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ケアまどニュース
要介護認定、有効期限の延長と、調査員の要件緩和の可能性
高齢社会化が進む昨今、厚生労働省は介護保険の有効期限や認定調査の見直しについて新しい提案を発表しました。
それは、要介護認定期間の有効期限を現在の36か月から48か月まで延長するという提案と、ケアマネージャーが行っている認定調査員の枠を拡大し、医療者や福祉関係者まで広げるというものです。
これが施行されると、2021年4月から改正されると考えられています。
超高齢社会になる2025年を目前にして、厚労省がどのように対処しようとしているのか。
また、介護認定の仕組みはどのようになっていて、現状の制度から変わることによってどのような影響があるのかについて考えてみました。
1.現在の要介護認定の有効期限の定義とは
2019年12月現在における要介護認定の有効期限は、初回認定の場合と更新認定の場合とで異なります。
【 初回認定における有効期限 】
・原則6か月
・認定の効力は申請日に遡る
・認定日が月の途中の場合、申請月とその後の6か月間が有効
例えば1月15日に認定された場合には、1月を申請月とするため、そこから6か月間の7月末日までとなります。
それまでの間に支援状態や介護状態が継続すると見込まれる場合には、改めて居住地の市に更新のための認定調査を申請をします。
更新認定の場合、仮に認定に変更があった場合でも申請日からの算定ではなく、有効期間満了日翌日からの算定となります。
【 介護保険の更新時の有効期間 】
・原則12ヶ月だが、介護認定審査会により期間が前後する場合もある
・短縮された場合の期間:要支援・要介護ともに3~11ヶ月
・延長された場合の期間:要支援者は13~24ヶ月
・延長された場合の期間:要介護者は13~36か月
これらの定期間について、2019年11月14日に開催された社会保障審議会・介護保険部会において、要介護の延長期間を36か月を48か月へという意見が提案されました。
ここで対象とされている方は、
有効期限満了日の前後に介護度の変更がないと想定される高齢者です。
4年と言う歳月は高齢者の方にとっては非常に長い期間でもあるので、不安を抱かれる方も少なくないでしょう。
そのため、厚労省では新規の介護認定申請者や、区分変更の可能性がある高齢者に対しては現在の有効期間を継続する考えです。
実はこうした期間の見直しについては数年刻みで行われています。
2015年4月:上限が24か月へ延長
2018年4月:上限が36か月へ延長
2021年頃 :48か月への延長を検討中
これだけの法改正の背景には、やはり急激な高齢社会化が原因として存在します。
高齢化が進んだことから、認定申請が増加しました。
本来は、申請から認定がおりるまでの期間を30日以内と規定していますが、厚労省の調査により、2019年度は平均所要日数が38.5日かかっていたということが明らかになりました。
こうした提案は、高齢社会化における認定が速やかに行えるようにするためのものと考えられます。
2.要介護認定の調査における調査員のルール
介護保険更新時の認定機関の延長と並行して提案されているのが、
認定調査員の増員です。
現行で介護認定の調査を行える人は、以下の通りです。
新規申請時:行政職員・受託事業者
更新の場合:行政職員・受託事業者・ケアマネージャー・厚労省が認めた介護事業所職員
また、実際に業務につくまでには、都道府県が実施している認定調査研修を修了しなければなりません。
今回の提案では、上記の人達に加え、
『医療や福祉に関する専門的な知識を持つ人も調査可能に』
という方針が出された次第です。
介護認定の新規申請や区分変更は、疾患や外傷的な原因によって日常生活に支障が出たことをきっかけに申請されることが多くあります。
つまり、多くの高齢者は介護保険の申請時には緊急的な状況にあることが予測されます。
そうした場合に、認定がおりるまで日数がかかってしまうと、ご本人やご家族も大変な状況になってしまうと言えるでしょう。
そのタイムラグの緩和のための調査員要件緩和の措置なのです。
とはいえ、介護認定の調査員は「ただ認定調査をすればいい」というだけのものではありません。
調査対象の方の日常生活動作や、認知機能だけでなく、ご家族の状況や環境、経済状況も視野にいれて幅広く検討せねばなりません。
また、調査時には出来るだけ、調査対象者を緊張させず自然体で受けられるよう促す技術も必要です。
調査員用件を緩和することはもとより、高齢者の方を認定する上での質を低下させない状態での緩和が必須課題となります。
また介護認定の区分変更は、介護施設や老人ホームに入居していても行われるものになります。
その場合には施設と連携している嘱託医の診断書や、常駐している看護師等の意見書なども提出することになります。
3.認定期間の延長と、調査員の要件緩和のメリット
このような期間の延長と調査員の要件緩和は、今後の高齢社会に対してどのようなメリットがあるのでしょうか?
