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ケアまどニュース
倒産相次ぐ介護事業所の閉鎖、あなたの施設は大丈夫?
介護のニーズの高まりに伴い、老人ホームなどの介護施設が次々とオープンしている一方で、利用している介護事業所が閉鎖してしまい、利用者もそのご家族も困ってしまうという事態がたびたび起こっています。
デイサービスなどの通所型のサービス利用者であれば、ほとんどが拠点は自宅にありますが、入所型施設を利用している高齢者の場合は、閉鎖するまでに次の住まいとなる老人ホームを探さないといけませんので、かなり厳しい状況となります。
要介護者も介護施設のニーズも増えているのに、どうして施設が閉鎖、倒産してしまうのでしょうか。
その理由を知るとともに、万が一自分がそんな状況に直面したらどうしたらいいかを事前に考えておくことが大切です。
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厳しい介護業界全体の実情
日本において、介護業界の実情はかなり厳しいと言わざるをえません。
まず、高齢者の数が増加し超高齢化社会になっていくとことは避けようのない事実です。
そして、そうした高齢者を受け入れる介護施設やそれを支える介護スタッフの数を充実させる必要があります。
しかし、現実的には十分な数の介護スタッフ、特にノウハウと知識、経験を持つ質の高い介護職員は圧倒的に不足しています。
介護付き有料老人ホームのような国で人員基準が定められている施設では、その基準は満たされているはずですが、介護職は離職率も高く、綱渡りの人員確保にならざるを得ず、経験が豊かなスタッフばかりとは限らないため、実質的にはスタッフにかかる負担が大きくなっています。
また、介護付き有料老人ホーム以外の施設の中には、どうしても十分な職員がまかなえず、少ない人数で夜勤をやりくりしたり、残業を余儀なくされるケースもあります。
職員の足りない施設では、1人あたりの職員にかかる負担は大きくなっています。
介護スタッフの質と人数がなかなか思うように増えていかないのには理由があります。
まず、介護事業所が適切な環境を整えられていなかったり、運営方法に問題があったりと、仕事がしにくいと感じるスタッフが多くいるという理由があります。
老人ホームという箱モノを作っても、きっちりとした運営方針を構築できていないのであれば、働く人に負担がかかるばかり。
また、仕事の大変さに見合った給料が支払われていないと感じている人が多いのも、介護従事者が思うように増えていかない理由となっています。
他にも、介護施設そのものの運営がうまくいっていないケースも多く見られます。
2018年では、介護事業所の倒産が多く見られ、全体では108件もの倒産がありました。
その内容を見ると、新規施設を建てたにも関わらず採算が取れなくて負債が溜まっていくという経済事情が見えてきます。
特に負債総額が5000万円未満で倒産する割合が高く、中小規模の老人ホームが立ち行かなくなって倒産してしまうという傾向が見られます。
介護人口が多い愛知県名古屋市でも、こうした中小規模の介護事業所は多く、倒産とまではいかないまでも、経営が苦しいと感じているところが多いのも事実です。
需要があるはずの老人ホームがなぜ倒産してしまうか
現在の日本は、全人口の5人に1人は介護が必要となっている状況です。
そして、この割合はさらに高くなるのが確実視されています。
つまり、介護施設、介護スタッフのニーズは非常に高く、これからも伸びていくはずです。
しかし、実際には上記の通り、老人ホームや小規模の介護事業所が倒産、閉鎖されてしまうケースが相次いでいます。
この背景には、しっかりとしたノウハウのない事業者が、いわば見切り発車で新規介護施設を作ってしまうことにあります。
今後介護のニーズが高くなる、介護報酬は国によって保証されているので安定した収入が得られる、介護の仕事は未経験からでも始めやすいというイメージがありスタッフも集めやすいはず。
そういった安易な考えから新規事業に飛びついて介護施設をオープンさせるのです。
しかし、実際に介護事業を始めてみると、介護スタッフがなかなか集まらず仕事がうまく回っていかなかったり、職員の少なさから利用者の受け入れ人数を制限しなければならず空きベッドが長期に発生するなど、運営に大きく影響のあるトラブルが発生してしまうのです。
また、細かな業務運営のノウハウがありませんので、業務上のトラブルが生じやすくなり、嫌気が差した優秀な人材が辞めてしまうということも多くあります。
すると、仕事のできるスタッフがどんどん少なくなってしまい、さらに仕事が厳しくなり、環境が悪くなった施設からはさらに他のスタッフも出て行ってしまうという悪循環が生じてしまいます。
新築のきれいな建物があっても、ケアの質が落ちて信用を無くしてしまうと、利用者も離れていってしまいます。
こうして、ただでさえ効率の悪い経営をしていたところに、収入は激減していきますので、負債を抱えるようになり倒産に追い込まれるのです。
もしも自分の入所する施設が閉鎖することになってしまったら
こうした事業所の倒産、閉鎖はどの地域においても珍しいことではありません。
もちろん、すべてがこのようなケースばかりではなく、優秀なスタッフがそろっているのにも関わらず、介護施設の運営母体そのものの経営が悪く、いい老人ホームとの評判を持っていたのに倒産してしまうこともあります。
そこで、万が一のことを考えて、入所している施設が閉鎖してしまったらどうしたらいいかを考えておくのは、いざという時の助けとなります。
まず、施設運営会社が倒産してしまっても、その同じ施設を引き継いで別会社が運営を引き継ぐというケースがあります。
この場合は、建物は一緒ですし、スタッフもそのまま引き継がれることがあります。
一見、単に経営者が変わるというだけの話ですが、以前の運営方法で赤字になったわけですから、新しい経営者としては、やり方を変えざるを得ません。
結果として、受け入れ基準が変わったり、サービスの内容が変わったりすることはよくあります。
また、運営方針そのものが変わって、より採算が取りやすい形になることは十分に考えられます。
入所者や家族にとっては、多少厳しい条件となることもあります。
そのため、経営者が変わる際には、以前と何が一緒で何が変わるのかをきちんと説明してもらうようにしましょう。
その上で、最初の数か月はあくまでお試しで見てみるという意識を持ち、もし利用者にあったサービスを受けられないということであれば、他のところに移る可能性も意識しておいた方が良いでしょう。
引き継ぐ業者がいない場合には、すぐにケアマネや専門家に相談しましょう。
完全に閉鎖されるという可能性がある場合も、早めに相談して次の受け入れ先を探してもらうことが欠かせません。
一つの施設が閉鎖されると、一気にたくさんの要介護者が移動することになりますので、できるだけ早めに行うことが重要です。
お金のトラブルも生じやすくなりますので、やはり早い段階で施設側、そして行政やケアマネにお金のことも相談して、事前に支払っていた返ってくるべきお金がいくらになるのか、いつどのように返金されるのか、転居に伴う費用の補償はあるのかなどを確認するようにしましょう。
介護施設の倒産・閉鎖は、利用者への影響の大きさを考えると、本来、あってはならないことです。
利用者ができることは、介護施設を選ぶ際、十分に検討を重ねて、サービス内容や料金だけでなく、運営会社の経営状況やこれまでの実績なども確認しておくことしかありません。
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