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2018/10/08
コラム

生活保護と介護サービス

一定の生活基準に満たないと国が判断すると受給できる生活保護

高齢者にもたくさんの生活保護受給者がいます。

ここでは、生活保護介護サービスの関係についてご紹介しましょう。

 

高齢者の生活保護受給の実態

 

高齢者で生活保護を受給している人はたくさんいます。

生活保護を受けている162万世帯のうち80万世帯は高齢者世帯で、全体の約50%を占めています。

 

生活保護制度は高齢者のために作られた制度というわけではありませんが、年金の支給額が少なくなったり、単身世帯が増えて高齢者の核家族化が進んでいる現状を考えると、今後はもっと高齢者の生活保護受給者は増えると予想されています。

 

自営業を営んでいた人たちは国民年金に加入していますが、国民年金の支給額は満額でも毎月66,000円となっています。

この数字は、2世帯や3世帯で生活していた古き良き日本を想定した額なので、高齢者の一人暮らしを支えるために必要な金額を満たしているとはいえません。

 

生活保護を受給する条件は、「世帯の収入が基準額よりも低い」ということだけなので、収入源が年金なのか労働収入なのかという点は関係ありません。

そのため、年金を受給している高齢者でも条件を満たせば生活保護を受ける事は可能です。

生活保護受給者が受けられるさまざまな扶助

 

生活保護受給者は、さまざまな“扶助”と呼ばれる援助を受けることができます。

生活扶助や住宅扶助などは良く知られていますが、葬祭扶助や介護扶助、失業扶助など、その種類はたくさんあります。

例えば医療扶助という医療費に関する扶助では、生活保護を受けている人は福祉事務所に申請をすると医療券を発行してもらうことができ、指定されている医療機関で受診すれば医療券を提示することで医療費が免除となります。

 

高齢者が受給する年金は、住んでいる地域によって金額が変わるということはありませんが、生活保護は年齢、家族構成、障害の有無などに加え、居住地がどこかによって支給額が異なります。

例えば70歳、単身世帯の高齢者の場合、おおよその支給限度額は名古屋市で111,000円程、犬山市では98,000円程です。

これは、地域によって地価や物価などが異なるためです。

 

介護サービスは受けられるのか?

 

高齢者で生活保護を受けている世帯には、“生活扶助”や“介護扶助”という支援があります。

 

65歳になると介護保険における“第1号被保険者”となり、毎月介護保険料を納める必要があります。

この保険料は、年金収入で支払い可能な場合は年金から天引きとなりますが、そうでない人は生活保護費の“生活扶助”から支払われるため、高齢者本人にかかる自己負担は発生しません。

 

また、介護が必要とされる状態になった時に“要介護認定”を受け、その結果、「要支援」や「要介護」と認定され介護サービスを利用した場合には、利用者本人が支払う利用料の1割は“介護扶助”から支払われます。

つまり、介護サービスの利用料を「介護保険:介護扶助=9:1」で負担しているということです。

 

40歳~65歳未満の場合をみてみましょう。本来ならば、医療保険料に介護保険料を上乗せして支払うことで“第2号被保険者”となり、介護が必要になれば第1号被保険者と同じように利用料の一部を負担することで介護サービスを受けることができます。

しかし、医療保険適用外となっている生活保護受給者はこの支払いを行っていません。

 

もし生活保護受給者が、介護が必要な状態となった場合はどうなるのでしょうか。

この場合、介護申請をして認定を受けると介護保険の「みなし2号」となり、第2号被保険者と同様にサービスを受けることができます。

 

ただし、生活保護受給者は保険料の支払いが無いため介護保険の被保険者ではありません。

よってサービスにかかる費用は介護保険からは支払われず、全額自己負担となります。

この自己負担金は“介護扶助”から支払われるので、「介護保険:介護扶助=0:10」となるわけです。

 

つまり、生活保護受給者であってもその人に必要な介護サービスはきちんと受けることができるということです。
※40歳以上65歳未満の方は、特定16疾病該当者のみが申請することができます。

 

老人ホームに入ることは可能なのか?

