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2025/08/19
コラム

高齢者の口腔ケアと認知症の関係

高齢者の口腔ケアと認知症の関係

高齢者の健康維持に欠かせないのが「口腔ケア」です。口腔内の環境が悪化すると、虫歯や歯周病だけでなく、全身の健康や認知機能にも影響を及ぼします。近年では、認知症との関連性も注目され、口腔ケアの重要性はますます高まっています。

高齢者の口腔環境とその課題

高齢になると、加齢や疾患の影響により唾液の分泌が減少し、口腔内の乾燥(ドライマウス)が進行しやすくなります。これにより、虫歯や歯周病の発症リスクが高まるほか、入れ歯の不具合や飲み込みづらさ、味覚の低下といったトラブルが生じることも少なくありません。加えて、身体機能の低下により歯みがきやうがいなどのセルフケアが困難になると、口腔内の清掃不良が慢性化し、悪循環に陥る危険性があります。

こうした状況を放置すると、食事の摂取量が減り、低栄養や体力の低下につながるだけでなく、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。特に高齢者施設では、こうした口腔環境の変化に早期に気づき、適切なケアを提供することが求められています。毎日の観察やケアだけでなく、歯科専門職との連携も不可欠です。

口腔ケアと認知症の関連性

口腔内の健康状態と認知症には、密接な関連があることが複数の研究から報告されています。例えば、残存歯数が少ない人や、入れ歯を使用していない人は、認知症の発症リスクが高まることが知られています。
噛むという行為によって脳への血流が増え、脳の記憶を司る海馬の神経細胞が活性化すると言われており、認知症予防につながると考えられています。

咀嚼機能が低下すると、脳への刺激不足、栄養状態の悪化、さらには歯周病による慢性的な炎症が全身に悪影響を及ぼし、アルツハイマー病などの進行を早める可能性があるとされています。特に歯周病菌は血管を通じて脳へ到達し、炎症を引き起こす可能性が指摘されており、早期の予防・治療が重要です。

このように、口腔ケアは単なる「歯の掃除」にとどまらず、認知機能の維持にも大きく関わる要素であることから、介護や医療の現場では包括的な健康管理の一環として注目されています。

認知症高齢者への口腔ケアの実践と工夫

認知症が進行すると、本人の理解力や注意力が低下し、口腔ケアを拒否する、口を開けてくれない、暴れるなどの対応困難な行動がみられるようになります。そのため、介護者には、単なる清掃技術だけでなく、コミュニケーション能力や観察力、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

具体的には、「目を見て穏やかに声をかける」「ケアの手順を簡潔に説明する」「本人が安心できるような環境(静かな部屋・慣れた時間帯)を整える」といった配慮が有効です。また、無理に行おうとせず、タイミングをずらす、一部だけでも清掃を行うなど、ケアのハードルを下げる工夫も重要です。

さらに、訪問歯科や歯科衛生士による専門的な支援を受けることで、より安全かつ効果的なケアが可能になります。また、口腔マッサージや嚥下体操などのリハビリ的要素を取り入れることで、認知症の進行を緩やかにすることも期待されています。

まとめ

高齢者にとっての口腔ケアは、全身の健康維持と認知症予防の両面から極めて重要です。特に認知症のある方には、適切な環境づくりと丁寧な対応が求められます。介護者と専門職が連携し、日常的に口腔ケアを実践することが、本人のQOL向上と疾患予防につながります。