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ケアまどニュース
世界アルツハイマーデー
国際アルツハイマー病協会(ADI:Alzheimer’s Disease International)は、世界保健機関(WHO:World Health Organization)と共同して毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」とアルツハイマー病についての知識や理解を深めてもらうための活動を実施しています。
また、毎年9月を「世界アルツハイマー月間」とし、アルツハイマーについての理解を広め、深めるための取り組みを続けています。
なぜ9月21日なのか
世界アルツハイマーデーについて説明すると、そのはじまりは1994年にさかのぼります。
この年の9月21日から、英国スコットランドの首都エジンバラで、第10回アルツハイマー病協会国際会議が開かれました。
2017年に京都で第32回大会が開催されたことで注目を集めた、あのアルツハイマー病協会国際会議です。
この第10回アルツハイマー病協会国際会議を記念して、9月21日は世界アルツハイマーデーとなりました。
アルツハイマー病等についての認識を高めて、世界中のアルツハイマー病患者のみならず家族にも希望と援助を、という目的で制定されています。
また、2012年からは毎年9月が世界アルツハイマー月間と定められました。
世界各国ではどんな取り組みをしているのか
アルツハイマー病国際会議によれば現在、全世界にアルツハイマー病の患者は約4800万人。
急激な高齢化に伴い、21世紀半ばまでには1億3000万人に達すると試算されています。
いわゆる認知症は、単一の病名ではなく総合的な状態の呼称であり、その大半はアルツハイマー病によるもの(アルツハイマー型認知症)だと言われています。
世界では、急増するアルツハイマー患者に対して、どのような取り組みをおこなわれているのでしょうか。
各国の動向を概観します。
<アメリカ>
巨大製薬会社がしのぎを削るアメリカの製薬企業。
たとえばバイオジェン社は、チューリヒ大学とのチームで新薬候補である「アデュカヌマブ」の臨床試験をし、アルツハイマー患者の脳に作られる蛋白質アミロイドの蓄積を減らすことに成功したと発表し、注目を集めました。2016年のことです。
しかし本年、メルク社やファイザー社などの製薬会社が、アルツハイマー病治療薬の研究開発を次々に打ち切るということもありました。
新薬開発には莫大な費用と時間がかかりますが、現状はアルツハイマー病に対する投薬治療の効果は、病状の進行を遅らせることしかできていません。
抜本的な治療につながる成果が得られず、研究継続は困難と判断して撤退する企業も増えています。
<イギリス>
一方、イギリスの研究機関は希望的な見解を明らかにしています。
慈善研究機関アルツハイマーズ・リサーチUKは、アルツハイマー病のワクチンが10年以内に、治療薬に至っては3年以内に開発されるだろうとの見解を発表しました。
同機関のリチャード・レイノルズ博士は、臨床試験の最終段階にある治療薬が12種類もあると説明しています。
テレグラフ紙によれば、これらの中には病気そのものを治療できる薬が含まれるとのことで、さらにワクチンも開発されているようです。
このワクチンにはアルツハイマー病の70%を予防する可能性があるとのこと。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン認知症リサーチセンターのジョナサン・ショット教授は、「アルツハイマー病治療薬の入手は『もし』ではなく『いつ』を論じる段階にある」と希望を語っています。
<中国>
中国でも希望のあるニュースがあります。
製薬会社グリーンバレーが今年、中国国家医薬品監督管理局に対し、Sodium Oligomannurarate (GV-971) Capsulesという新しい薬品の申請を提出する計画であると発表し、注目されています。
現在、この薬は臨床試験で軽~中等度のアルツハイマー病に対して有効性と安全性が確認され、2018年末には販売承認申請を行う計画とのことです。
<オランダ>
首都アムステルダムに「ホグウェイ(Hogewey)」という認知症ケアのための先進的な施設があります。
ここはかつてごく普通の介護施設でしたが、現地の介護スタッフらが「病院のようなところではなく、自分自身もいつか生活したいと思えるような施設を」という思いから、建て替えをおこなってホグウェイを開設しました。
