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2025/09/25
コラム

半側空間無視とは?ー原因・症状と生活でできる工夫

半側空間無視とは?ー原因・症状と生活でできる工夫

半側空間無視は、脳の障害によって自分の左側(または右側)が「見えていても認識できない」状態になることです。
食事や移動に影響が出るため、日常生活に大きな支障をきたしますが、工夫とリハビリによって改善する可能性があります。

原因と症状

半側空間無視は、脳梗塞や脳出血や外傷性脳損傷などで脳にダメージを受けることによって引き起こされる高次脳機能障害です。

どちらの大脳半球の損傷によっても起こるとされていますが、症状の出現率は右半球損傷の方が多いです。つまり左側が気づきにくくなるのです。
左脳は右のみ注意を向ける働きがあり、右脳は左右の空間に注意を向ける役割があります。そのため右脳が傷つくと右のみに注意を向けるようになってしまうのです。

半側空間無視の症状は生活に直結します。たとえば、食事ではお皿の左側を食べ残したり、左側の袖を通す時、靴の左側を履く時に困難さを感じたり、左側の髭をそり忘れたりします。
移動のときは左側の壁やドアにぶつかりやすく、鏡を見ても左半分の髪を整えないことがあります。

この状態は視力の問題ではなく「注意がそちらに向かない」ことが原因です。しかも本人がそのことに気づいていない場合が多く、「どうして指摘されるのかわからない」と戸惑うこともあります。

どうやって見つけるのか

半側空間無視は、簡単なテストや日常生活の様子を観察することで確認されます。
代表的なのは「一本線をちょうど真ん中、半分に分けるテスト」や「紙に描かれたたくさんの小さな絵や印を見つけてもらうテスト」です。

また、時計の絵を描いてもらうと、右半分だけ描いて左側を抜かしてしまうこともあります。こうしたテストを組み合わせて、どのくらい無視があるのかを調べます。
加えて、食事・身支度・移動といった日常の中で「どの程度困っているか」を確認することも大切です。机上のテストでは見つかりにくい場合もあり、普段の生活の中での様子が診断のヒントになります。

対策と支援の方法

半側空間無視の改善には、リハビリと生活の工夫が欠かせません。

リハビリの工夫

    • 視線を動かす練習
      わざと左側を見渡す訓練を繰り返すことで、少しずつ気づきやすくなります。
    • 特別な眼鏡を使う方法
      プリズムレンズと呼ばれる眼鏡で視界をずらし、脳に「左側に注意を向ける」きっかけを与える練習があります。
    • 体を動かして気づきを促す
      左手を使う、左側から作業を始めるなど、体を通じて注意を向ける方法も効果的です。

生活でできる工夫

      • 食事では、ワンプレートにして提供したり、何品あるかメニュー表を置く
      • 部屋の中では大事なものを左側に配置する
      • 家族や介護者が左側から声をかける

こうした小さな工夫を積み重ねることで、少しずつ「左側がある」と気づけるようになります

周囲の支え

半側空間無視は本人が気づきにくいため、家族や介護者の協力がとても大切です。頭ごなしに「そっちも見て!」と叱るのではなく、左側に気がつきやすいように視覚的に目立つように工夫したり、音を出すなど聴覚的な手がかりを併用しながら、左側への気づきを促します。
また危険がないように家具の配置なども工夫しましょう。医師、リハビリスタッフ、介護職など多くの専門職が協力して取り組むと、生活の幅が広がりやすくなります。

まとめ

半側空間無視は「見えているのに気づかない」不思議な症状で、食事や身支度、移動など日常のあらゆる場面に影響を及ぼします。
ですが、視線を動かす訓練や環境の工夫、家族のサポートによって改善を目指せます。気づきにくい障害だからこそ、周囲の理解と協力が回復の第一歩となります。