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ケアまどニュース
【介護と仕事】親の介護で仕事を辞めないために――介護離職の壁を乗り越えるヒント
「介護離職」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。家族の介護を理由に仕事を辞めざるを得ない「介護離職」は、働き盛りの世代が直面する深刻な課題です。仕事と介護の両立が困難な現状には、経済・精神・社会の三重負荷が絡んでおり、制度の活用や環境整備を通じてその道を変えることが可能です。今回は、介護を理由に働き方を見直さざるを得ない現状と、その背景、そして今できる対策について考えてみましょう。
介護離職とは
「介護離職」とは、家族の介護・世話を理由に、自らが従事していた仕事を辞めることを指します。例えば、厚生労働省が「仕事と介護の両立をめざす社会の実現」を掲げている背景には、要介護・要支援認定を受ける高齢者数が増えており、介護負担を担う働き手も増加しているという現状があります。
近年の統計では、年間おおよそ9万人から10万人程度が介護を理由に離職しているとされ、「働き手が介護によって職場を去らざるをえない」状況が継続しています。
このように、介護離職は個人・家庭だけの問題にとどまらず、社会全体の就労力や労働市場にも影響を及ぼしています。
問題点
介護離職には複数の問題点があり、離職者本人・家族・企業・社会それぞれに影響を及ぼします。
・本人・家庭における課題
まず、離職により収入が激減するケースが多く、「貯蓄の取り崩し」「将来年金への影響」など経済的な負担が増加します。 更に、一度離職した後の再就職が非常に難しく、例えば40代・50代では再就職率が5割以下、60代になると約2割程度というデータもあります。
また、介護のために仕事を辞めたにもかかわらず、「社会からの隔離感」「精神的ストレスの増大」を感じる人も少なくありません。
・企業・社会における影響
企業にとっては、働き盛りの従業員—特に40〜50代の中枢人材—が離職するということは大きな損失です。 社会全体として見ても、労働力人口の減少・社会保障費の増大・地域社会の活力低下などのリスクを伴います。
以上のように、介護離職は個人の選択だけではなく、制度・組織・社会構造が無関係とはいえない複合問題なのです。
どう防ぐか
では、介護離職を防ぐために私たちにできること、職場・家庭・地域で取り組むべき方策を整理します。
・制度の活用と職場の整備
例えば、育児・介護休業法に基づく「介護休暇」「介護休業(最大93日/対象家族1人あたり)」という制度があり、また取得中に給与の一部を補う「介護休業給付金」もあります。 さらに、企業側は「介護離職防止支援コース」など助成金を活用しながら、柔軟な働き方(時短勤務・フレックス・テレワーク)や相談窓口の設置によって、介護と仕事の両立をサポートする仕組みを整える必要があります。
・早めの情報収集と家族内・職場内の連携
介護が必要になる前、また発生直後に「家族で共有」「誰が何を担うか」を話し合っておくこと、そして、職場においても上司・人事と早めに状況を相談・制度を確認しておくことが有効とされています。さらに、介護サービス(訪問介護・デイサービス・ショートステイ等)を早期に利用することで、介護者の負担を軽減し、仕事との両立を可能にする現実的な選択肢となります。
・職場文化と意識改革
制度だけあっても、使いづらい雰囲気では離職を防げません。経営層から「介護と仕事の両立支援」を明確に打ち出し、管理職・社員が互いの状況に配慮できる職場風土を構築することが重要です。
これらを統合的に進めることで、介護離職のリスクを大きく低減できます。
まとめ
働き盛り世代が家族の介護に直面し、キャリアを諦めざるを得ない「介護離職」は、個人・企業・社会にとって重大な課題です。ですが、適切な制度の活用、早期の家族・職場内での調整、そして職場文化の変革を通じて、仕事を続けながら介護に向き合う道は十分に開けます。自身や職場の備えを今から整え、「介護だから仕方ない」という選択肢だけで終わらせないようにしましょう。
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