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ケアまどニュース
飲み込み能力に応じた「介護食」
『飲み込むちから嚥下能力と食事のおはなし』
高齢者は体の様々な機能が低下してしまうと、
他の人にはなんの問題もないような動作も難しくなることがあります。
その一つが咀嚼して飲みこむちから、『嚥下機能』です。
つまり、噛んで飲み込むという機能がしっかりとできなくなるということです。
これは、単に食事を楽しめないというデメリットだけでなく、
高齢者に命の危険をもたらすほどの問題となることがあります。
固形物をきちんと噛み切って飲み込めないため、
喉や気管に詰まったことによる窒息や、食べ物が肺の方に入ってしまって炎症を起こす誤嚥性肺炎の危険があります。
こうしたトラブルを避けるためにも、しっかりと高齢者の嚥下機能の状態を見極めて、
嚥下機能に応じた適切な食事の形態を選ぶことが重要なのです。
1.食事摂取は能力に応じて段階がある
介護施設では、高齢者の誤嚥を防ぐために、それぞれの能力に応じた介護食を用意しています。
「介護食」とは普通の食事を、食べやすい形に加工したものを指します。
使われる食材や栄養バランスなどは基本的に同じですが、提供する大きさや柔らかさなどを変えています。
高齢者でも噛みやすく飲み込みやすい形態にしているのです。
この「介護食」は、それぞれの機能低下の状態に合わせて変化させます。
噛む力が低下している方:「キザミ食」
まだ飲み込む能力はある程度あるものの、噛むことが難しくなっているという人に向いています。
提供する施設や機関によっては、キザミの形態に「一口大~極キザミ」というように、キザミ食にも段階がある場合もあります。
一般的には野菜や肉などの食材をおよそ2ミリから3ミリ程度まで刻んで飲み込みやすくします。
噛む事が難しい方:「ソフト食」もしくは「やわらか食」
柔らかく煮てあったり、ほぐされた状態のもので、歯が無い方や噛む力が著しく低下している人に向いています。
噛む力も、飲み込む力も低下している方:「ミキサー食」
すべてが潰されており、噛むことが難しく飲み込む力が弱くても自然に食事が流れていくような形態です。
嚥下機能が著しく低い方:「ゼリー食」または「ムース食」
液状のままだと嚥下機能が弱いために肺へ流れ込んでてしまい、誤嚥を引き起こすリスクがある方向けの形態です。
2.誤嚥防止にとろみを使用することもある
このように、噛む力と飲み込む力が弱っている高齢者の食事をサポートするためには、それぞれの状態に応じた介護食を提供することが重要です。
より柔らかく、より固形物の少ない形にすることによって、無理なく食事を楽しんでもらうことができます。
しかし、ここでの注意点は「ソフト食」にもあるように、
完全な液体状にすると逆に誤嚥につながってしまうことがあるところです。
飲み込み動作をコントロールすることができず、食事が喉を通過してしまい、気管に入り込んでしまうのです。
こうなると、気管支や肺の炎症などの問題を引き起こしますので、介護食が逆効果となってしまうことになります。
そこで、愛知県名古屋市にある老人ホームでも、食事に「とろみを付ける」という方法を採ることがあります。
こうすることで、「ミキサー食」でも飲み込みを邪魔しない程度に食感を得ることができて、誤嚥を防ぐことができるようになります。
さらに、「刻み食」であってもとろみを付けることで、「舌触りが良くなる」、「噛んだり飲み込んだりするのが楽だ」という高齢者もいます。
引っかかり感が減少するので、より快適に食事ができるため、ご飯の時間を少しでも楽しんでもらいたいという思いも実現できます。
このように、高齢者のための食事を準備するにあたって、とろみを付けるというのは重要な作業となりますが、
介護の現場ではそのとろみの濃さによる違いを大切に考えています。
① 薄めのとろみ:ポタージュ状
ストローで吸える程度のもので、あまり力を必要としない。
食べた感じも違和感があまりないので受け入れやすい。
②中程度のとろみ:かき混ぜるとその跡が残る
ストローで吸うこともできるが、かなりの吸う力が必要となる。
太めのストローを使用したり、スプーンで少しずつ食べる。
③強いとろみ:容器を傾けてもすぐには流れていかない
この濃さだとストローでは吸えないため、スプーンで食べる。
気管に流れこむリスクが低く、より嚥下機能が低い高齢者に使用される。
3.美味しく「介護食」を食べてもらうためのコツは?
このように、食材の刻み方もしくは加工の仕方を変えることによって、安全な食事が可能です。
しかし、食事は単に栄養を摂取するためだけのものではなく、人に楽しみを与えるものでもあります。
そこで、介護施設ではたとえ噛む力や飲み込む力が落ちてしまっていても、できるだけ美味しく食べてもらうということを心がけています。
そこで重要なのが、「見た目」です。
味がしっかりしていても、全てが液体状だと食欲が湧かないでしょう。
ミキサーにかけてゼリー状にしたとしても、形を野菜や魚に成型するなどの工夫をすることができます。
もちろん、家庭ではこうした作業をするのは難しいですが、こうした介護食を製造・販売する会社も存在します。
また、より楽しく食事をしてもらうために、既製品を使う介護施設も増加しつつあります。
さらに、「盛り付け」にも工夫があります。
すべての食材を一緒にミキサーにかけると作業は楽ですが、色が悪く、味も混ることになります。
そこで、食材ごとにミキサーをかけるようにします。
そうすることで、色の違いを見てもらうことができますし、味の差も感じてもらうことができます。
また、皿やボウルなどの食器も見た目に良いものとすることによって、食事の楽しさを盛り上げることができます。
おわりに…
おわりに、自宅で高齢者の方に食事を作るにしても、介護施設で提供するにしても、それぞれの方の機能の状態と好みを理解することがとても重要であるという点を覚えておきましょう。
同じ介護食と言っても、嚥下機能の状態を見極めないと、かえって誤嚥を招いてしまうことがあります。
さらに、食べやすい、事故を防ぐ安全な食事ということだけに気を向けると、いかにも美味しくない食事となって食欲をそいでしまうことになりかねません。
やはり少しでも食事の楽しさを味わってもらいたいという気持ちを持って、その人に合った工夫をしてあげることはとても重要です。
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