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ケアまどニュース
生活保護制度の矛盾を調整する「境界層該当措置」

生活保護には該当しないが、実際の生活は困窮している――そんな“狭間”にいる人々を支援する仕組みが『境界層該当措置』です。今回は、この制度の概要や対象者、支援内容について、わかりやすく解説します。
生活保護に該当しない「境界層」とは?
生活保護は、最低限度の生活を保障する最後のセーフティネットとして機能していますが、現実には「基準をわずかに超えているために対象外とされる人」が少なくありません。こうした方々は「境界層」と呼ばれ、制度の“隙間”に取り残されやすい存在です。
たとえば以下のようなケースが該当します:
-
医療費や介護費の負担が重い
-
前年所得があったために、現在の収入に対して保険料などの費用負担が大きい
こうした方々は、収入額だけを見れば生活保護の要件を満たさない場合であっても、生活していくうえでかかる費用負担が大きくなると、実質的には生活保護の基準を下回る生活になってしまうことがあるのです。
境界層の制度上の矛盾を解決する「境界層該当措置」
「境界層該当措置」とは、境界層の方に起こる次のような制度上の矛盾を解消するために設けられた制度です。
年金などの収入だけを見れば生活保護の対象とならない方であっても、介護保険や医療保険の保険料・自己負担が重くのしかかることにより、実質的に生活保護基準を下回る生活となってしまうケースがあります。
こうした方が生活保護を申請し、仮に認定されたとしても、保護が開始されて介護や医療の保険料・利用料の減免措置が適用されると、結果的に制度によって収支が改善し、「生活保護の基準を満たさない」状態となり保護が打ち切られる、という制度上の“無限ループ”のような矛盾が発生します。
このような事態を回避するとともに、介護や医療などの必要な支援が継続的に提供されるようにするための仕組みが、境界層該当措置です。
境界層該当措置は生活保護制度の一部として運用されており、部分的に生活保護受給者と同様の負担軽減措置が受けられる制度ですが、生活保護受給者としての位置づけではありません。
「措置の内容」と「利用の流れ」
境界層該当措置は「介護」と「医療」それぞれに存在します。ただし、医療に関する措置が必要となる場面は入院時など限定的であることや、介護に関する措置の方が減額の幅が大きいことから、一般的には介護に関する減額措置が制度のメインとなっています。
介護の減額措置には以下の5つがあり、生活保護を要しない状態となるまで、①から⑤までを順番に適用していきます。
境界層該当措置の内容:
①介護保険料の滞納があっても給付制限(保険給付の減額、及び高額介護サービス費等の不支給)を行わない(※すでに上記給付制限を適用中の場合は解除)
②介護保険施設を利用した際の居住費・滞在費の負担限度額をより低い段階とする
③介護保険施設を利用した際の食費の負担限度額をより低い段階とする
④高額介護サービス費等を算出する際の利用者負担上限額の段階を下げる
⑤介護保険料の所得段階をより低い段階にして負担額を軽減する
申請・利用の流れ:
境界層該当措置は、すべての人に自動的に適用されるものではありません。適用には、福祉事務所の判断や状況確認が必要です。
制度を利用する場合には、以下の手順で行われることが一般的です。
-
福祉事務所に相談
-
担当ケースワーカーによる収支・資産の確認
-
福祉事務所から「境界層該当証明書」が発行される
-
介護保険において措置を受ける場合は、証明書を持って介護保険課にて申請
先述した通り、境界層該当措置を利用する人は生活保護受給者としての位置づけではないため、生活が苦しいと感じながらも生活保護を受けることへの心理的ハードルの高さを感じている人にとっても受け入れやすいかもしれません。
この制度は、自治体によって運用の詳細が異なることがあり、適用に地域差がある点にも注意が必要です。具体的な支援内容や必要書類などについては、各市区町村の福祉担当窓口への確認が不可欠です。
まとめ
境界層該当措置は、生活保護の基準をわずかに超えてしまうが、実質的には困窮状態にある人々を支援するための大切な制度です。特に高齢者や障害者、慢性疾患を抱える方など、継続的な支援が必要な人にとって心強いセーフティネットとなります。制度の存在を知り、早めに相談・申請することで、必要な支援を受けられる可能性が広がります。周囲の理解や専門職のサポートも重要な鍵となるでしょう。
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