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介護分野における「特定技能」の要件緩和へ
国民の4人に1人が75歳以上になると言われる2025年を目前に控えた昨今。高齢者を迎え入れるための施設や老人ホームは右肩上がりに増えています。
しかしその一方で、介護者側の人材不足も問題として浮上しているのも事実です。
厚労省は前述した2025年に、介護士不足が37万7千人にのぼると予測しています。
こうした問題を解決する手段として今注目を浴びているのが、在留資格「特定技能」における「外国人介護者の受け入れ」です。
【目次】
①介護分野における「特定技能」とは
②介護業界は今、深刻な人手不足
③実際には受け入れ進まず、要件緩和へ
1. 介護分野における「特定技能」とは
介護分野における特定技能は、平成31年4月より施行されており、外国人を対象とした介護者人材確保の法律はこれまでにも存在していました。
しかし、今回新たに設けられた「特定技能」は、それまでに制定されていた仕組みでは「深刻な人手不足を補えない」という結論から導き出されたものなのです。
これまでの日本の外国人受入れの取り組みの内容は以下の通りです。
【平成20年】 EPAによる外国人介護士養成の受入れ
EPAとは経済連携協定(Economic Partnership Agreement)に基づいて、日本の介護施設で研修しながら日本の介護福祉士資格を目指す外国人のことをいいます。
現時点でのEPA介護福祉士候補者受け入れ対象の国はフィリピン、ベトナム、インドネシアの3か国です。
この場合、あくまで主体は二国間の経済連携強化であって、介護不足による人員補填を目的にはしていません。また、EPAの条件を満たしていなければ候補者になることが出来ず、かなりの狭き門となっています。
そのため、年間における受け入れ対象者は1000人未満と、平成平成20年からの累計でも4265人にしかいないのが実情です。これでは不足する37万人にはほど遠いどころか、焼け石に水の状態です。
、
【平成29年】 在留資格の介護分野
在留資格の要件は、介護福祉士の資格を持つ外国人が、介護業務に従事することとなっています。しかし、そもそも在留資格の対象者は、以下の通りです。
(1)日本の介護福祉士養成施設を卒業していること
(2)介護福祉士の国家試験に合格していること
これらの条件を満たすことは容易ではなく、当然実際に1年間での受け入れ人数は200名未満とかなり少人数でした。
【平成30年】 技能実習の介護分野
この技能実習の意図はあくまで本国に戻った後、その技能を発揮することを目的としているものです。すなわち、日本の介護者不足を解消させるものではないのです。
そこで、さらに追加されたのが介護分野の「特定技能」となります。
とはいえ、前述した37万人に及ぶ介護者不足を全て外国人で賄うわけではなく、国内で補填しても尚不足するであろうと推定される「6万人」を外国人介護者によって補充しようというのが目的です。
国民の4人に1人が75歳以上になると言われる2025年までのあと5年間で6万人を補うのに、EPA、在留資格では到底間に合わないわけですから、この「特定技能」が注目を浴びているのです。
特定技能
在留資格:特定技能1号/在留期間:5年間
「介護福祉士の国家試験」が条件に入っていないことから、受ける外国人にとってもかなり条件が緩和されたものとなっています。
ただし、その場合の在留期間は5年となりますので、無期限で在留するためには、介護福祉士の国家試験合格が必須となってきます。
また、既存の「技能実習」から「特定技能」への移行も可能とされており、介護における技能実習2号から特定技能へ移行する場合には、技能研修3年と5年で計8年の在留資格が認められることとなります。
2. 介護業界は今、深刻な人手不足
前述した通り、2025年には介護者が37万人不足しますが、その5年後である2030年には79万人もの不足になると言われています。そして、今もすでに約6割以上の施設が「人員不足」に頭を悩ませています。
一体、何故このような人員不足が起きてしまうのでしょうか。
(1) 業務内容に比べて給与が安いと感じる人が多い
まず一番の原因として「給与額」があげられるでしょう。
厚生労働省の調べによると、
介護職の月給平均:21万9000円
産業全体の平均額:32万9600円
このとおり約11万円と大きな開きがあることが分かります。
介護の仕事は高齢者の日常生活におけるお世話ですが、介護を要する高齢者には誤嚥や転倒などのリスクが伴うことも少なくありません。
また、施設の種類によっては、長時間の夜勤があるなど、体力面でのハードルもあり、そうした業務内容と賃金とのバランスの悪さが原因で、人員が増えないという背景も無理のないことかもしれません。
では、何故介護の給与は安価になってしまうのでしょうか?
その仕組みは「介護士の給料の財源」にあると言えるでしょう。
介護士の給料の財源は、高齢者が利用した「介護サービスに対する利用料=介護給付」で賄われています。
介護サービスをたくさん利用してもらえば、当然収入は増えるのですが、介護サービスを提供するためには、「人員基準」を満たさなければいけません。当然たくさんの介護サービスを利用するには、相応の人員が必要です。
たくさんの人員を確保することで、当然人件費も上がる訳ですから、給与を上げるということは介護サービス事業の仕組み上、容易なことではないのです。
昨今では、その点も踏まえて「業務の効率化」「IT化」「職場環境の改善」という視点が非常に注目されています。
昔よりも介護が身近になった分、興味を持ってくれた人やその従事者のモティベーションを支えられるような仕組みを考えることも、人員確保のコツと言えるかもしれません。
(2) 実は人間関係による離職も多い
次に多い問題とされるのが、離職率です。この離職の原因として、「人間関係」が挙げられることは珍しくありません。
こうした問題は以前より蓄積されてきたため、具体的な対策をたてて人員確保に乗り出している団体も出てきています。
また、深刻な人手不足による問題解消をする一縷の望みとして、外国人介護者の起用も増えてきている次第です。
愛知県名古屋市の介護施設や老人ホームの求人広告を見ても、「外国人介護者の就業体制を整えている」と謳っている広告が散見されている程です。
3. 実際には受け入れ進まず、要件緩和へ
介護者不足に希望を灯してくれた「特定技能」ですが、開始から半年経っても思うように人員確保が進んでいないのが実情です。
出入国在留管理庁によると、こうした大幅な遅れの原因として、相手国の出国規定における整備が不充分なことがあげられています。
【ベトナム】技能試験そのものが行われていない
【フィリピン】合格者がまだ来日出来ない
確かに相手国がいてのことですと、「はい、受け入れ万全ですよ!」と日本が手をこまねいても、そうそう簡単にことが展開するわけではないのかもしれません。
そのため、入管庁はまず日本国内における試験の受験資格を緩和する方針を打ち出しました。
【緩和前】
・3カ月以上日本に滞在していること
【緩和後】
・日本の滞在期間が3カ月以下でも受験可能
・受験目的だけの入国可能に
※国によっては受験可能な業種が限定的なため
おわりに…
2025年は目前、果たして介護人材不足は解決するのか──そんな不安を抱えている方も少なくないでしょう。
しかし、「出来ることからやる」ことこそ、今できる最善策なのかもしれません。
介護関係者であれば、離職率の抑制のための職場環境の改善ををはかる。高齢者は、介護予防に取組み、出来るだけ健康状態を維持するなど、国家的な問題に対して政府にすべてを委ねてしまうのではなく、「個人が最善を尽くす」ことが、一番の解決策なのかもしれません。
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