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2020/10/25
コラム

施設の「人員基準緩和」背景に深刻な人員不足

介護業界での人員不足は、その業界にいない人でも周知の事実となっているほど深刻な問題です。

職員の不足が原因で施設に空きベッドを作らざるを得ない

という施設もあり、入居希望者がいても受け付けられないケースも見られます。

 

そうした人員不足を改善するため、介護施設の人員の配置基準について、条件緩和を求める声が上がっています。

しかし、法令を改正して条件を緩和したとしても、それで十分に補えるのかケアの質は保てるのか、など課題も多いのが現状です。

そこで、こうした状況の改善のために、異なるアプローチを求める動きもあります。それが、介護現場のICT化です。

 

 1.ICT化で介護現場が変わる?

介護ロボット

 ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)  

テクノロジーが進化している現代、様々な業界でICT化が進められています。

ICTとは情報通信のことで、インターネットやコンピューター技術などの最新技術を用いた業務の効率化をすることができます。

老人ホームなどの介護施設でも、アナログ処理をされている業務については、ICT化によってかなり効率化されると考えられます。

 

 事務作業のICT化  

たとえば、事務作業をICT化することで、かなりの手間を省けます。

介護施設では毎日、それぞれの利用者や施設全体についての介護記録が作られています。

この記録はいまだに職員手書きで作成している施設が多いのが現状です。

これを病院の電子カルテのように、パソコンで入力や保管をするだけでもかなり事務作業は楽になります。

また、共有がスムーズになり、すべての職員や他の施設の人もチェックしやすくなるからです。

また、記録を決まったフォーマットにすることにより、入力自体も簡単にできるようになります。

 

 介護ロボットの導入  

さらに注目されているのが、介護ロボットの導入です。

介護の仕事は体力仕事がかなり多いものです。職員には体力が求められ、肉体的な負担が大きいのです。

長時間の仕事によって、スタッフ自身が腰痛などのトラブルを抱えることも珍しくありません。

そして、加齢による体力の減少を感じることもあるので、若い人でないとしづらい仕事も出てきます。

しかし、こうした心配のない介護ロボットが導入されれば、かなり現場は楽になります。

機能障害を持つ寝たきりの患者をベッドから動かすといった作業がロボットによってなされるだけでも、スタッフの身体的な負担が軽減されます。

 

将来的には、AI搭載型の介護ロボの導入なども期待されています。

こうした介護ロボは、単に利用者の移動などの作業をするだけでなく、コミュニケーションも取れるようになると考えられています。

老人ホームなどの介護施設利用者は、生活介助さえしてもらえば良いということではなく、コミュニケーションが必要なのです。

ICTの技術と共にAIの技術が進むことによって、介護の現場で高齢者の心理的なケアを行えるロボットが生まれることが期待されているのです。

 

確かに、このような先端技術を介護の現場に導入するのは簡単ではありません。

しかし、多くのメーカーや技術者が日々技術の進歩を目指しているのは事実であり、愛知県名古屋市などはこうした技術の最先端を行くエリアでもあります。

人材が不足するなか、ケアの質を保ちながら安定した介護サービスを提供するためにも、さらなる進歩が求められます。

 

 2.介護施設の基準緩和の必要性も同時に生まれる

困る介護士

このように、人材不足が深刻化している介護の現場では、事務作業の電子化や介護ロボットの導入などがとても効果的な対策となります。

しかし、これらの策を実行するには、技術的な問題とは別の課題もあります。

それは、特にグループホーム特別養護老人ホームで見られることですが、配置人員の条件という壁です。

 

 施設に人員の法的基準がある理由  

老人ホームなどの一般的な介護施設においてもそうですが、やはり十分な数の介護スタッフが施設内に常駐してしないと、十分なサービスを提供できません。

健康リスクを抱えている利用者に危険が生じる可能性も高まってしまいます。

また、施設内での転倒などのアクシデントが起こりやすくなりますし、体調の急変に気付くのが遅れることもあります。

介護の質の低下は、安全性や利用者の満足度も低下に繋がります。

こうした事態を防ぐために、国として明確に介護施設における人員の配置基準が法的に定められているのです。

 

 配置基準の緩和が必要  

この「人員基準」がある限り、いくら施設が人材不足の打開策としてICT化を進めても、現状は法的な壁にぶつかるのです。

つまり、介護職員の配置基準の緩和も同時に進めていく必要が出てくるわけです。

もちろん、一律に施設の配置人数基準を緩くするのではなく、条件を設けた上で行われていく必要があります。

ICT化や、介護ロボット導入を行う施設は、配置人数を減らしても良い

というような形で行うのです。

 

 3.賛成の声が上がる一方、心配の声も多いのも事実

ICT化反対の声も

介護の現場では、人材不足が大きな問題となっていて、特に事業者にとっては職員を確保するのが大変な状況です。

現場で働くスタッフとしても、厳しい労働条件を少ない賃金でこなしていくということに疲れてしまうこともあります。

そのため、ICT化を図ることについては賛成の声が多く聞かれます。

しかし、その一方で不安の声があるのも事実です。

 

 配置基準の緩和に慎重な理由  

【介護の質の低下】

介護ロボットやICT化で補える業務はまだまだ限定的です。

結果、少ない人数で現場を回すことになるので、利用者への見守りいざという時の対処が適切にできなくなってしまうのではないかという不安があるのです。

確かにICTというのは便利な技術であり、作業を効率化してくれます。

そうであっても、とっさの判断や状況に応じた判断をするのは人間です。

そのマンパワーが減ってしまうというのは、どうしても不安感を与えるものなのです。

 

 災害大国「日本」ならでは  

特に日本は災害が多い国なので、災害時に介護施設の中に職員がたくさんいればそれだけできることは多いです。

万が一の場合の対策という面からも、人員を減らすことには抵抗があるのは人の健康と命を預かる職員としては当然のことでしょう。

こうしたことから、ICT化による利便性の恩恵を十分に活用しながらも、人材不足への対応と、安全性とサービスの質の確保の両立が必要となるのです。

制度を変えるにしても、新しい技術を介護の現場に入れていくにしても、こうしたバランスの取れた見方を持って改善を図ることが求められると言えるのです。

愛知県名古屋市の施設においても、質の向上を目指して様々な取り組みがなされているので、こうした動きにはこれからも注目したいところです。

 

【おわりに…】

超高齢化が進んでいる日本においては、介護業界の人材不足というのは深刻な問題となっており、これを解決するために検討が進められているのが、介護施設の「ICT化」です。
事務作業の電子化によって作業を簡素化することができ、介護ロボットを導入することによって、介護業務の身体的負担を軽減することが可能です。
こうしたICT化を推進する過程では、施設の配置人員に関する基準緩和を同時に議論しなければいけません。
そのために、国も現場の声を参考にしながら、検討を続けているところです。
介護サービスの質の安定を図る必要はありますが、これからの介護の状況を考えるととても重要な施策となって行くのは間違いありません。
これからの動きを注視して、どのように介護施設が変わっていくのかをチェックしていきましょう。