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ケアまどニュース
介護予防・健康づくりへの取り組みに対する交付金拡充へ
2020年1月17日、厚生労働省は各自治体に対し、
「介護保険被保険者努力支援交付金」を支給すると発表しました。
この交付金の目的は、高齢者の健康維持や介護予防を各自治体が促進することにあります。
【目次】
①国が目指すのは「生涯現役社会」
②注目される「インセンティブ交付金」の目的
③2020年度からインセンティブ交付金が拡充
1. 国が目指すのは「生涯現役社会」
それでは、この交付金を支給することによって国はどのような影響を期待しているのでしょうか?
それは、高齢者が『生涯現役』であること。
つまり、高齢になっても社会で活躍できるよう、健康維持を促すことです。
この取り組みの背景には、日本が深刻な少子高齢化問題に直面していることが挙げられます。
少子高齢化問題とは
15歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少により、65歳以上の高齢者の介護、医療費などの膨張に加え、制度を支える税金を支払う現役人口が大幅に減少。年金の減額や支給年齢の引き上げ、最悪の場合、制度自体の崩壊といった問題を引き起こす
実際すでにそうした問題は浮上してきており、「年金受給開始後から生活が苦しくなった」と感じている高齢者の方も少なくありません。
これらの問題を解決する糸口としても高齢者の健康維持、介護予防はとても大切な要素となってきます。
また、前述したような生産年齢人口の減少により、元気なシニアへの雇用需要が増加しています。
特に【病院】や【福祉関係施設】の場合には、「定年制度撤廃」を実施しているケースも多数あり、70歳以上で看護師や介護士として勤務している人も決して少なくありません。
一般企業においても定年を60歳から65歳まで引上げしたり、65歳以降も嘱託契約を結ぶといった企業も出てきています。
しかし、高齢者の雇用形態については、非正規雇用が多いのが現状で、給与水準は正規雇用時の半分以下など、待遇については以前のようにはいかないことがほとんどです。
そのため今後の課題として、雇用数だけでなく「給与水準」や「待遇の安定」といった、高齢者雇用の質の向上が求められると言えるでしょう。
一方で、【フリーランス】や【士業】(弁護士や司法書士、行政書士など)の場合には、雇用環境について年齢の影響を受けにくいと言われいます。
しかしながら、これらの職種についても、自分が働きたいと思う年齢まで働くためには、健康維持は必要不可欠です。
こうした生涯現役で活躍できる高齢者をひとりでも多く増やすことこそが、交付金支給の動機であると言えるでしょう。
2. 注目される「インセンティブ交付金」の目的
厚労省は2017年にも介護改善や要介護度の維持を含めた、介護予防を促進した自治体に向け、財政優遇措置として「保険者機能強化推進交付金」を創設していました。
この交付金は一般的に「インセンティブ交付金」と呼ばれています。
インセンティブ交付金とは
2018年に開始され、高齢者の健康を維持し、生涯現役で過ごせるよう尽力した自治体には、交付金(インセンティブ=報酬)を支給する仕組み。
【目的】
「生涯現役」=「自立支援」かつ「介護度の重症化防止」を促進すること。
【財源】
予算の財源はすべて税金。全市町村に総額190億円、都道府県に10億円と大規模
この取り組みの支給対象となる自治体の活動は、なかば自己申告といった形で、自治体の申告した内容に対して国が採点し、その評価に応じた報酬を支払う、というのが実状となります。
国の採点項目の例
①デイサービス等における機能訓練や口腔機能向上、栄養改善などの指導の有無
②自治体主導のケアマネージャー向け研修会の開催の有無
③医療および介護関係者間における情報共有ツールの有無
こうした項目が、市区町村では61項目、都道府県では20項目が準備されています。
これらの項目にしたがって自治体が自治申告を行い、点数に応じて交付金が支給されるという仕組みになっています。
国がこれだけの予算額をかけてでも全力で取り組みたいとしているのが、「介護予防」なのです。
このインセンティブ交付金の対象は、全都道府県と全市区町村ですので、ここ愛知県名古屋市も当然含まれています。
平成30年度の取り組み結果における全国集計結果によりますと、満点が612点、平均点が411点の中で、愛知県の取得した点数は「413.1」という結果でした。
介護予防に関しては介護施設はもちろん、有料老人ホームにおいても取り組んでいく必要があると言えるでしょう。
3. 2020年度からインセンティブ交付金が拡充
このように全市区町村を巻き込んでの「介護予防」を促す法案だったのですが、2020年度からさらにそれが拡充することが決まりました。
今までのインセンティブ交付金に対してさらに「保険者機能強化推進交付金」を設けることで、高齢者の自立を支援し、重度化防止に対してさらなる取り組みを推進していくとの姿勢を打ち出したのです。
保険者機能強化推進交付金
今までの「インセンティブ交付金」の項目にプラスアルファして、「二段階の仕組み」で介護予防を行う
各自治体が取り組み評価指標として公表された内容は、以下のとおりになります。
【1】PDCAサイクルを活用した保険者機能の強化
【 PDCAサイクル 】Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)、これらが常にサイクルとして回り続けること。
すなわち、自分達の地域で行った介護予防の計画を実行した結果が、客観的根拠に基づいて評価した際に、介護保険事業における特徴や問題点を正しく把握し、それに最適な働きかけを実行できているか、ということが大切になります。
【2】ケアマネジメントにおける質の向上
【3】多職種連携による地域ケア会議を活性化しているか
【4】介護予防の推進
介護予防の場にリハビリ専門職の人が関与し、具体的な介護予防をアドバイス出来る仕組みを設けていることが指針となる。
また、介護予防の活動に対して、地域に居住する65歳以上の高齢者の参加者数もカウントされる。
【5】介護給付適正化事業を推進する
ケアプランの点検や見直しがどの程度実施されているかが指針となる。
また、福祉用具の使用や住宅改修利用の際に、リハビリ専門職等がアドバイスできる仕組みを設けているかも要点となる。
【6】要介護状態の維持、および改善の度合い
「要介護認定者の変化の度合い」すなわち、要介護が3から2になったなど、介護度の変化を具体的にあげる必要がある。
こうした項目により、既存のインセンティブ交付金同様に採点がつけられ、評価に応じた給付金が支払われることになります。
おわりに…
こうした政府の対策には、賛否両論の意見があがっています。
確かに生涯現役は素晴らしいことですし、そういられる高齢者の方自身も満足した生き方が出来ることは確かです。しかし、本来「介護予防」とはもっと早いうちから、それこそ40代や50代の働き盛りの頃から始めても「早すぎる」ということはないでしょう。
また、「介護度が低いことことが良い事」、「介護度が高いことが悪い事」という、ある種の差別的な認識を助長させてしまうことも懸念されています。今すでに介護が必要となっている高齢者の方に対して充分な介護サービスが提供できるのだろうか、という不安も招きかねません。
市町村によっては既に過疎化が深刻化しており、リハビリ専門職を配置してくても人材自体が居ない、介護予防対策がしたくても出来ないという地域ももちろんあり、おかれている状況はさまざまです。
すべての地域、すべての人が「同じ条件ではない」この状況下で、一律の基準による評価の仕組みが果たしてどのような未来を生じるのか、経過を見守っていくしかなさそうです。
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