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2020/06/22
コラム

2021年度介護報酬改定に向けた動き

介護報酬』とは、公的な介護保険サービスの価格を決定する公定価格のことです。

この介護報酬の額は、介護保険事業計画と合わせなが3年に1度改訂行われています。

次の改定は2021年に予定されており、日々変化する情勢や予測される事態、課題と合わせながら、議論が続けられています。

介護事業所やサービスの在り方を左右することもある要なポイントとなるため、愛知県名古屋市の介護施設や老人ホームでも非常に注目が集まっています。

 

1. 「介護報酬の改定」とは?

提供するサービスによって支給される介護報酬

そもそも『介護保険制度』とは、2000年にスタートした保険制度です。

この制度では、定期的に内容の見直しを行うことで、時代毎のニーズや情勢に合わせた運用がなされる仕組みになっています。

・3年に1度の頻度で「介護報酬」を見直す
・5年に1度の頻度で「保険制度そのもの」を見直す

 介護報酬とは 

介護保険サービスを提供した老人ホームなどの介護事業者に対して支払われるお金で、この報酬を主な収入として事業所が運営されている。
報酬額のうち、被保険者の所得に応じた1割~3割を、利用料としてサービス利用者が事業所に直接支払いを行い、残りは介護保険からの給付として事業者に支払われます。

 

この「介護報酬」は、提供するサービス内容や事業所の規模、人員体制などによって、国から支払われる報酬が細かく定められているのです。

前述した通り、介護事業所や老人ホームは、介護報酬で得たお金を、施設で働くスタッフへの給料や、施設の運営資金として使っています。

介護報酬の改訂によって、施設が受け取る報酬が変わる可能性があるため、非常に注目を集めているのです。

 

2021年の介護報酬改定に向けたプロセスは以下の通りです。

【2020年3月】事業者団体・厚生労働省がヒアリングを行い、論点や課題などを提出
【2020年秋頃】
提出された議題をもとに、改定の具体的な方向性を決定
【2020年12月】基本的なコンセプトや考え方の整理、とりまとめを行う

これらの過程を経て、詰問や答申が行われながら、具体的な報酬改定に向けて、詰め合わせが行われることになります。

 

では、報酬額以外ではどのような影響を受けるのでしょうか。

【影響①】介護給付請求関連ソフトへの影響

介護施設や老人ホームにおいて、介護保険の請求業務を円滑に行うために使用する「レセプトソフト」を、新しい改訂後の報酬に適合させる必要があります。

こうしたソフトは、介護ソフトメーカーから提供されていて、報酬改定に伴って新しいソフトの提供やアップデートが行われるのが一般的です。

【影響②】介護保険サービスを利用者への経済的な影響

利用者は介護報酬の一部を負担する必要があるため、当然、施設への報酬がアップすれば、利用者の負担額も必然的に上がることになります。

こうした改定の仕組みは、介護保険事業者だけではなく、利用者やその家族、これから介護保険サービスを使おうとする方にとっても、知っておくことで「心積もり」や「相応の準備」ができますから、その動向には注視しておくと良いでしょう。

 

2. 改定の重要ポイントその①「人材確保」

改定の重要ポイントその1「人材確保」

2021年の介護報酬改定に向け提示されている課題の中でも、非常に重要視されているものの1つが「介護人材の確保」です。

介護職員の人材不足は、すでに多くのの介護施設や老人ホームで課題となっていますが、なかなか人材不足を解消できない理由の1つに、「給料の低さ」があります。

この問題について、既に以下の施策が実働しています。

【2012年】「介護職員処遇改善加算」導入
【2019年】「特定処遇改善加算」の導入

これらの加算の効果を検証し、必要に応じて制度を拡充や改善することが今後検討されることになりそうです。

 

これに加え、介護業界の人材確保のための対策として考えられているものがいくつかあります。

【離職率を低くするための基盤づくり】

職員を雇用できても、職場に定着せずに離職率が高いのでは、介護施設も老人ホームも安定したサービスを提供できません。

離職率が上がると、その分既存の職員への業務負担が増加しますし、加えて新人教育にかかる負担採用にかかるコストと言った面でも、施設にとって苦しい状況が重なります。

そうした負の連鎖を断ち切るためには、介護職員が定着しやすい環境づくりが必要不可欠ですし、そうした人員の充実が施設の円滑な運営にもつながると考えられています。

 

【タスク・シフティングによる業務の円滑化】

 タクス・シフティング
ある業務を、他者あるいは他職種(主に他職種)に業務そのものを移管・移譲すること。現在、医療の分野で特に注目させており、人材不足に伴う業務負担を部分的に改善する手段として提唱されている考え方。

介護業界における「タクス・シフティング」とは、介護事業所の職員が担っている業務のうち、必ず介護福祉士など有資格者でなければ従事できない業務以外を、必要があれば研修を行うなどして、介護助手などの専門職以外の職員や、職員以外のボランティアなどが担うことを指します。

このような業務の棲み分けを行うことで、特定のスタッフへの業務負担の集中を避ける目的があります。

この考え方を取り入れるためには、人員配置に関しても、事業所へ人員を配置するという考え方から、地域へ人員を配置するという考え方にシフトすることが求められています。

同じエリアにある事業所間で連携を取りながらフレキシブルに対応することによって、特定の事業所だけではなくて地域全体が充実した介護保険サービスを受けられることにも繋がるのではないかと期待されています。

 

3. 改定の重要ポイントその2「アウトカム評価」

改定の重要ポイントその2「アウトカム評価」

 アウトカム評価とは 

介護保険サービスを受けた利用者が、そのサービスによってADLや活力などにおいて良い結果をもたらした場合、その結果に対しての評価を行うというもの。

「介護保険制度」においては、高齢者の「自立支援」と「尊厳の保持」が重要な目的として位置づけられています。

しかし、実際には要介護度が改善されることによって、毎月利用できるサービスの上限が減ることや、介護施設や老人ホームの介護報酬が下がるため、積極的な介護度改善が行われないケースが少なくありません。

 

この問題を解決するために導入されたのが、要介護認定を経済的に支援する「ADL維持等加算」のシステムです。

 

 ADL維持等加算

介護度の改善実績に応じた経済的支援を受けられるシステム。
要介護認定の改善見込みのある利用者だけを事業者が選別しないように配慮されている。

この「ADL維持等加算」が導入される前後で介護給付費を比べると、導入されて最初の1年間だけでも、要介護度が全体的に改善される傾向にあることが分かっています。

2021年に行われる介護報酬の改定では、この「ADL維持等加算システム」の効果を検証した上で、必要に応じて見直しや改訂が行われることになります。

 

おわりに…

定期的に見直しが行われている介護報酬改定においては、改訂されるたびに介護報酬体系がどんどん複雑化し、とても分かりづらくなっているという現状があります。

議題の中には、複雑化ししているこの報酬体系を、もっとわかりやすく簡素化した方が良いのではないかという意見もあるようです。

しかし、高齢者の介護保険サービスのニーズは多様化していますし、介護施設や老人ホームにおける取組をきめ細かく評価して報酬につなげるためには、加算のシステムを新しく導入するなど、どうしても細分化する必要があります。

もしも将来的に簡素化できればそれが理想的なのかもしれませんが、現在は簡素化に重点を置くよりは、介護施設への報酬や、介護要員への報酬を充実させながら、少しでも高齢者や家族にとって負担が少ないサービスの提供ができるシステムを整備することが大切と言えます。