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2019/07/29
コラム

介護と医療を提供する新設介護サービス『介護医療院』とは

介護が必要な高齢者をケアするための施設として、これまでは療養病床が利用されてきました。
それに代わって新たに登場したのが「介護医療院」です。

 

2018年4月の介護保険法等の改正法により法定化された施設で、これまでの療養病床では不十分だった部分のケアの充実を図るために作られました。
今後、全国的に数が増えていくと予想される介護医療院について詳しく見ていきます。

 

①介護医療院が創設された背景

まずは90年代以降の高齢者医療の流れから創設の背景を見ていきましょう。

ケアの担い手がおらず、在宅でのケアが難しい高齢者

 

 

 

 

 

 

 

 

病院に長期入院する高齢者のなかには、在宅でのケアが難しく仕方なく入院している状態という人が少なくありません。

病状としては本来入院の必要がないにも関わらず、ケアの担い手の問題でやむなく入院している状態を「社会的入院」と言います。

これが社会問題として大きく取り上げられるようになったのが90年代です。

 

■ 1993年:「療養型病床群」の創設

社会的入院をなくすために第二次医療法改正で創設。

■ 2000年:「介護療養型医療施設」の創設

介護保険制度の開始にともなって創設。

■ 2001年:再編と医療と介護のすみ分け

療養型病床群が療養病床へ再編。
さらに医療の必要性によって2つに分けられることに。

 

医療療養病床

医療保険の適用される施設で、運営も医療法人によるもの。
医療の必要性がなくなった時点で退所、または別の施設に転出することが前提となる。

介護療養病床

介護保険が適用される公的な施設で、医療の必要性は低いけれど在宅でのケアが難しい場合に利用される。

■ 2006年:介護療養病床を廃止の方向へ

医療療養病床の多くが長期入所する状況が続き、医療費や社会保障関連の費用の圧迫が問題となる。
実態を調査の結果、医療療養病床と介護療養病床の入所者の状況にほとんど差がないことが判明。
医療施設であるはずの医療療養病床で介護保険が適用されるというねじれの問題も指摘される。

 

医療療養病床と介護療養病床のすみ分けが機能していないため、厚生労働省は介護医療病床を廃止の方向へ。
2011年度末までに新しい介護保険施設を設置する方向を打ち出す。

■ 2018年4月:「介護医療院」スタート

介護療養病床から新施設への転換がなかなか進まず、廃止までの期間がさらに2017年度末までと延長されます。
その結果、2018年にようやく介護医療院がスタートしました。
しかし、介護療養病床から介護医療院への移行期間を2024年3月末までとしているため、現実にはまだまだ介護療養病床はたくさん残っています。

 

②介護医療院には状態に応じた種類がある

介護医療院の役割とは、
長期療養のための医療を提供しつつ日常生活で必要な介護サービスを一体的に提供することです。

 

・日常的な医学管理やターミナルケアとしての機能
・生活施設としての機能の両方を備えた介護施設
・居住費、食費、介護サービス費などの基本的な費用のほか、個々の入所者に必要な介護に応じて費用が加算される

 

そんな介護医療院ですが、入所者の容態によってさらに「Ⅰ型」、「Ⅱ型」、「医療外付け型」に分かれています。

 

■ 介護医療院「Ⅰ型」

【人員配置】
医師:入所者48人に対して1人の合計3人以上
看護師と介護士:入所者6人に対して1人

 

・病院に入院するまでではないが、手厚い医療が受けられるのが特徴。
・より重篤な身体疾患、または身体合併症のある認知症高齢者を対象とし、介護療養病床に相当する運営基準を満たす。
・他2つに比べて医療・介護の両面で重度の人が利用することが想定されている。
・喀痰吸引や経管栄養などのケアが受けられるほか、処置や投薬、検査も提供され、ターミナルケアも可能。
・Ⅱ型に比べて費用が高い。

 

■ 介護医療院「Ⅱ型」

【人員配置】
医師:入所者100人に対して1人以上
看護師と介護士:入所者3人に対して合わせて1人以上

 

・Ⅰ型と比べて比較的容態が安定している人が対象。
・人員配置などの基準は介護老人保健施設相当以上とする。

 

■ 医療外付け型

 

・医療機関と居住部分を併設している。
・Ⅱ型よりも容態が安定した人が対象。
・個室の広さが13平米以上と規定され、有料老人ホーム並みの広さになっている。

 

身体介助や生活上のケアも行われる介護医療院介護医療院のこれまでの療養病床との大きな違いは… ?

生活施設としての機能を重視し、入所者が受けることのできる日常生活におけるサービスの内容が充実したことです。
食事、排泄、入浴などの身体介助のほか、掃除や洗濯など生活上のケアも行われるようになり、
他の介護施設と同じようなサービスが受けられます。
そのうえ、入所者が安心して暮らせるようにプライバシーの確保に努め、地域社会とのつながりを重視した交流会なども盛んに行われることになっています。

 

③どのような人が対象となるのか

 

医療面のケアと介護面のケアをバランスよく受けられる介護医療院の特徴

慢性的な病気への医療面のケアと、長期入所生活を豊かにする介護面のケアバランスよく受けられるところです。
容態の急変にも医師や看護師ら医療スタッフが充実しているため、迅速に対応してくれます。
ターミナルケアにも専門のスタッフがいるので安心です。
健康管理リハビリなど毎日のサポートも充実しており、個々の状態に合わせて適切なケアが受けられるようになっています。

 

また、プライバシーを重視しているところも、これまでの療養病床にはなかった介護医療院の大きな特徴です。
これまでは病院の大部屋のようにベッドをカーテンで仕切っただけの居住空間でしたが、介護医療院では家具やパーティションを組み合わせることによって、個人のプライバシーにより配慮した居室づくりに重きを置いています。
また、入所者1人当たりの面積も大きくなり、6.4平米から8.0平米へと基準が変わりました。

 

このように、従来の療養病床より入所者が快適に生活できるように配慮されているのが介護医療院のメリットです。
新しく立ち上げる場合やこれまで病床を改築するようなケースでは特に、施設内のつくりも従来の病院と同じような形式から、近年の介護施設にみられる全室個室で小グループごとケアを行うユニット型への移行が主流になるでしょう。
しかし、その分施設の設置や運営にはお金がかかりるため、入所費用がこれまでよりも高くなる可能性があることに注意しましょう。

 

ただし、介護医療院は食事代や居室代が所得に応じて減額になる「介護保険負担限度額認定証の対象施設となります
入所者の所得に応じて負担額には上限が設けられているため、一気に負担が大きくなるわけではありません。
施設ごとに費用形態は異なるため、入所を希望する場合は、費用について直接施設に確認することをおすすめします。

 

おわりに…

以上、介護医療院について詳しく見てきましたが、介護と医療両面のバランスが取れた利用者のニーズに合った施設と言えそうです。ただ、2024年までが移行期間ということもあって、まだ転換の進んでいない地域も多いことでしょう。

 

介護保険の保険者は自治体なので、愛知県名古屋市ほどの大都市ならともかく、そこから離れた規模の小さな市町村になるほど財源の問題も深刻になります。
今後、介護保険についても何らかの対策が講じられるかもしれませんが、いずれにせよ、利用者がニーズに合わせて病床を選択できるようになることが期待されます。