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2020/07/06
コラム

科学的介護の要「CHASE」本格運用へ

愛知県名古屋市にある介護施設や老人ホームも含め、全国的に介護施設においては介護職員不足が叫ばれています。

高齢者が増える一方、介護を担う人材が不足してしまうと、介護事業所や老人ホームは正常な運営が困難になるのです。

要介護者の増加や重症化を防ぐために、科学の力を介護分野に活用しようという動きが活発になっています。

今回は、科学的介護の要となっていく「CHASE」について、紹介していきましょう。

【目次】
①「科学的介護」とは
② 世界的にも珍しい取り組み「CHASE」
「科学的介護」の導入で起こる変化

 

1. 「科学的介護」とは

「科学的介護」とは

 そもそも科学的介護とは?

分かりやすく言うと、介護サービスを必要とする高齢者にとって最適なサービスを提供するために、科学的な手法や研究を介護分野に導入するというものです。

つまり、「科学と介護のコラボ」です。

介護保険サービスにおいては、「利用者によって異なるニーズの把握」や、提供される「サービスの多様化への適応」が必要となります。

そうすることで、より自分に適したサービスを選び、効率的で効果的な介護サービスを受けることが可能になります。

そのための支援は現在でも行われていますが、「科学の力」を加えることによって、情報の質と量をアップするというのが、科学的介護の試みなのです。

 

すでに「厚生労働省」や全国の「老人福祉施設協議会」などでは導入済みで、科学的介護を推進するためにたくさんの取り組みが行われています。

具体的には、介護記録を「データベース化」し、それを基に、実施した介護や業務に対して得られた効果を検証し、業務の質や効率を上げるための「エビデンス」(効果の科学的根拠)を蓄積しています。

このデータベースは、
Care,Health Status &Eventsの頭文字をとって

CHASE(チェイス)

と呼ばれています。

 

2. 世界的にも珍しい取り組み「CHASE」

世界的にも珍しい取り組み「CHASE」

現在の介護現場では、事業所ごとに記録している情報がバラバラ

・施設ごとにテンプレートが異なっている
・施設Aでは重要とされる情報が、施設Bではそもそも記録すらされていない

このような事業所ごとの蓄積されている情報の相違は珍しくありません。

介護施設での転職経験がある人にとっては、施設ごとに情報の記録方法や記録する内容が異なることで困惑する場面が多々あります。

 

そこで、活用されることになったのが『CHASE(チェイス)』です。

【 CHASEとは】
施設ごとに異なる情報の記録方法や記録する情報の内容を統一しデータベース化するための仕組み

「CHASE」はすでに厚生労働省によってデータベース構築がすすめられていて、世界的に見ても珍しい取り組みと言われています。

  CHASEの仕組み
①介護施設や老人ホームで管理されている介護記録情報を収集
②情報の中からデータベースに必要な項目だけを抽出して登録
③情報が匿名処理された上で、データとして管理保管される

 

2020年5月時点ではCAHSEはまだ実際の介護現場で稼働をしていません

しかし、近い将来には実稼働させたいとする動きはあるようです。

 

CHASEの導入が急ピッチで進められている“背景”には何があるのでしょうか。

 

実は、「介護保険サービスに対する国家負担」が密に関係しているようです。

高齢化社会が進み続ける日本では、当然介護保険サービスを利用する人が増加しています。

介護保険サービスの提供量が増えれば、当然、国が負担するお金も増えるため、財政を圧迫します。

 

国民への負担を増やさずに、国が負担する社会保障費を削減するためは、これまでと同じ管理方法のままでは実現不可能です。

だからこそ、科学的根拠に基づく介護システムの導入が必要なのです。

 

現在、介護保険サービスに関するデータは、

介護保険総合データベース
通所リハビリの効率化のVISIT

という2つのデータベースで管理されています。

そこにCHASEを加えることで、3層構造のデータベースで管理することになります。

1層目: 介護保険総合データベース 
要介護認定に関する情報や、介護保険レセプト情報などを格納することができます。
この部分はすでにデータが全国から収集されていて、稼働がスタートしています。

 

2層目: VISITシステム 
通所や訪問サービスを行う事業所からリハビリ計画書に関する情報を格納することができます。
すでに稼働がスタートしており、事業所からデータを収集しながらデータベースを拡大する計画となっています。

 

3層目: CHASE 
現在稼働準備が進められている最中で、管理するの内容や方法は現在検討中となっています。
試験的に稼働しながら問題点を見つけ、改善や改訂をしていくと考えられています。

 

【CHASE】において、すでに決まっている管理情報項目は、大きく4つの分野に分かれます。

総論
認知症
口腔
栄養

この4分野をさらに細分化し、項目ごとにわけていきます。

・基本的な項目
・加算算定のために必要となる項目
・目的に応じた項目
・その他、任意に収集できる項目

 

基本的な項目だけでもすでに30項目が決定しており、データベースで管理する情報は、多岐にわたる充実が期待されています。

収集する情報や項目の決定においては、下記の2点が特に着目されます。

・どんな情報を収集するのか
・どこからどんな風に収集するのか

例えば…

■既往症や服薬に関する情報
→すでに構築されているレセプト情報や、特定健診情報データベースとリンクさせることによって迅速かつ正確に情報収集ができる。

■ADL(日常生活動作)
→ADLの自立していない患者が、機能回復していく過程を計るための簡易的な査定法である、バーセル・インデックス(BI)を用いる。

 

3. 「科学的介護」の導入で起こる変化

科学的介護の導入で何が変わるの?

科学的介護の導入が進むと、どんな変化がうまれるのでしょうか。

現在は崩壊の危機にあると言われている介護保険サービスの取り組み方が劇的に変わるかもしれません。

 

まだまだ日本社会における高齢化は進むと考えられていて、高齢者からのニーズもどんどん多様化していくでしょう。

現状を打破して国内の福祉を良い方向へ転換することが、求められています。

 

科学的介護が導入」は、地域包括支援システムの促進に影響を与えるでしょう。

 

地域包括支援システム、2025年を目標にすでに開発がすすめられているシステムです。

その“目的”は、高齢者が住み慣れた街で老後の生活を送れる環境づくりと介護サービスの融合です。

住み慣れた地域で生きる」在宅介護の推進に積極的に取り組みながら、国の介護保険分野の費用削減を目指すことになるでしょう。

 

「介護状態にならないための予防」
「重症化の防止」
「最後まで慣れ親しんだ我が家で生き抜く」

こうした目的のもと、施設入所者や要介護者の増加を防ぐことで、「介護要員不足の解消」や、「財政負担の悪化防止」に繋げたいという狙いがあります。

科学的介護の中枢となる「CHASE」を導入することで、介護データを全国的に共有できるようになります。

その結果、今日本が抱える介護福祉における問題に対する、具体的な対策方法が打ち出されることが期待されています。

 

おわりに…

科学的介護に向けての取り組みは、CHASEデータベースの構築を中心としてすでに多方向から進められています。
介護保険サービスを必要とする高齢者にとっても、国にとっても、また地域にとってもウィンウィンとなるシステムや制度が整備されることが求められています。