まず期間延長から考えると、介護認定の変更がない人に認定調査員の時間が割かれなくなることから、自ずと人員が確保出来るというメリットがあげられます。
介護認定の変更がないという人は、機能回復の見込みが少ない、重度の要介護者が対象となります。
とはいえ、実際のところ介護度の変動が少ないと思われる重度の高齢者の方の人数が果たしてどのぐらいなのかは定かではありません。
介護認定者の中で一番人数が多いのは要介護3前後で、改善も増悪も想定される対象の方がほとんどです。
そのため、この期間延長がどのぐらいの緩和をもたらすのかは、まだ不明といったところです。
例えば愛知県名古屋市における介護認定人数をあげてみましょう。
■総人口:2,328,856人(2019年11月1日時点)
■65歳以上の第一号被保険者数:569,693人(2019年11月末日時点)
■要支援や要介護認定のある人:111,767人
■要介護5の認定を受けている人:9,218人
実際の65歳以上の高齢者の人数と比較すると、介護認定を持つ人は全体の約19.6%ということになります。
また、認定を受けている人の中で介護度別の割合でみてみると、要介護5の人は約8.1%となります。
一番多いのは要支援2の20.2%、要介護2の18.5%で、期間満了時前後に区分変更の可能性が考えられるレベルの人達です。
こうして考えると、期間の延長が介護認定期間短縮にどれほど効果があるのかはやや懸念が残る状況です。
とはいえ、調査員要件緩和に関しては認定期間短縮への大きな希望になる可能性があります。
例えば、医療者にスポットをあてた場合、看護師は調査員になれる可能性が考えられます。
例えば訪問看護師は、在宅介護の利用者様に対して毎月の看護プランを作成して、ケアマネージャーやその他福祉事業者と連携して利用者様をサポートしています。
高齢者のご家族の元に行って認定調査をする段取りなども、充分に把握できていると言えるでしょう。
精神保健福祉士や理学療法士、作業療法士なども、高齢者の認知症や四肢の可動範囲についての知識もあり、認定調査員になれる可能性があります。
先述したように、愛知県名古屋市だけで見ても認定調査をまだ受けていない高齢者の方が81.4%いることになります。
地域によって数値に差は出るでしょうが、傾向としてはさほど大きく変わらないでしょう。
そうなると、今後新規申請が増えることはほぼ間違いないでしょう。
現在認定調査員ではなくても、すでに医療・福祉分野で活躍している人達が調査員となった場合、増加する新規申請や区分変更への対応も出来、昨年度平均38.5日もかかった認定期間も短縮されることが期待出来ます。
おわりに…
2019年における日本の平均年齢は「47歳」というデータが出ています。
この数値から見ても、急激な高齢社会化が読み取れます。
厚生労働省が3年刻みで介護認定の有効期限見直しをかけるのは、むしろ当然のことと言えるでしょう。
一見大変なことばかりに見えてしまう高齢社会ですが、北名古屋市では高齢社会を「幸齢社会」と表現しており、素晴らしい視点だと感心した次第です。
「できない。無理だ」ではなく、「きっとできる。すべて可能だ」の視点で、これから訪れる幸齢社会を文字通り幸福な時代にさせたいですね。
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