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2018/10/22
コラム

進まない運転免許証返納、増える高齢者の買い物難民その①

高齢社会が進むに伴って、自動車事故の中でも高齢者による事故の割合が増えています。

そのため各都道府県では、適切な運転が難しくなった高齢者には運転免許証を自主的に返納するように求めていますが、毎日の生活で運転免許証がどうしても必要という高齢者は多く、そのために自主返納はなかなか進まないようです。

 

足腰が弱い高齢者にとっては、重たい荷物を持って歩くことは難しいため、食料品などの買い物に自動車は必要不可欠な手段ですよね。

バスが通っていないエリアなどでは特に、免許を失うことは死活問題にもなってしまいます。そのため、各自治体では、こうした高齢者の運転免許返納に向けての支援制度整備が求められています。

 

愛知県の事故件数の実態と運転講習での認知症診断

高齢者事故イメージ

愛知県では、交通事故による死亡者のうち高齢者の割合はなんと半数以上も占めています。

2017年度における交通事故死亡者は、県内では合計で200人でしたが、そのうち高齢者の死亡者は100人でした。

この死亡者の中には、歩行中の高齢者が交通事故に巻き込まれたケースもありますが、高齢ドライバーによって引き起こされた交通事故なども含まれています。

そのため愛知県内では、高齢者の交通事故防止が大きな課題となっているのです。

 

高齢ドライバーによって引き起こされる自動車事故は、大きく分類すると2種類あります。

一方通行や高速道路などの逆走、そしてアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故です。

 

一方通行や高速道路の逆走は、全体の70%は高齢ドライバーによるもので、特に高速道路の場合には自動車の走行速度が速いために死亡事故に繋がりやすく、少しの不注意がとても危険な事故につながってしまいます。

また、駐車場などでのアクセルとブレーキの踏み間違いも高齢者に多い事故ですね。他の車や歩行者に衝突したり、建物に突っ込んでしまったりすると、大勢の人を巻き込む死亡事故にもつながりかねません。

 

愛知県に限らず全国すべての都道府県では、70歳以上の高齢ドライバーには高齢運転者マークの表示を推進しています。

また、操作ミスが起きないよう意識的に安全運転を心がける事、時間と心に余裕を持って運転する事、体調がよくない時には運転しない等、日々の生活のなかで注意することを伝える工夫がされていますが、その他にも高齢者講習制度が平成29年に設けられ、75歳以上の高齢者ドライバーに対しては、認知機能検査が行われています。

 

この認知機能検査は、75歳以上なら免許更新のタイミングで受ける事が義務付けられますが、更新以外では一定の違反行為を行った時にも受けなければいけません。検査結果は、「認知機能に問題なし」「認知機能の低下の恐れがある」「認知機能が低下している」に分類されます。

 

認知機能に問題なしと判断されれば、問題なく免許の更新は可能です。

しかし、認知機能が低下していると判断された場合には、認知症の有無に関して、専門医に診断書を作成してもらう必要があります。

専門医から認知症と診断された場合、諸手続きを経た結果、自動車を運転することはできなくなります。

 

一方、専門医から認知症ではないと診断された方や、認知機能検査の結果、認知機能の低下の恐れがあるとされた方は、高齢者講習を受けることで更新をする事ができます。

高齢者講習は、ただ椅子に座って講習を受けるだけではなく、座学以外にも運転適性検査を行ったり、実車での運転講習を受ける事になります。

また、費用も一般の免許更新の時より多く必要になります。

 

進まない「自主返納」

高齢者の運転免許自主返納は、1998年から制度化されたもので、愛知県でも加齢によって判断力や身体機能が低下した高齢者に対しては、運転免許証の自主返納をすすめています。

年齢だけの理由で強制的に返納させることは難しいため、自分で運転する自信がないと感じた方や、家族などまわりからみて不安を感じるような場合には、自主的に返納することを推進しているのです。

 

しかし、愛知県は電車やバスなど公共の交通機関が便利な場所もあれば、マイカーがなければ日常生活が不便になってしまうエリアもたくさんあります。

そうした車が必要不可欠なエリアでも、単身高齢者はいるわけで、そうした高齢者にとっては、車がないと普段の生活が成立しないということになってしまうわけですね。

自主返納を推進していてもなかなか進まない背景には、そうした返納後の生活に対する不安や懸念などがあるのです。

 

また、自主返納が進まない原因の一つに、運転免許証がなくなってしまうと身分証明書がなくなってしまうという不安があります。

免許証を自主返納した高齢者ドライバーには、免許証と同じようなカードタイプの運転経歴証明書というものを発行してもらうことができますが、それ自体を知らない高齢者もたくさんいるため、今後は自主返納後に受けられるそうしたサービスや制度を広く理解してもらうことが自治体に求められています。

 

「自主返納」で受けられる優待サービス

運転免許証自主返納

高齢者ドライバーの運転免許証自主返納に積極的に取り組んでいる愛知県では、自主返納することによって受けられるサービスの内容がとても充実しています。

どこでどんなサービスを受けられるのかは、各市町村によって異なりますが、免許証を返納することによって発行してもらえる運転経歴証明書を高齢者交通安全サポーター加盟店で提示すると、様々な特典を受けることができます。

 

その中には、入浴施設やレストランで割引してもらうことが出来たり、スーパーで買ったものを自宅まで宅配してもらうサービスを利用する際の送料がディスカウントされたり、葬儀費用の割引なども含まれています。

大手ドラッグストアからスポーツジム、テーマパーク、宿泊施設や理美容院、クリーニング店など普段の生活で便利に利用できるものがたくさんありますよ。

 

また名古屋市ではその他に、マナカチャージ券5000円分が受け取れたり、タクシー料金が1割引きで利用することができ、65歳以上で受け取れる敬老パス(バス代や電車代が無料)と組み合わせれば、これまで以上に活発な生活を送ることもできます。

 

運転免許証を自主返納した後、普段の生活が不便になることを心配される方も居るでしょう。

しかし、予め自分の住む自治体や民間企業が行っているサービスを知っておくことで、返納後の不安は緩和されるのではないでしょうか。

 

また、外出先での買い物は、重たい荷物を持っての移動となるため大変ですが、生協やスーパーの宅配サービスを利用する方法もあります。

介護認定を受けている人や、新しく認定を受けた方であれば、介護保険を利用して、ヘルパーなどに支援してもらうことも可能なので、色んなサービスを上手く活用できると良いですね。

 

人間は誰でも年齢を重ねると、身体的に不自由な所が出てきたり認知機能にトラブルを抱えてしまうことがあります。

そうしたことが自動車の運転に影響すると、自動車事故の原因となりますし、自分が傷つくだけでなく、他人を巻き込んで大変なトラブルとなってしまうかもしれません。そうなってから気づくのでは遅いのです。

 

普段の生活から高齢者マークの表示や安全確認、余裕を持った運転を心がけると同時に、前もって自動車が無い場合にどんなサービスや優待が受けられるのかを調べておいて、然るべき時が来た時には不安なく返納できるように心掛けましょう。

また、高齢ドライバーの周りに居る家族や友人も、大切な人を守るために返納が必要と感じた時には、ただ返納を促すだけではなく、返納後の生活についてもアドバイスしながら声を掛けていきましょう。