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ケアまどニュース
高齢者虐待数–介護主体の変化とともに増加傾向
高齢者の虐待件数は、高齢者が増加するのと並行して年々増加しています。
メディアでは老人ホームなどの施設職員による虐待が報じられることが多いですが、虐待に関する相談や通報の件数と、実際に虐待と判断された件数は、ともに配偶者や子などの養護者から受けるものが圧倒的に多く、その実情も時代の移り変わりとともに変化しています。
ここでは、現代における高齢者虐待の実態についてみていきましょう。
高齢者虐待の件数の推移
高齢者の虐待件数が増加していることは、市町村への調査によって明らかにされています。
例えば平成26年度をみると、相談・通報件数は25,000人を超えており、その内の15,000件以上が虐待と判断されています。
また、平成 28年度をみると、相談・通報件数は29,000人を超えており、その内の17,000件近くが虐待と判断されています。
この2年間だけを取ってみても、相談・通報件数、虐待認定数ともに増加しているのがわかります。
また、高齢者が要介護状態になると、介護施設に入所するか、自宅で家族などが介護するかのいずれかになるわけですが、このうち虐待が起きているのは圧倒的に後者です。
各年度に行われる調査によれば、家族以外による虐待は平成26年に約300件、平成28年に約450件であるのに対し、家族からの虐待は平成26年が15,000件、平成28年度は16,000件を超えるほどになっています。
ただし、いずれの数字も相談や通報などによって虐待の事実が明らかになったものであるということを加味すれば、実際にはもっとたくさんの人が被害にあっている可能性があると推測されます。
虐待を受ける高齢者の介護度と虐待の種別の関係
虐待と聞いて多くの人がイメージするのは暴力などの身体的虐待ですが、この他にも様々なものが虐待に含まれます。
例えば、勝手に財産を使い込み金銭的損失を与える経済的虐待、本人の尊厳を傷つける言動をする心理的虐待などです。
これらのなかで、もっとも多く発覚しているのは身体的な虐待であり、割合にすると65%を占めているといわれています。次いで多いのが心理的な虐待、その次が経済的な虐待と続きます。
また、高齢者の虐待には、介護度によって受ける虐待の傾向が異なるという特徴がみられます。施設に入所している高齢者を対象にみていきましょう。
認知症をもつ高齢者の場合には、認知症状に加えて生活自立度が低い人ほど身体的虐待を受ける傾向があり、逆に、生活自立度が高い人が受けやすいのは心理的虐待となっています。
自立度が低く認知症をもつ高齢者が受ける身体的虐待の数は非常に多く、その深刻さがうかがえます。
介護度の点から見てみると、要介護度が低い人ほど経済的虐待を受ける割合が多く、逆に身体的虐待は少ない傾向にあります。
逆に、介護度が高く寝たきり状態の人ほど身体的虐待を受けやすい傾向にあります。
同時に介護放棄も受けやすいという特徴もありますが、その一方で心理的な虐待を受ける割合は低いことが特徴です。
ただし、寝たきりの方のなかには言葉で意思疎通は測る事が難しい方も多く、本人が訴えることができないだけで実際は起こっている可能性も否定はできません。
養護者による虐待の傾向と原因
次に、在宅における養護者による虐待についてみていきましょう。
養護者とは高齢者を介護する人のことですが、一般的に多いのは妻や娘、息子の配偶者(嫁)などの家族で、これまでは圧倒的に女性がその役割を担ってきました。
しかし、ここ最近は息子や夫など、男性が介護するケースが増えてきています。
未婚者が増えてたことや、共働きの夫婦が増えたこと、親と別に住居を構える世帯が増えてきたことなどを背景に、息子や夫が介護するというパターンが増えてきているのです。
そして、それが虐待の増加とも関係しているといわれています。
男性の中でも特に虐待の問題が深刻なのは息子が親を介護しているケースです。
介護に慣れていない場合でも、ベッドから車椅子への移乗など、身体介助であればある程度力でカバーできるかもしれません。
しかし、問題は食事の用意など家事に関わる介護です。
それまで仕事一辺倒で来たという男性の場合は特に深刻で、家事経験が少ないにも関わらず、味つけ、栄養バランス、形態など高齢者に適したものを作るのは大変なことです。
親が息子に遠慮をして料理に口をだせない場合や、作り手がどうすることが正しいのか知らないまま、状態にあわない食事が続いてしまうということは珍しくありません。
こうしたことは誤嚥性肺炎などのリスクにもつながります。
また、身体的な介護に加え、慣れない家事でなかなか思うようにいかず、親から介護や家事について不満を言われてしまうことで、ついイライラして虐待に走ってしまうというケースがよくみられるのです。
そして、実はこうしたケースは一生懸命介護している人ほど起こりやすいという特徴があります。
厚生労働省の研究によれば、息子が介護した場合、女性が介護するよりも、親が自立した状態を維持してほしい、改善して欲しいと考える傾向があるそうです。
しかし、実際には日を追うごとにできることが少しずつ減っていくのが多くの高齢者の現実です。
男性はこの点に目をつぶりがちになってしまい、「どうしてもっと頑張れないのだろうか」と厳しくあたってしまったり、「こんなに懸命に介護しているのになぜ」とストレスをためてしまうのです。
カジメン、イクメンと家事や育児にいそしむ男性がクローズアップされてきたのはごく最近のことです。
介護を担うようになる男性は50代であることを考えると、家事や介護に不慣れな人が多く、こうした事態が起こってしまっていることも無関係とは言えないでしょう。
さらに、介護されるのが母親であった場合には、息子に手をあげられたとしても、「自分がこのような育て方をしてしまったのだ」などと自分を責めてしまい、それが虐待の発見の妨げになっているというケースもあります。
介護は終わりが見えないため、長期にわたる介護疲れやストレスを無視することはできませんし、認知症の重症化によって、これまで懸命に介護してきた人であっても、虐待という悲しい出来事が起こってしまうことがあるのです。
家族が加害者と被害者にならないためにできること
家族同士で加害者と被害者になってしまわないためには、さまざまな介護支援サービスを活用するのも一つの方法です。
例えば、日中はデイサービスに通ったり、お泊りのショートステイを利用すれば、その間にリフレッシュしたりと自分の時間を持つことが可能ですし、介助の方法や認知症の対応について介護を仕事とするプロにアドバイスを貰うこともできるかもしれません。
また、認知症についての理解を深める勉強会や認知症やその家族との交流の場である「認知症カフェ」に参加するのも良いでしょう。
他の家族と分担したり、介護保険などのサービスを利用しながら、できるだけ人と情報交換をしたり相談し合ったりして、1人で背負い込まないことが大切です。
そして、在宅での介護に限界がきていると感じた時には、無理をしてお互いが傷ついてしまわないために、施設への入所を考えるのも1つの選択肢でしょう。
老人ホームなどの介護施設はたくさんありますが、大切なご両親やパートナーのためにも、施設への入所を考える際には、施設の雰囲気や従事者について十分にチェックしてから決めるようにしましょう。
入所者の表情が明るく、従事者同士のコミュニケーションが取れているところが理想です。
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