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老人ホームや介護施設で起こり得る「誤嚥」の危険性と対応策
老人ホームや介護施設に入居する高齢者には、飲食物が誤って気道に入る「誤嚥」のリスクが懸念されます。誤嚥は重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、施設では誤嚥防止対策が必要です。ここでは、誤嚥の危険性と対応策を解説します。
1.誤嚥性肺炎などの合併症を招く危険性がある
2.合併症のリスクを減らすためには姿勢改善やトレーニングも有効
3.老人ホームや介護施設では食べる時の姿勢や調理方法を工夫する
4.今回のまとめ
誤嚥性肺炎などの合併症を招く危険性がある
誤嚥とは、水分や食べ物、胃の逆流物などが誤って気管に入ることを指します。この誤嚥によって肺に細菌が入り込んで炎症が起きるのが誤嚥性肺炎です。2016年に厚生労働省が公開した資料によると、肺炎で入院した70歳以上の高齢者において、7割以上が誤嚥性肺炎でした。
誤嚥が生じる原因には、加齢による筋肉の衰え、脳梗塞や脳出血の後遺症、パーキンソン病、認知症などから生じる摂食嚥下障害が挙げられます。また、誤嚥は食事中だけでなく、就寝中にも唾液や胃からの逆流物が気管に入って起こることもあり、誤嚥性肺炎だけでなくむせこみによって呼吸困難に陥る恐れがあるのです。
誤嚥性肺炎は早期に治療を開始すれば、治癒は数週間で済みます、しかし、肺に炎症が広がると、経口摂取が困難になるケースも少なくありません。禁食による低栄養、さらなる嚥下機能の低下が懸念されます。
合併症のリスクを減らすためには姿勢改善やトレーニングも有効
誤嚥およびその合併症を防ぐには、食事中に誤嚥が起こりづらい姿勢をとる、嚥下機能の向上を図るトレーニングを行うなどの対策が有効です。
椅子に座って食事をする時の「姿勢」では、椅子に深く腰を掛けたときに、背、肘、膝は90度に保ち、足の裏が床や足置きに着いている状態が好ましいとされます。どうしても背中やお尻と椅子の間に隙間ができてしまう場合は、クッションやタオルなどを挟むことで良い姿勢にすることができます。また、頭がのけぞっている状態になると誤嚥のリスクが高まるため、少し顎を引いてうつむくような姿勢を取るのもポイントです。
併せて嚥下機能向上の「トレーニング」を継続的に行うと、誤嚥のリスクをより低下できます。特におすすめなのが、首・口元・舌周辺の筋肉に刺激を与えるトレーニングです。次のような動作を行うと、飲み込み時の動きが滑らかになる効果が期待できます。
●首のトレーニング
・肩の力を抜きながら、ゆっくりと前後や左右に首を動かし、首の筋肉を伸ばす
●口元のトレーニング
・口を縦や横へ大きく開いたり、すぼませたりする
・頬を膨らませたりくぼませたりする
●舌のトレーニング
・舌を前に突き出したり、口の中に引っ込めたりする
老人ホームや介護施設では食べる時の姿勢や調理方法を工夫する
老人ホームや介護施設では、椅子に座って食事を取る方の他に、車いすやベッドで食事をする方もいます。このような方にも食事中の姿勢に注意が必要です。
車いすの場合は、基本的に通常の椅子と同様の姿勢を取れるようにサポートしましょう。ベッドの場合、起き上がって座れる方はクッションなどを使って椅子と同様の姿勢を保てるように調整します。起き上がれない場合は、ベッドをリクライニングさせるなどの方法で体を30~60度の角度に保ち、頭の後ろへクッションなどを置いて顎を引いた姿勢を取れるように調整しましょう。
また、飲み込みやすい食材や調理方法を取り入れる必要もあります。例えば、お茶やみそ汁、水などサラサラした液体にはとろみをつける、麺類は5cm程度に細かく切る、ゆで卵やパンなどにはマヨネーズやバターをあわせるなど、水分の少ない食べ物には油脂を加えると良いでしょう。
今回のまとめ
誤嚥性肺炎は、誤って気管に食物などが入る誤嚥により引き起こされ、特に高齢者に多い疾患です。筋肉の衰えや脳梗塞の後遺症などが原因で起こり、治療が遅れると摂食が困難になる危険性があります。そのため、食事時の姿勢や嚥下機能のトレーニングが重要です。また、介護施設では食事の形状や調理方法の工夫も求められますので、対応策を把握しておきましょう。
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