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2019/10/21
コラム

介護拒否にどう向き合うか ~介護導入編~

自分に介護が必要になったとき、介護をスムーズに受け入れられる人もいれば、抵抗を感じる人もいます。

介護を受けることに抵抗感があると、「介護拒否」という行動が起こるケースがあります。

介護拒否が起こる時、介護を受ける側の気持ちの葛藤はもちろん、介護する側もどうしたら良いか分からず焦ったり、思うようにいかない事に苛立ちを覚えたりと、お互いネガティブな気持ちになってしまうことも多々あるでしょう。

今回は、介護に拒否感をもつ高齢者との向き合いかたを考えてみましょう。

【目次】

1.介護拒否はどんな人がしやすいのか
2.どんな対処法があるのか
3.大切なのは、高齢者のことも自分のことも“責めない”こと

 

1.介護拒否はどんな人がしやすいのか

 

 

介護拒否をするお年寄り

介護拒否をするお年寄りは、ワガママで介護を受け入れないわけではありません。

介護を拒否するには、それなりの理由があるのです。

まずは、どうして介護を拒否するのか、お年寄りの立場に立って考えみましょう。

 

介護拒否をしやすい人には、大まかに分けて3つのタイプがあります。

■タイプその① 自尊心が高い人や、こうあるべきという思い込みが強い人 

人の世話にならなくても、自分のことくらい自分でできると思っている場合、介護を受け入れにくくなります。

また、介護されるのが恥ずかしいと感じて拒否するケースもありますし、介護を受けることで家族に迷惑をかけていると申し訳なく感じることで介護を受け入れられないケースもあります。

 

■タイプその② 認知症によって状況が理解できず、怯えや不安を感じている 

認知症になると周りを理解する能力が衰えて、判断力が低下します。

このため、なぜ自分が介護されるのか理解できないために、混乱してしまうのです。

 

たとえば食事の介助を嫌がる場合、認知症によりそれが食べ物だと認識できないため、何かわけのわからない物を無理やり口に押し込まれると感じて怯えることがあります。

このほかにもが症状を改善することが理解できず、薬を飲むのを嫌がったり、お風呂に入ると身体が清潔になり気持ち良いことが理解できずに入浴介助を拒否するなどの行動が見られます。

 

このように、認知機能の低下によって、「自分の状況」と「相手の行動」と「目的」がうまく結びつけられないため、訳が分からずにパニックになったり、拒否反応が出てしまうのです。

 

■タイプその③ 自分の調子が良くないことをうまく伝えられない 

高齢になると身体の機能が衰え、抵抗力も弱くなります。

が見えにくい、がほとんど聞こえないという人も多く、人とのコミュニケーションが困難になるため、介護者との会話を面倒に感じることで、介護も拒否しがちになります。

 

また、入れ歯が合わないお年寄りも少なくありません。

このため物を噛むと痛いと感じている場合やうまく噛めないなどの理由で、食事の介助を拒否することがあります。

この他にも、口内炎が原因で痛みを伴う、うまく飲み込めない、胃腸が衰えて食事をすると疲労を感じるなど、お年寄りは食事をするだけでもひと苦労なのです。

 

介護拒否がある場合、どこか体調が悪いのでは?と疑ってみましょう。

体調不良は、服用しているによっても起こります。

強い眠気を感じる、頻尿が原因で脱水症状を引き起こすなど、薬によっては副作用がでることがあります。

 

また、複数の薬を服用している場合、飲み合わせが悪いと体調不良の原因になる危険性があります。

自己判断で危険な飲み合わせをしていないかも、注意が必要です。

 

2.介護拒否に対して、どんな対処法があるのか

 

介護拒否の対処法

では、実際に介護拒否が起こったら、どのように対処すれば良いのでしょうか。

対処の方法は、介護拒否のタイプによって異なります。

 

 自尊心が高く、まだ介護は必要ないと考えているお年寄りの場合 

・介護や介助が必要であることを伝えて理解してもらう

・どうしても理解できない時は、介護の無理強いはせず、本人の思うようにさせて、一旦見守る

 

しかし、見守るといっても一人ではできないことも多いですから、日常生活に支障がでます。

このようなときは本人を責めない

そして、行政サービスや介護の専門家に相談することをおすすめします。

家族のいうことは聞かないけれど、ケアプランナーなど介護のプロからの説明には耳を傾ける場合があるらです。

 