 

生活保護を受給している高齢者世帯でも、老人ホームに入居することは可能です。

しかし、どこでもOKというわけではありません。

なぜならば、入居するホームの家賃が生活保護の住宅扶助で決められている金額の上限以内である事、そして生活費としてかかる費用も生活扶助で決められている上限以内に収まる事が条件となるからです。

 

こうした中、まず候補にあがってくるのは特別養護老人ホーム(特養)でしょう。民間型施設の月額の平均がおよそ15~30万円なのに比べ、特養ではおよそ6~15万円と利用料だけでもかなりの差があります。

また、民間型施設には入居金が設定されている場合がありますが、特養にはそれがありません。

 

お住まいの市区町村へ申請をすることで、所得に応じて食費や部屋代が軽減される制度も特養では適用になるので、金銭的負担を少なく入所することができます。

 

また、認知症を患っている高齢者でも入居できる点も安心材料の一つですね。

 

もう1つはケアハウス(軽費老人ホーム)という選択肢です。

ケアハウスには3つのタイプがあり、介護サービスは受けられないが、食事提供、入浴の準備のような日常生活のケアが受けられる“A型”。

A型とほぼ同じだがが食事提供がない“B型”。

 

A型のような日常生活のケアに加えて施設サービスとして介護が受けられる、もしくは外部サービスを依頼することで介護が受けられる“C型”です。

C型のケアハウスは介護の必要性に応じて一般型と介護型に分かれており、一般型に入居できるのは60歳以上の高齢者(夫婦で入居する場合はいずれかが60歳以上)。

対して介護型では、65歳以上の高齢者でなおかつ要介護度1以上が入居の条件となっています。

 

ケアハウスでは、初期費用として保証金を支払う必要があり、これは賃貸住宅の敷金にあたるもので、退去する際は家賃の滞納分や清掃・修繕費を除き返却されます。

ただ、施設によっては、保証金が無い施設や施設ごとに保証金の額に差があるので、あらかじめ調べるとよいでしょう。

 

月額料金についてはタイプごとに異なり、また収入に応じても変動がありますが、全国平均でみると10万円程度となっています。

ただし、特養やケアハウスは入居希望者が多く、民間型施設に比べて施設の数が少ないため入居希望の申し込みをしてもすぐには入れず、数か月~数年の間入居待機者として待つ可能性があります。

 

また、特養は原則として要介護3以上の認定が必要で、介護状態などの身体的状況、環境的要因を考慮して入居の優先順位を決めているため、申し込みをした順番で入居できる訳ではないので注意が必要です。

 

こうした公的施設に入れない高齢者の受け皿となるのが、近年増えている有料老人ホームなどの民間型の介護施設です。

民間型施設を選ぶときには、先に述べた扶助の上限金額に家賃や生活費が収まるかどうかに注意しながら施設を探す必要があります。

 

具体的にこの住宅扶助と生活扶助がどのぐらいの金額なのかという点ですが、生活保護の支給上限額は住んでいる地域によって異なるため、住宅扶助生活扶助も同様に地域によって異なります。

例えば高齢者の単身世帯の場合には、家賃扶助は毎月約2.2万円~5.4万円となるので、老人ホームの家賃はこの金額に収まらなければいけません。

 

また、生活扶助は平均すると毎月6万円~7万円程度となります。

これら2つの扶助の合計、約10万円前後がひと月の利用料の1つの基準になるわけです。

 

現在、全国の有料老人ホームの約60%では生活保護受給者に対応した料金プランを設けており、入居金0円で月額負担も少ない施設も存在しています。

また、郊外では都市部よりも家賃などが低めに設定されている場合もあります。

 

ただし、施設によっては生活保護を受給している入居者の受け入れを制限していることもあるため、探している時に受け入れ可能な施設がない場合には、入居申し込みを行って待機者として空きが出るまで待つということになります。

年金を受給しながら生活保護も受給する高齢者世帯は、現在では生活保護受給世帯全体の50%を占めていて、今後はさらに増加すると予想されています。

そうした高齢者でも、生活保護制度による生活扶助や介護扶助によって、必要に応じた介護サービスを受けることはできますし、在宅での生活が難しくなれば老人ホームへの入居も可能です。

生活保護受給者だからと言って介護サービスをあきらめる必要はありませんので、必要を感じたら担当のケアマネージャーやケースワーカーへまずは相談してみましょう。