を希望する場合、「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業利用登録申請書」を事業実施団体に提出します。
事業実施団体は申請書を受け取ったら、愛知県知事に提出する流れです。
しかし、中には緊急で派遣登録が必要な場合も出てくるでしょう。
その場合には申請書の手続きを省略して、電話などでとりあえず登録する方法もあります。
ただし、後日申請書による正規の手続きを行います。
手順②: 判定と交付
愛知県知事は申請書を受け取ったら、派遣登録すべきかどうかの判断を出します。
派遣登録が決定したなら「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業登録通知書」を事業実施団体に対して交付します。
「団体」は通知書を受け取ったら、速やかに申請者に対して交付する流れです。
手順③: 依頼方法
派遣の依頼を希望する際には、希望日の1週間前までに実施団体に対して「盲ろう者向け通訳・介助員派遣依頼書」を提出します。
提出方法ですが、実施団体によって異なるかもしれません。
しかし一般的には電話やメール、ファックスなどのいずれかの方法で手続きをとることになるでしょう。
依頼書を受理した実施団体は、内容を吟味したうえで派遣の可否を判断します。
もし派遣すると決定した場合には、必要最小限の派遣に留めなければなりません。
一般的には利用者1人に対して、派遣スタッフは1人です。
しかし、中には1人だけでは対処が困難なケースも出てくるでしょう。
必要性が認められれば、複数人の派遣が認められる場合もあります。
派遣ルール①: 親族への依頼はNG
派遣スタッフについて、利用者の親族には依頼できない点に注意しましょう。
愛知県の場合、同居する家族もしくは2親等以内の親族が派遣禁止に該当します。
派遣ルール②: 派遣時間
派遣スタッフの派遣時間は、原則午前8時~午後8時までです。
しかし、緊急時などやむを得ない場合もあるでしょう。
その場合、実施団体の長と派遣スタッフの同意がある場合には、時間外の派遣も可能です。
派遣スタッフの派遣時間は8時間を上限としています。
しかし当初の想定外の事態が発生した、緊急事態が起きた場合、上限を超えて対応することも可能です。
ただし交代要員を確保できる場合には、交代して別の派遣スタッフが職に当たることもできます。
派遣ルール③: 派遣依頼の自己負担
愛知県の場合、派遣スタッフを受け入れるにあたって、利用者の負担はなしとしています。
しかし、一部例外があります。
【公共交通機関利用時の交通費】
派遣依頼をして、派遣スタッフが現地に到着するまでに利用した公共交通機関利用時の交通費は、利用者が派遣スタッフに支払う形になります。
【自家用車を利用した場合の燃料費と駐車代】
派遣スタッフの自家用車に利用者が乗った場合に、「燃料費」として1km当たり25円、並びに駐車料金などを負担します。
※利用者の同乗については、実施団体の長が認めた場合に限られるので注意しましょう。
一般的には利用者に身体的な問題などによって必要性が認められた場合などが該当します。
派遣ルール④: 支援員になれる人
通訳・介助員として活動できる人は、満18歳以上で盲ろう者とのコミュニケーションをとれるだけのスキルを有している、盲ろう者福祉に対する理解のある者としています。
視覚を有すると愛知県に認定されて、なおかつ派遣スタッフとして登録している人が対象です。
【おわりに…】
盲ろう者は、光と音がほとんどない世界の中で生きています。
そのような環境の中で日常生活を自力で送るのはかなりの困難が伴います。
コミュニケーションをとるのも難しいでしょうし、移動もかなり制約されます。
何か起きたときの情報収集にも限界があります。
このような人たちが社会と関わり合えるようにサポートをする人材は常に必要とされます。
この度、外部からの支援を認めると厚生労働省が認めたことで、盲ろう者とコミュニケーションできる人たちの活躍できる機会は増えてくるでしょう。
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