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2019/03/11
コラム

長寿医療研究センターに認知症・フレイルの研究拠点、2022年開院へ

国は認知症を持つ高齢者をケアするために、地域単位でより充実した体制を整える施策を採っています。

それがオレンジプランと呼ばれるものです。

ここ愛知県でも、様々な取り組みを行っていて、あいちオレンジタウン構想(https://care-mado.jp/2018/11/15)を策定しています。

 

その構想は名古屋市を始めとし、様々な地域で進められていきますが、その中心的シンボルとなるのが、愛知県大府市にある「国立長寿医療センター」です。

そこでは、フレイルと呼ばれる、加齢や病気などによる心身の機能の低下についての研究など、たくさんの研究がなされていきます。

 

そもそもフレイルって何?

 

加齢に伴い現れる注意すべき身体的、精神的なサイン フレイル

 

フレイルというのは、「老衰」などを指す英語から来ていて、主に加齢に伴って現れる注意すべき身体的、精神的なサインのことを指します。

具体的には、歩行スピードや握力の低下などの筋力的なサインがあります。

 

他にも、一年間で4.5キロ以上、もしくは5パーセントを超える意図しない体重低下もそういったサインの一つと言えます。

さらには、強い疲労を感じてなにもしたくないと思うようになる日が、一週間のうち3日から4日以上あるというのも、このフレイルを考えるに当たって一つの基準となります。

 

フレイルにおいては、こうした身体的に見えるサインだけでなく、精神的な症状についても考慮すべきです。

たとえば、気力が低下してしまって、体はそれほど疲れていないのに何もする気が起きないベッドから出るのが非常に辛い日が増えてきているなどもチェックポイントとなります。

 

このように、フレイルは高齢に伴う、身体的もしくは精神的なサインを示すものとなります。

しかし、その特徴として注目すべきなのは、その性質を正しく理解して日々の生活を見直したり、専門機関からのアドバイスやケアを受けることによって、症状の重症化がストップしたり、改善していくことが可能であるという点です。

 

そのため、単に高齢によって身体的機能が低下していることをチェックするだけでなく、どのように回復するためのケアをしていったらいいのかを考えることがとても重要となります。

適切に高齢者の現状を評価、診断すると同時に、回復を促すためにできる方法を見出すことで、高齢者の社会復帰を促す助けとなるのです。

 

長寿医療研究センターに期待される役割とは

 

加齢に伴い現れる注意すべき身体的、精神的なサイン フレイル

 

現在、愛知県大府市にある国立長寿医療センターは老朽化のため、2022年の開院に向けて改装する計画が進んでいます。

ここでは、実際に認知症患者を中心とする高齢者を受け入れてケアを行うと同時に、上記のフレイルや認知症に関する研究を行うことになっています。

 

認知症は人によって症状が大きく異なることもありますし、改善するための具体的な手法がはっきりと見えてこないという現実もあります。

そこで、実際に症例を見ながら研究を続けられる専門的な医療センターがあるというのは、高齢化に伴う疾病の治療に道を開くものとなるでしょう。

 

この長寿医療センターでは、認知症やフレイルに関係する様々な症状を総合的に見て、そこから新たな発見、治療法の確立を行うことが期待されています。

 

加齢に伴う様々な変化は決して単一的でなく、脳の機能低下、神経系の不調、精神的なトラブル、全身の身体機能の低下など、かなり広い範囲に影響が及びます。

そのため、実際の医療現場では、神経科、内科、精神科、心療内科など異なる診療科でバラバラの治療を受けているのが現状です。

 

それぞれの分野の専門医による治療を受けられるのは良いことですが、それによって総合的な診断や治療が難しいという問題もあります。

そこで、この長寿医療センターでは、それぞれの診療科による診断や治療を統合することによって、より広い視野で認知症を見られることになります。

これが、認知症へのより良い理解と、治療法の開発につながると期待される理由となっています。

 

センターの建て替え具体的に何が変わるのか

 

フレイルとロコモの両角度から診る診療科

 

長寿医療センターは、50億円の資金を投入して整備が行われます。

このセンターの建て替えによって、診療科の再組織と研究部署の再編が実施されることになります。

具体的には、それぞれの関係診療科にフレイルという角度から患者さんを診る科と、ロコモという角度から診る科ができることになります。

 

フレイルとは、上記の通り全身の機能低下精神的な不調が見られる状態であり、先に述べたような総合的な診療が必要となります。

一方のロコモとは、骨や筋肉、関節などの機能に障害があり、歩行などが難しい患者さんのことで、運動器を中心に診察を行う科でケアがなされることになります。

 

再組織後大きく変わることとしては、研究組織の充実です。

たとえば、生き物の設計図である『ゲノム研究』がその1つです。

ゲノム研究は解析結果を臨床の現場に還元できる期待値が高く、個々人に適した診療法や治療法の開発にも役立ちます。

疾患に対する原因遺伝子を突き止めて、どのように治療に役立てることができるかについて、研究がすすめられることになります。

 

また、最新画像技術を研究する部署にも注目できます。

認知症は脳の働きに異常が生じることによって起きますので、その異常がどのように生じているかを、最新の画像処理機器を開発、使用することによってより正確で客観的な診断ができるようになります。

この画像技術を推進していくのが、この医療センターに設けられる研究部署となります。

 

また、ロボット支援の研究もこの医療センターで行われることになります。

医療・介護業界は常に人手不足が深刻な問題となっています。

 

また、寝たきりの人を起こす、体の大きな男性を女性がケアする、認知症による周辺症状によって攻撃的になってしまった人の対処をするなど、体力が求められる場面も多い仕事です。

こうした問題を解決するために、ロボットを使って介護をサポートすることはできないかという研究がなされることになります。

 

現在でも一部の現場でロボットが使用されるようになっていますが、それがさらに一般的に使えるようにする、またより効率の良い作業ができるロボットを開発するというのが一つの使命となります。

さらに、介護の現場では単に身体的なケアをするだけでなく、精神的なケアも必要となります。

ロボットでそのような感情的なケアができるのか、人間に代わる介護支援となりえるのかを見極めるのも、大事な研究テーマとなります。

 

超高齢化に向かう日本では、高齢に伴う様々な身体的また精神的な機能低下に、より適切な対応をする方法を見出す必要があります。

そのためには、より専門的で臨床現場とも深く結びついた研究が求められます。

 

こうしたニーズに応えるため、愛知県ではオレンジプランと呼ばれる構想が進んでいます。

その中心的な存在となるのが、大府市にある長寿医療センターの改装、整備です。

医療センターを改装して、新たな認知症、高齢者ケアの研究の中心とするのです。

 

今までは、症状によってバラバラの診療科で対応していたものを、統合してケア、研究することによって、より認知症についての研究が進むものと期待されています。

遺伝子研究やロボット支援の新たな開発なども行われますので、新しいジャンルにおける高齢者支援の研究も進んでいくことでしょう。

高齢者ケアについての研究は、日本においては非常に重要な分野ですので、こうした構想が着実に進んでいるのは評価されるべきことと言えるでしょう。