園芸療法は、自然や植物を利用してストレス軽減や生活改善を図る民間療法です。医療や福祉分野などで、植物を育てたり生け花などの創造活動を通じたりして、意欲回復や生きることへの喜びを支援します。

本記事では、老人ホームで行われる園芸療法について、目的や期待できる効果をご紹介します。

老人ホームで行われる「園芸療法」とは？

老人ホームでは近年、活動の一環として園芸療法が取り入れられています。まずは園芸療法の目的ややること、家庭菜園との違いを説明します。

園芸療法の目的

園芸療法の目的は以下の内容です。植物を育てる、理解する活動を通して、入居者の心身や社会的な健康の維持・回復を図ります。

・リラクゼーション効果
・生きがいづくり
・運動機会の獲得
・生活のリズムの改善
・社会性の維持・向上
・外出の機会
・認知症の進行を予防

園芸療法でやること

園芸療法では植物（花や食べ物）を育てたり、育てた植物を使って創造活動（フラワーアレンジメントや生け花など）を行ったりします。「療法」と名前にありますが、特別な園芸方法を行うわけではありません。

園芸療法と家庭菜園の違い

園芸療法と家庭菜園の違いについて、実際にやる内容は同じです。園芸療法は、活動を通して生活の質の改善や回復を目指すなど目的を持って計画的に行います。一方家庭菜園は楽しむだけであり、活動に特別な意図はありません。

園芸療法で期待される効果とは？

園芸療法では、認知症や身体機能への効果が見込めると言われています。詳細を各項目で解説します。

身体を動かことでリハビリになる

園芸療法では種をまく、土を耕す、水やりをするなど様々な工程で手足を思う存分動かすため、リハビリになります。単に「手を動かす」「足を動かす」とは違い、目的を持って身体を動かすことで脳を活性化させ、認知症の進行を予防する効果もあります。

行動を起こすモチベーションになる

老人ホームに入居すると、家族や知り合いと会えない寂しさや孤独感から心身共に弱ってしまう方がいらっしゃいます。園芸療法には園芸に参加することで生きがいを見出し、行動を起こしてモチベーションを上げるきっかけを作ります。

ポジティブな感情を引き出せる

園芸療法を行うことで、入居者に「次は○○を育てたい」「育てて料理をしたい」などのポジティブな感情を引き出せます。入居前に農家や家庭菜園などをしていた方は特に、元気に身体を動かしていた記憶がよみがえり、積極的に発言や行動を起こす場面も見られます。

他者とのコミュニケーションの場をつくれる

園芸療法は、他入居者とコミュニケーションを取るきっかけになります。なかなか自分から話しかけられない入居者も、植物を通じて自分から話しかけたり、積極的に自分の意見を発言したりする方もいらっしゃいます。

季節感の維持・向上につながる

老人ホームに入居すると外出の機会が減るため、外の空気を感じる時間がありません。空調の効いた室内で過ごし続けると、季節感がなくなってしまう方もいらっしゃいます。季節に寄り添った植物を育てることで、季節感の維持・向上につながり、季節の経過を感じられるようになります。

五感をリフレッシュできる

植物には、五感を刺激する要素があります。五感を刺激することで心身の健康と幸福感が得られ、気持ちをリフレッシュできます。

・視覚：植物の彩り
・聴覚：葉っぱがこすれる音
・触覚：花の柔らかさ
・味覚：自分で栽培した食べ物
・嗅覚：花のにおい

まとめ

老人ホームで行われる園芸療法は、目的を持って行うことで入居者の生活の質を向上させ、認知症の進行を予防する効果があります。また、他者と関わりながら植物に触れる機会は、コミュニケーションの場を広げることや、リフレッシュなどにつながり、心身共に良い影響をもたらします。施設によっては、庭や庭園を設けているところもあり、園芸療法を行っているものもあります。ご自宅で家庭菜園などを楽しまれていた方にとっては、身近に植物を感じられる環境を好む方もいらっしゃると思います。施設探しのポイントに加えてみてもよいかもしれませんね。

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