特にプライドの高い男性の場合、その傾向が強いようです。

介護では本人の気持ちに寄り添い人の尊厳を奪わないことが何よりも大切です。

何もできないと決めつけないで、まずは本人の意思を尊重しましょう。

 

例えば、今日着る服は自分で選び、着替えの後にそれをチェックしてもらったり、食事の献立を考えてもらうなど、本人が決められることは、どんどん任せましょう。

こうすることで、この人は自分の意思を大切にしてくれると感じ、信頼関係が芽生えていきます。

結果として、介護拒否が弱まっていくケースが多いのです。

 

 認知症で介護が必要なことが判断ができない場合 

・無理強いはNG

・これから何をするのかがわかるように、話しかけながら行うことで不安を和らげる

・介護拒否でパニックになったり、感情的になった時は少し様子をみて、本人の気持ちが落ち着くのを待つ

 

無理強いをすると、今以上に不安や怯えが増大して、ますます拒否が強くなることがあります。

これからどんなお手伝いをするのか説明しながら介護することで、ご本人も状況を理解しやすく、恐怖感などを抑えることができます。

 

いきなり、「さあ、お風呂に入りましょう!」「食事をしましょう!」と言われても、突然なぜ?と驚いてしまいます。

 

「もう少ししたら正午ですね。ご飯の準備ができたら声をかけるのでいっしょに食べましょうね。」

「今日は暑かったですね。汗をかいているなら、お風呂に入ってさっぱりしませんか?」

 

など、次に何をするのかが理解できるよう話しかけることを心がけましょう。

目の前のものが食べ物であることが理解できずに食事を拒否する場合は、まずは自分が一口、口にいれて食べているところを見せて、食べ物であることを理解してもらうとよいでしょう。

介護のひとつひとつの動作について、自分でしてみせたり、口で説明したりすることで、拒否感を薄れさせる効果があります。

 

たとえば、
「これから体をきれいするために石鹸で洗いますね……。」

「石鹸を落とすためにお湯を流しますよ……。」

「お湯は熱くないですか?」

などなど、絶えずコミュニケーションを取りながら介護をすると、介護を受ける際に安心感が生まれます。

 

3.大切なのは、高齢者のことも自分のことも“責めない”こと

 

 

介護拒否と向き合う上で大切なこと

介護拒否をされると、ついお年寄りを叱ったり責めたりしてしまいがちです。

特に忙しかったり、時間に追われていたりすると介護者はますます焦ってしまいます。

このため、ワガママいわないで!ぐずくずしないで!早くして!などと叱ってしまうこともあります。

 

それと同時に、自分が嫌われているのでは?未熟なのでは?叱って申し訳なかった……などと、

自分のことを責めてしまう人も多いでしょう。

しかし、介護では相手のことも、自分のことも責める必要はないのです。

 

お年寄りは叱られると、それが怖くてますます介護を嫌がることがあります。

責めること、叱るこは、介護する上で逆効果なのです。

 

まずは、相手の気持ちを受け入れることから始めましょう。

「天気が良くて洗濯日和ですね。パジャマを洗うので着替えませんか?」

「急がなくても、ゆっくりでいいですよ。」

「食欲がないようですが、入れ歯の調子はどうですか?」

 

などなど…

相手の気持ちに寄り添って、相手の状態を観察しながら、介護を進めていきましょう。

それでも介護を拒否されて、自分ではどうにもならないと思ったら、一人で悩む必要はありません。

お住まいの地方自治体の介護保険課地域包括支援センター居宅介護支援事業所などに相談するのが良いでしょう。

また、老人ホームなどの介護施設相談する方法もあります。

 

おわりに…

介護拒否はお年寄りご本人も、介護をする家族もどちらもつらい状況です。

なるべく相手の気持ちを受け入れながら、介護を受け入れてもらえるよう、コミュニケーションをとっていきましょう。

しかし、介護拒否で追い詰められるまで、一人で悩みを抱え込むのは禁物です。

まずは役所の介護保険課などに相談することをおすすめします。

また、愛知県名古屋市には老人ホームをはじめ、多くの介護施設があります。そちらに相談するのも1つの方法です。