愛知県名古屋市の老人ホーム・介護施設紹介センターなら介護の窓口ケアまど「ケアまどニュース」ページ

NEWS

2025/07/11
コラム

高次脳機能障害と認知症の違いとは?

高次脳機能障害と認知症の違いとは?

記憶力の低下や判断力の鈍化が見られると「認知症では?」と思われがちですが、同様の症状を呈する「高次脳機能障害」という障害もあります。両者は似て非なるもので、原因や対応法も大きく異なります。本記事ではその違いをわかりやすく解説します。

似ているようで違う「症状の現れ方」

高次脳機能障害と認知症のどちらにも、記憶力の低下や判断力の鈍化、感情面での変化といった症状が見られることがあります。しかし、その症状の出方や日常生活への影響には違いがあります。

●高次脳機能障害

事故や病気によって脳の一部が損傷された結果、注意力の低下・記憶障害・感情のコントロール障害・社会的判断の低下といった症状が現れます。特徴的なのは、自覚が乏しく、感情の起伏が激しくなることがある点です。また、症状が一定しておらず、疲労やストレスで悪化する傾向も見られます。

●認知症

アルツハイマー病や脳血管性認知症など、脳の神経細胞の変性や死滅により進行的に機能が低下する病気です。初期には短期記憶の障害(直前の出来事を忘れる)が顕著で、進行とともに見当識障害(時間や場所がわからなくなる)や、日常生活への支障が顕著になります。

発症メカニズムと発症する年齢

両者の大きな違いの一つが、その発症原因にあります。

●高次脳機能障害

外傷性脳損傷(交通事故や転倒など)・脳出血・脳梗塞・脳腫瘍の手術後など、突発的な脳の損傷によって起こります。年齢に関係なく発症する可能性があり、比較的若い世代(40代〜60代)にも見られるのが特徴です。

●認知症

加齢とともに脳の神経細胞が変化・萎縮していくことによって生じる慢性的・進行性の疾患です。特にアルツハイマー型認知症は、65歳以上の高齢者に多く発症し、年齢が高くなるほどリスクが高まります。

つまり、認知症はその多くが「加齢に伴う変性疾患」として発症するのに対し、高次脳機能障害は「脳の損傷によって生じる後天的障害」といえるでしょう。

回復可能性と支援のアプローチの違い

■高次脳機能障害の場合

損傷した脳の部位に応じて症状が現れますが、適切なリハビリテーションによって機能の回復が期待できます

●主な支援内容

・作業療法、言語療法、認知リハビリなどの専門的な訓練
・本人の得意なことや残存機能を活かした支援
・疲労やストレスによる変動に配慮した日常支援

●目指すゴール

社会復帰(就労・家庭復帰)や自立的な生活

●支援者の役割

一貫した支援と、日々の変化を丁寧に観察する姿勢が大切

■認知症の場合

進行性の疾患であり、症状を完全に回復させることは難しいため進行を緩やかにし、安心して生活できる環境づくりが中心となります。

●主な支援内容

・薬物療法による進行抑制
・周囲の理解と環境調整(落ち着ける空間や生活リズムの整備)
・本人の尊厳を大切にした関わり方

●目指すゴール

残された機能を活かしながら、できるだけ自分らしく生活できる状態を維持

●支援者の役割

不安や混乱への共感と予防的な対応

このように、高次脳機能障害では「改善・回復」を前提としたリハビリ的支援が中心であるのに対し、認知症では「進行と共に暮らすための環境と心の支援」が重視されます。

まとめ

高次脳機能障害と認知症は、似た症状を示すものの、原因や支援方法は大きく異なります。前者は回復の可能性があり、リハビリによる支援が有効です。一方、認知症は進行性で、穏やかな生活を支える環境づくりが重要です。違いを理解し、適切に対応しましょう。