塀で囲まれた約1ヘクタールの敷地は一種の「村」のようなもので、スーパーやレストラン、スポーツジム、美容院、映画館などがそろっています。
スーパー等で働く職員も全員が介護士であり、トラブルに備えています。オランダの充実した社会保障制度により費用も制度で賄われています。
<フランス>
南部のダクス近郊でも「アルツハイマー村」の建設が始まりました。
アムステルダムのホグウェイの実験を踏まえたこの施設を、ペレグリン大学病院のジャン・フランソワ・ダルティーギュ教授は「社会生活に住民が参加し続けられる」ようなものを村に設置すると話しています。
2019年までに120人ほどの患者を受け入れる予定です。
面積ではオランダのホグウェイの7倍にあたる約7ヘクタール。
この土地を中央広場を中心に4つの区画に分け、ホグウェイ同様にスーパーや美容院など各種施設を設けて社会的交流を促す計画。
また精神的孤独感を和らげるために訓練された犬も飼育します。
さらに研究施設を設置し、実験結果を従来の介護施設の主張と比較して研究する体制がとられています。
<スペイン>
2013年、漫画家バコ・ロカ氏の原作をもとに、イグナシオ・フェレーラス監督によって「しわ」という長編アニメーション映画が製作されたことが思い出されます。
認知症の兆候が見られたことから老人養護施設に入所した主人公が、老いの現実と向き合う物語。高齢化社会のシビアな現実を描き高く評価されました。
日本でも全国公開され、高畑勲監督がコメントをするなどして話題になりました。
研究の面では2015年、うつ病と認知症との関連性が調査されました。
その結果、重度のうつ病であった人は、うつ病を発症していなかった人と比較して、アルツハイマー病の発症率が3.59倍もあることが判明し、うつ対策がアルツハイマー病との関連でも急務であることが示されました。
<ドイツ>
ドイツはアルツハイマー病発見の地です。
フランクフルトの精神病院で、著名な精神医学者クレペリンの直弟子でもあったアルツハイマー医師が入院患者のある婦人を診察したことが、アルツハイマーの最初の症例とされています。
そのドイツで興味深い研究が行われました。
2015年にドイツ神経変性疾患センター(DZNE)の研究チームが、18~30歳の被験者に仮想現実の迷路を攻略させ、神経細胞の動きを検査しました。
その結果、アルツハイマー病発症の遺伝的リスクが高い被験者は、他の被験者と異なった迷路の通り方をしており、また空間把握に関わる脳細胞活動も低下していたという結果が得られたのです。
研究リーダーのルカツ・クンツ氏は、アルツハイマー病の空間識失調について神経認知の面から説明できる可能性、また前臨床研究に新しい基本的枠組みをもたらせるなどの展望を持っています。
日本ではどんな取り組みをしているのか
厚生労働省が2012年に試算したところによると、認知症の人は462万人。
その大半がアルツハイマー型であるとされています。
これは日本人の高齢者の約7人に1人に当たります。
いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者の75歳に達する2025年には、約700万人(約5人に1人)の認知症患者を抱えることにもなるとのことです。
認知症介護の問題を少しずつでも改善していくことは、急務であると言えるでしょう。
たとえば愛知県の国立長寿医療研究センターでは、「発症メカニズムの解明」「新薬の開発」「血液検査によるアルツハイマー病の診断」という3テーマで研究を重ねています。
また東北大学大学院で循環器内科学分野の下川宏明教授らの研究グループは、LIPUS=低出力パルス波超音波を使用した治験を行いました。
アルツハイマーに対するものとしては世界初の超音波治療の医師主導治験です。
同グループは虚血性心疾患に対するLIPUS治療の動物実験中、LIPUSの全脳放射によって進行性の認知機能低下を抑制する働きがある可能性を見出しました。
アルツハイマー病の薬物治療では、不要な物質が脳組織に入り込むのを防ぐ血液脳関門と呼ばれる体内機構が、文字通りの関門となっていたのですが、超音波による治療が実現されればこの問題を回避できるため、期待が持たれています。
また各自治体では、超高齢社会の進展に伴い、認知症に対する啓蒙や援助活動などを繰り返し行っています、アルツハイマー病という単独の病気というより、認知症という状態に対して地域でどう対応するかという視点での取り組みですが、交流会や相談窓口の開設などが活発に実施されています。
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