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ケアまどニュース
ビッグデータ活用で効果的な「介護予防」
少子高齢化が進む日本において、医療や介護の社会保障費が膨らみ続けるなか、「介護予防」や、介護状態になったとしても「心身の機能を維持・向上」することは、国をあげての急務の課題となっています。
解決のためには異なる角度での総合的な対応が必要ですが、助けになる一つの考えとして、ビッグデータの利用が挙げられています。
介護とビッグデータの関連性や、どんな取り組みがなされているのかを確認してみましょう。
1.ビッグデータとは
【ビッグデータとは?】
ビッグデータとは、簡単に言うと、その膨大な量、種類が集められたデータのことです。
具体的には、天候に関するデータや交通情報、商品の仕入れや販売データ、顧客データなどがあります。
もちろん、どのデータについても一定の割合で解析がなされ、活用されていますが、通常すべてを使いこなすのは難しいものがあります。
そのデータのなかには、異なる種類や性格、形式の情報が含まれているからです。
そこで、こうした種類の異なる膨大なデータを処理するために、ソフト面とハード面での技術開発がなされてきました。
その結果、ビッグデータを使って、物事や人の行動などを予測して、それに基づいた事業計画を立てることができるようになっています。
たとえば、防犯カメラの映像データを用いて、顧客が特定の商品棚の前に立ち止まって観察したものの購買に至らなかった品や、店内を回った後に選択した商品などを見極められるようになっています。
商品を販売する業種では、こうしたデータを使うことで売りやすい商品陳列の手段を考えるといった対応が可能です。
多くの場合、ビッグデータを使うことで、人々の行動や傾向を予測し、それに合わせて適切な対応を前もって取ることができるというわけです。
2.ビッグデータの先にある「介護予防」
こうしたビッグデータに関する取り組みが、老人ホームや介護サービスを提供する事業所でも本格的に始まっています。
その理由は、介護予防の面で効果があると考えられているためです。
【佐賀市の事例】
健診や医療現場、介護現場から上がるビッグデータを利用して、高齢者の介護予防に役立てる取り組みを行っています。
様々なデータを利用していますが、一例として、生活習慣病による重症化リスクを把握して、現場に用いるというものがあります。
高血圧や糖尿病といったリスクを抱えている高齢者をデータ解析から抽出して、運動を勧めたり、あるいは栄養指導を積極的に行ったりして、健康維持を図っています。
治療が必要だと考えられる場合は、データから早めに判断をして医療機関と連携することで、症状が進む前に対応できるようにしているのです。
また、高齢者を対象とした実態調査を行い、そのデータを活用しています。
「フレイルチェック票」と呼ばれるもので、要介護となる前の段階として出てくる兆候が、普段の生活の中などに現れていないかを確認していきます。
多くのデータと高齢者の介護状況などとを比較して、要介護状態になる前にできることを把握し、必要が生じ始めている高齢者に素早く適切な支援を提供する手助けとなっています。
【医療と介護とビッグデータ】
このように、ビッグデータを介護予防に使う試みは、様々な事業において、DX、デジタルフォーメーションが推進されている中で重要なものとなっています。
介護では、いかにして身体機能を低下させず、できるだけ要介護状態に陥らないようにするかが重要です。愛知県名古屋市でも、そのための様々な取り組みを行っています。
高齢者を対象とした実際のデータを加えて分析することで、より効率的な支援ができるようになるわけです。
病院や健診機関などでは、定期的な検査や問診などによって、綿密で膨大なデータが蓄積されています。
しかし、実際にはそのデータは解析などに回されることなく、単なる病院内情報として放置されています。
それをビッグデータとして使用することで、高齢者の状態把握や地域全体における傾向判断などができるようになるのです。
また、介護予防教室などに参加する高齢者のデータを調べることで、ハイリスク者を見つけ出しやすくなります。
出てきたデータを基に、リスクを抱える方に早い段階でアプローチします。
具体的には、高齢者が通って他の人と交流を持ったり体を動かしたりできる場を紹介することで、心身の機能を維持できるようケアが可能です。
直接運動をするための指導や、毎日の食事の内容を聞き取り改善できる点を教えるといったこともできます。
ビッグデータを基に、ケアが必要な人にピンポイントで支援をすることで、効果的な介護予防ができるというわけです。
3.ビッグデータ活用で正確な「需要の把握」と適切な「供給」を目指す
介護、もしくは介護予防の現場におけるビッグデータの活用は、個々の高齢者へのアプローチに留まりません。
地域全体、さらには国全体としての介護事業の安定化につながります。
まず、介護予防をより効率的に行うことができれば、そもそも要介護者が減り、介護施設の需要を低くできるからです。
深刻な人材不足や資金繰りの困難が見られる介護業界では、介護施設や介護従事者にかかる負担を減らすことが大きな意味を持ってきます。
さらに、介護ニーズの把握にも役立ちます。
現状では、どのくらいの要介護者予備軍がいるか、いつ要介護の状態に陥るか、その人数がどのくらいかということを把握するのはかなり難しい状況です。
しかし、フレイルチェックをしたり、医療機関や健診機関から上がってくるビッグデータを解析したりすれば、介護の将来的なニーズを予測しやすくなります。
高齢者にこのような健康状態が見られてから、特定の期間経過すると要介護状態になりやすいといった傾向が分かるからです。
そして、その分かれ目にいる高齢者の数をリアルタイムで把握することができれば、介護施設に入所してくる方の人数が、いつどのくらいになるかも予測しやすくなります。
こうした需要の把握ができれば、供給の適切化もしやすくなります。
事前に予測ができるので、現状では足りなくなりそうだなと判断されれば、地域として人材リソースを増やすためにスタッフ募集をしたり、予算を増やしたりすることが楽になるのです。
施設の受け入れ人数についても予測がしやすくなるので、事業所が経営を効率よく回せるようになるといったメリットも生まれます。
現状、多くの老人ホームなどの介護施設では、スタッフや予算などの需給を感覚や経験で予測するしかありません。
しかし、ビッグデータ活用によって信頼できる予測ができれば、非常に効率よく事業計画を立てられるようになるかもしれません。
【おわりに…】
ビッグデータを使った予測と対策、DXというものはあらゆる業界で推進され、重要度の高いものとなっています。これは介護業界においても同じです。むしろ、すでに基盤となるデータの蓄積があり、それを使うことによって大きな変化を見込めるという意味では、他の業界よりも必要性が高い業界とも言えるでしょう。
すでに、一部の地域では試験的にではありますが、ビッグデータを活用したハイリスク高齢者への介護予防措置などがなされています。この輪が全国に広まると共に、より高度なビッグデータ処理のノウハウが考案され、高齢者自身、そして介護施設における経営や日々の業務の負担軽減になることが期待されています。
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