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ケアまどニュース
老人ホームで耳にする「パーソン・センタード・ケア」利用者と職員双方に与える影響
認知症の利用者を受け入れている老人ホームや介護施設では、徘徊や異食、不穏など認知症の周辺症状への対応に苦慮することがあります。そのような認知症の利用者への対応の手法として、「パーソン・センタード・ケア」が取り入れられるようになりました。ここでは、パーソン・センタード・ケアの考え方と、具体的な方法、職場風土に与える影響についてご紹介します。
パーソン・センタード・ケアとは一人の人間として扱う認知症ケア
パーソン・センタード・ケアとは、高齢者を単なる認知症の症例ではなく、一人の個人として尊重し、尊厳を保ちながらサポートすることを目指す考え方のことです。1980年代にイギリスの心理学者トム・キットウッド氏が提唱し、2000年頃から世界的に知られるようになりました。
従来の認知症ケアでは、認知症の中核症状や周辺症状への対応が中心となり、利用者の行動を抑制する、あるいは一律的なケアを行うなどの傾向が見られました。一方、パーソン・センタード・ケアでは、認知症の利用者それぞれの生活歴や好み、性格、人間関係などを尊重し、利用者の視点や立場、心理的ニーズを理解した上で利用者に必要なケアを行います。
老人ホームや介護施設の認知症ケアの中心
パーソン・センタード・ケアは、現在では老人ホームや介護施設における認知症ケアの中心的なアプローチとして取り入れられています。日常生活やコミュニケーションにおいて多様な困難に直面しているからこそ、その原因となる認知症だけでなく、個々の人間性や精神的なニーズを理解し、サポートすることが重要だからです。
認知症の利用者のニーズや背景を理解するためには、多角的な視点で詳細な観察を行う必要があります。そのため、パーソン・センタード・ケアの実施においては情報収集が重要とされ、長時間の観察を行う「DCM(認知症ケアマッピング)」が考案されました。「DCM」では、定期的に介護者5人程度が6時間以上の観察を行い、5分ごとに記録を付けていきます。この観察によって、認知症の利用者の感情の動きや興味関心の内容、集中力や周囲へのかかわり方の癖を洗い出せるようになりました。これらの情報は、認知症の利用者がうまく表現できないニーズを汲み取るのに役立ち、より個々の利用者に合ったケア方法の考案や実施に繋がります。
老人ホームや介護施設では職場風土も認知症ケアに大きく影響
パーソン・センタード・ケアを導入すると、老人ホームや介護施設の職場風土も大きく変化します。より深く認知症の利用者を理解することで、職員の意識や対応に「利用者中心の視点」が加わるためです。
例えば、認知症の利用者が落ち着かなかったり、怒りっぽくなったりしても、介護職員はその背景や心理状態を理解して適切に対応できるため、認知症利用者の介護におけるストレスが軽減します。穏やかな対応ができると施設の雰囲気も和むようになり、利用者が精神的に落ち着く効果も期待できるでしょう。
また、利用者の人間性を尊重する姿勢は職員同士が尊重しあう姿勢にも繋がり、スムーズな連携協力や活発な情報交換やコミュニケーションが育まれます。情報共有や連携を図ることで、利用者にとっても職員にとっても居心地がよく安心できる環境が整い、より質の高いサービスの提供にも繋がるのです。
今回のまとめ
認知症ケアでは、認知症がある利用者の個別ニーズを重視する「パーソン・センタード・ケア」が取り入れられています。認知症の利用者の気持ちや希望を尊重したケアを行えるようになるだけでなく、老人ホームや介護施設の雰囲気や介護職員同士の連携などを改善する効果も期待できるでしょう。
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